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就業規則・働き方

パートと正社員の待遇差はどこまで許される?手当ごとの判断表と、説明を求められたときの答え方

パートや契約社員と正社員の間で、手当・賞与・休暇にどこまで差を付けてよいのかに不安を感じている担当者に向けた記事です。差が認められるかを判断する3つの要素、手当や休暇ごとの判断表、2026年10月1日から必要になった労働条件通知書の明示、パートの人から説明を求められたときの答え方をまとめます。

結論

正社員とパート・有期の従業員の待遇差は、基本給・手当・賞与・休暇など待遇ごとに、その目的に照らして説明できるかどうかで判断します。物差しは「仕事の内容」「異動や配置の変更の範囲」「その他の事情」の3つです。説明を求められたら、待遇差の内容と理由を資料にまとめて答えます。2026年10月1日からは、説明を求められることを雇い入れのときに明示する必要があります。

差が認められるかの3つの物差し

パートタイム・有期雇用労働法は、同じ会社の正社員とパート・有期の従業員の間で、不合理な待遇差を設けることを禁じています(8条)。不合理かどうかは、待遇ごとに、次の3つの事情のうち、その待遇の目的に照らしてふさわしいものを考慮して判断します。

待遇差を判断する3つの事情
事情中身例
仕事の内容業務の内容と、その業務に伴う責任の程度判断を任される範囲、トラブルのときの対応、ノルマ
変更の範囲仕事の内容や配置が、将来どこまで変わりうるか転勤・異動の有無、役割が変わっていくか
その他の事情上の2つ以外で、待遇の決め方に関わる事情職務の成果、能力、経験、合理的な労使の慣行

仕事の内容が正社員と同じで、変更の範囲も雇用が終わるまでの全期間を通じて正社員と同じと見込まれる人は、さらに厳しく、パート・有期であることを理由にした差別的な取扱いそのものが禁じられます(9条)。対象になるのは、所定労働時間が正社員より短いパートと、期間を決めて雇う有期の従業員です。

労務の現場から

実務で線を引くときに、1つの選択肢になるのが「異動の有無」です。まったく同じ仕事をしていれば同一労働とされがちですが、店舗や支店がいくつかある会社では、正社員は(地域限定の社員などでなければ)異動する可能性が大いにあります。そうなると、パート・アルバイトとは役割がそこで変わってきます。

ある時点だけを見れば同じ業務をしているように見えても、その先で何かしら違う、という形を作っておくことも大切です。たとえば、マネージャーに上がっていくまでのステップのように、業務の先々を用意しておきます。どこまで決める権限があるか、どこまで判断しなければならないかも関わってくるので、等級(グレード)の定義や給与のステップを作るときと一体で考えていくとよいでしょう。

注意異動の有無で差を説明するなら、その違いが実態として本当にあることが前提です。正社員でも実際には誰も異動していない、就業規則にも労働条件通知書にも書いていない、という状態では理由になりません。2024年4月からは、労働条件通知書に「就業場所・業務の変更の範囲」を書くことになっているので、そこと食い違わないようにします。

手当・休暇ごとの判断表

厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」は、待遇ごとに、どんな差が不合理かの考え方を示しています。2026年10月1日の改正で、家族手当・住宅手当・夏季冬季休暇などが新たに加わりました。主な待遇を、結論と条件に分けて整理します。

待遇ごとの判断(同一労働同一賃金ガイドライン、2026年10月1日改正後)
待遇判断条件・考え方
通勤手当同じにする雇用形態にかかわらず同じ基準で払う
時間外などの割増率同じにする同じ時間外・深夜・休日の労働には同じ割増率
精皆勤手当同じにする業務の内容が同じなら
無事故手当同じにする業務の内容が同じなら(2026年10月に追加)
家族手当同じにする契約の更新を繰り返すなど、相応に継続的な勤務が見込まれるなら(同)
住宅手当同じにする転居を伴う異動の有無に応じて払う手当で、同じ異動がある人には(同)
夏季冬季休暇同じにするパート・有期の人にも同じ休暇を付与(同)
病気休職中の給与同じにする相応に継続的な勤務が見込まれる人には、同じ保障(記載を充実)
勤続の褒賞同じにする同じ期間勤続した人には同じ褒賞(2026年10月に追加)
基本給同じなら同じ、違えば違いに応じて決める能力・経験、成果、勤続年数など、決め方の基準ごとに、同じなら同じ、違うなら違いに応じて
賞与・退職手当同じなら同じ、違えば違いに応じて払う貢献に応じて払う賞与は、貢献が同じなら同じ額、違えば違いに応じた額。労務の対価の後払いや功労報償などの目的がパート・有期の人にも当てはまるのに払わないと、不合理とされうる(同)

改正では、次のような考え方も示されました。「正社員の人材を確保するため」という目的だけでは、差が不合理でないとはいえません。定年後に再雇用した有期の従業員であることだけで、差が直ちに認められるわけでもありません。また、会社が本人の意向を十分に聴かずに一方的に待遇を決めた場合は、不合理と判断される方向の事情として考慮されることがあります。

2026年10月1日からの変更点

パートタイム・有期雇用労働法の施行規則と指針も改正されました。担当者の作業に直結するのは、労働条件通知書の書き方です。

  • パート・有期の人を雇い入れるときに明示する事項(昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口)に、「正社員との待遇の相違の内容・理由などについて説明を求めることができる」旨が加わりました。有期の人は、契約の更新も「雇い入れ」にあたるため、更新のたびに明示します。明示しないと、10万円以下の過料の対象になります。
  • 説明は、資料を使って口頭で説明するか、説明すべき事項をすべて書いた分かりやすい資料を渡す方法で行うことになりました。口頭のときも、使った資料を渡すことが望ましいとされています。
  • 説明を求められていなくても、契約を更新するときなどに、待遇差の内容・理由が分かる資料を渡したり、説明を求められることを知らせたりすることが望ましいとされています。

労働条件通知書には、たとえば「次の窓口に対して、正社員との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。部署名・担当者・連絡先」のように書きます。厚生労働省の改正後のモデル労働条件通知書も参考になります。

  • パート・有期の人の労働条件通知書のひな形に、説明を求められる旨と窓口を入れたか
  • 給与計算ソフトや人事労務のシステムで通知書を作っている場合、その様式も直したか
  • 契約を更新するときの通知書にも、同じ記載が入るようにしたか
  • 窓口になる人が、待遇差の理由を説明できる資料を持っているか
詳しく読む入社手続きは何をいつまでに?内定から試用期間まで、労働条件通知書兼雇用契約書で回す段取り

説明を求められたときの答え方

パート・有期の従業員から求められたら、会社は、正社員との待遇差の内容と理由、待遇を決めるときに考慮した事項を説明しなければなりません(14条2項)。説明を求めたことを理由に、解雇や契約を更新しないなどの不利益な扱いをすることは禁じられています(同3項)。

  1. 比べる正社員を決める仕事の内容や変更の範囲が、説明を求めた人に一番近い正社員(またはその層)を選びます。
  2. 待遇ごとに違いと理由をまとめる基本給・手当・賞与・休暇など待遇ごとに、どう違うか、なぜ違うかを、上の3つの物差しで書き出します。
  3. 資料を見せて説明するまとめた資料を使って口頭で説明し、資料はそのまま渡します。個人の情報が入って渡せない部分は、後から見られるようにしておきます。
  4. 記録を残すいつ、誰に、何を説明したかを残します。説明の中で直すべき差が見つかったら、次の節の手順に回します。

労務の現場から

担当者が待遇の制度を作る立場でなくても、その制度をかみ砕いて「こう違うから、同一労働同一賃金ではこう理解する」というところだけは押さえておくとよいでしょう。説明を求められてから理由を考えるのではなく、制度の側に理由がある状態にしておくことが、答えるときの支えになります。

差を説明できないときの直し方

洗い出しの中で、理由を説明できない差が見つかることがあります。そのときは、次の順で直します。

  1. 待遇を一覧にする正社員とパート・有期の人で、待遇ごとに支給の有無と基準を並べます。厚生労働省の点検ツールも使えます。
  2. 待遇ごとに目的を確かめるその手当や休暇を、何のために設けたのかを言葉にします。
  3. パート・有期の人の待遇を上げる方向で直すガイドラインは、正社員の待遇を下げて差をなくすのではなく、パート・有期の人の待遇を改善することを求めています。
  4. 役割の違いを制度で示す差を残す待遇は、等級の定義や異動の範囲など、違いの根拠を制度と書類に書いておきます。
  5. 就業規則を直す賃金規程や就業規則を変え、意見聴取・届出・周知をします。

正社員の手当を廃止・縮小する場合は、正社員にとって不利益な変更になります。就業規則の変更の進め方は次の記事にまとめています。

詳しく読む就業規則はどう作り、どう直す?ひな形の見直しから意見聴取・届出・周知、テレワークの規程まで

制度の中身は、厚生労働省の同一労働同一賃金特集ページ、改正の内容はパートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)と令和8年改正の概要、通知書の書き方は改正後のモデル労働条件通知書、ガイドラインの考え方は同一労働同一賃金ガイドラインについてで確かめられます。個別の待遇が不合理かどうかの判断に迷うときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や社会保険労務士に相談するのが確実です。

更新履歴

  • 2026年10月1日: 公開