本文へ移動
労務カレンダー
入社・退職 テーマ別ガイド

入社手続きは何をいつまでに?内定から試用期間まで、労働条件通知書兼雇用契約書で回す段取り

採用が決まってから入社日までに、何をどの順で準備すればよいかを、担当者の段取りとしてまとめた記事です。労働条件通知書と雇用契約書の作り方と渡し方、2024年4月に増えた明示事項、入社前に集める書類、内定を出した後の注意、試用期間の進め方まで、入社の前後で必要なことを1本で確かめられます。

この記事で分かること

  • 内定から入社日、試用期間の終わりまでの段取り
  • 労働条件通知書と雇用契約書の違いと、1枚にまとめる作り方
  • 書類に書く事項と、2024年4月・2026年10月に増えた事項(「変更の範囲」の書き方など)
  • 内定の取り消しと、試用期間での雇用終了が簡単ではない理由
  • 入社手続きのチェックリスト(Excel)のダウンロード
  1. 条件を提示して書類を送る内定を出したらすぐ労働条件通知書兼雇用契約書を送ります。条件の提示と同じ書類を使います。
  2. 契約を結び、書類を集める入社日まで本人との契約の締結と、入社に必要な書類の回収を、入社日の前に済ませます。
  3. 保険の手続きをする入社日から5日以内など健康保険・厚生年金と雇用保険の資格を取得します。

入社した後、試用期間中に働きぶりへの懸念が出たときは、早めの対応が要ります。その流れは、後の「試用期間での雇用終了は解雇と同じ」の節にまとめています。

内定から入社日までの段取り

入社の準備で大事なのは、入社日より前に「契約」と「書類」を終わらせておくことです。内定を出したら、すぐに労働条件通知書兼雇用契約書を送り、入社日までに本人と契約を結びます。あわせて、入社に必要な書類も入社日までに集めます。

書類の準備は、時間に余裕のあるうちに本人に頼み、質問があれば早めに答えておきます。入社日の当日や直前にそろわないと、保険の手続きや初回の給与計算が後ろにずれていきます。

テンプレート: 入社手続きチェックリスト(Excel)

この記事の段取りを、1人ずつ使えるチェックリストにしました。入社日を入れると期限の目安が出て、雇用の形・前職の有無・外国籍かどうかに合わせて、要らない行は「不要」になります。会社の規程に合わせて、行を足したり消したりして使ってください。

Excelをダウンロード(無料・登録不要)

労働条件通知書と雇用契約書は1枚にまとめる

労働条件通知書と雇用契約書は、似ていますが役割が違います。

労働条件通知書と雇用契約書の違い
項目労働条件通知書雇用契約書
何のための書類か会社が労働条件を本人に知らせる会社と本人が条件に合意したことを残す
法律上の決まり決まった事項の明示は会社の義務(労働基準法15条)作る義務はない。ただし、契約の内容はできる限り書面で確かめるものとされている(労働契約法4条)
本人の署名いらない会社と本人の両方が署名・合意する

実務では、この2つを1枚にまとめた「労働条件通知書兼雇用契約書」にするのがおすすめです。明示の義務を果たしながら、本人が合意した記録も同じ書類で残せます。

労務の現場から

内定のときに条件を示す書類も、この労働条件通知書兼雇用契約書とまったく同じフォーマットにしておくと、運用がとても楽になります。採用の担当者も条件の提示で使う書類になるので、フォーマットを前もって共有し、内定を伝えるときの説明の流れに組み込んでしまうのが一番スムーズです。

条件の提示用と手続き用で別々の書類を作らないことが大事です。同じ内容を二度作ると、どこかで食い違いが生まれます。

書類に書く事項と、最近の追加

労働条件のうち、次の事項は書面(本人が希望すればメールなど)で明示しなければなりません。

書面で明示する主な事項
対象明示する事項
すべての人契約の期間、就業の場所と業務(変更の範囲を含む)、始業・終業の時刻、残業の有無、休憩・休日・休暇、賃金の決め方・計算と支払いの方法・締め日と支払日、退職(解雇の事由を含む)
契約期間の定めがある人契約を更新する場合の基準、更新の上限(通算の期間や回数)
無期転換を申し込める人無期転換を申し込めること、無期転換した後の労働条件
パート・有期雇用の人昇給・退職手当・賞与の有無、相談の窓口、正社員との待遇の違いの内容・理由の説明を求められること(2026年10月1日から)

2024年4月1日からは、すべての人について「就業場所と業務の変更の範囲」を、契約期間の定めがある人について「更新の上限」と「無期転換」に関する事項を明示することになりました。明示は、契約を結ぶときと、契約期間の定めがある人の契約を更新するたびに行います。

2026年10月1日からは、パートタイムの人と契約期間の定めがある人(契約社員を含む)について、「正社員との待遇の違いの内容や理由について、説明を求めることができる」旨も明示することになりました。使っている労働条件通知書のひな形に、この一文が入っているかを確かめておきます。

待遇の違いをどう判断し、説明を求められたときにどう答えるかは、パートと正社員の待遇差の記事にまとめています。

労務の現場から

法改正で契約書に必ず書く事項が増えているので、漏れのないよう、常に新しい情報を追うようにします。たとえば「就業場所と業務の変更の範囲」は、必ずしもピンポイントで具体的に書かなければならないわけではありません。「同一都道府県内の事業所」「1都3県の事業所」のように、将来起こりうる範囲を包み込む書き方で、うまく対応できます。

変更の範囲は、将来の配置転換などで変わりうる場所と業務の範囲のことです。広めに書いておけば、その範囲の中での配置転換はしやすくなります。反対に、「本社のみ」のように狭く書くと、その外への異動は本人の同意がなければ難しくなると考えておきます。厚生労働省のモデル労働条件通知書にも、変更の範囲を書く欄が設けられています。

パート・アルバイトの契約書では、週の日数を書く代わりに「月◯日」で契約する方法もあります。社会保険の加入の判断との関係は、106万円の壁と130万円の壁の記事で説明しています。

書類は電子で渡し、電子で結ぶ

労働条件の明示は、本人が希望すれば、メールやSNSのメッセージなどでもできます。ただし、本人が本当に電子での受け取りを希望しているかを個別に確かめること、印刷して書面にできる形(添付ファイルなど)で送ること、届いたかを確かめることが条件です。本人が希望していないのに、メールなどだけで済ませることはできません。

実際には、電子で受け取ることに本人から異論が出ることは、ほとんどありません。たまに「紙でほしい」という人がいる程度です。そのときは紙で渡します。断って電子だけで済ませることはできません。念のため、最初に書類を送るときの案内で、電子での受け取りでよいかを確かめ、その返事を残しておくと安心です。

雇用契約書を兼ねる場合は、電子契約のサービスや人事労務のシステムで締結まで済ませると、紙の郵送や押印の回収がいらなくなります。入社前の書類のやり取りも、電子で集める形にそろえます。電子契約のサービスと人事労務のシステムの使い分けは、電子契約サービスの選び方の記事で説明しています。

フォーマットの管理は、Excelでも人事労務のシステムでもかまいません。ただ、システムを使う一番の強みは、内定者を入社予定の人として登録すると、その情報から書類を自動で出力できることです。条件提示の書類と手続きの書類を別々に作るのではなく、システムに入れたデータをそのまま使い回せる仕組みにしておくと、とても便利です。

入社前に集める書類と、入社後の手続き

入社までに本人から集めるものと、入社後に会社が行う手続きを確かめておきます。

  • 労働条件通知書兼雇用契約書の締結が済んでいるか
  • マイナンバー(本人と、扶養する家族の分)を受け取ったか
  • 雇入時の健康診断を受けてもらい、結果を受け取ったか(入社前3か月以内に受けた健康診断の結果でもよい。項目は省略なしで受けてもらう。内定の段階で案内し、入社初日に受診済みかを確かめる)
  • 扶養控除等申告書を受け取ったか(出していない人は源泉所得税の乙欄で計算する)
  • 給与の振込口座と、口座振込への同意を受け取ったか
  • 前の会社を辞めた人: 雇用保険の被保険者番号と、その年の前職の源泉徴収票を受け取ったか
  • 健康保険・厚生年金の資格取得届を、入社日から5日以内に出したか(試用期間中でも最初から加入する)
  • 雇用保険の資格取得届を、入社した月の翌月10日までに出したか
  • 外国人を雇う場合: 在留カードで、在留資格・在留期間の満了日・就労制限の有無を確かめたか

外国人を雇うときの在留カードの見方と、入社・退職の届出は、外国人雇用の記事で説明しています。

雇入時の健康診断を入社前に終える段取りは、健康診断の記事にまとめています。

保険の資格取得の手続きと期限は、次の記事にまとめています。

詳しく読む社会保険の資格取得届・喪失届はいつまでにどこへ?入社・退職の手続きの早見表と段取り

内定を出した後は、簡単に取り消せない

入社の前後で一番気をつけたいのは、内定や契約の取り消しです。内定を出して、ほかに特別な手続きが予定されていない場合、その時点で「入社日から始まり、一定の事由があれば解約できる」という労働契約が成立していると見られることが多くあります。

そのため、内定の取り消しは解雇と同じように扱われます。取り消せるのは、内定を出したときには知ることができなかった事実が分かり、それを理由に取り消すことが客観的に合理的で、社会通念上も相当と認められる場合に限られます(大日本印刷事件、最高裁昭和54年7月20日)。新卒の内定を取り消す会社は、ハローワークへの通知も必要です。

現場の感覚としても、本人に労働条件を渡した後や、手続きを終えて雇用契約を結んだ後は、たとえ入社日の前でも安易に取り消すことはできません。新卒の採用でも同じです。単なる「キャンセル」として処理できるものではないので、そうした事態が起きないよう、会社と本人の双方でしっかり合意を固めておく意識が必要です。

試用期間での雇用終了は解雇と同じ

試用期間中も、労働契約はすでに成立しています。試用期間の終わりに本採用しないこと(本採用拒否)は、通常の解雇より少し広く認められるとされていますが、それでも客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることが必要です。「試用期間だから簡単に辞めてもらえる」わけではありません。

手続きも解雇と同じです。少なくとも30日前に予告するか、予告しない日数分の平均賃金(解雇予告手当)を払います。試用期間中の人でも、入社から14日を超えて働いていれば、この予告が必要です。解雇予告手当の計算は、退職と解雇の記事の計算ツールで確かめられます。

試用期間を3か月にする会社は多いのですが、そのスケジュールはとてもタイトです。30日前の予告を守るには、入社から2か月の時点で判断していなければなりません。

  1. 懸念があれば対応の流れに乗せる入社から2〜3週間働きぶりに懸念があれば、様子見にせず、あらかじめ決めておいた対応の流れに乗せます。
  2. 評価を本人に伝える入社から1か月適性などを見て、何が足りないかを本人に具体的に伝えます。
  3. 改善の状況を確かめる入社から2か月次の1か月で改善したかを確かめ、本採用するかを判断します。
  4. 終了するなら予告する終了の30日前まで本採用しないと決めたら、30日前までに予告します(間に合わなければ解雇予告手当を払います)。

労務の現場から

雇用の終了が妥当と認められるには、試用期間の中で、本人が改善するための一定の猶予を設けたかという進め方が大事になります。「もう少し様子を見よう」と迷っているうちに、時間はあっという間に過ぎてしまいます。

だから、試用期間で終了になりそうな人が実際に出る前に、対応の流れを決めておくべきです。入社して2〜3週間の時点で懸念があれば、すぐにその流れに乗せる運用にしておきます。

注意本人に伝えた評価や、改善の状況は、日付と内容を記録に残しておきます。本採用しない判断をしたときに、猶予を設けて改善の機会を与えたことを説明する材料になります。

入社後に条件を変えるとき

働く時間や日数、時給などの条件は、会社と本人が合意すれば変えられます(労働契約法8条)。変えたときは、新しい条件を書いた労働条件通知書兼雇用契約書を作り直し、合意した記録を残します。就業規則の基準を下回る条件は、合意していても就業規則の基準まで引き上げられます(同法12条)。就業規則の作り方と変え方は、就業規則の記事にまとめています。

契約書は、ふだんの働き方に合わせて結ぶのが基本です。契約を超えて働く状態が続くなら、そのたびに契約を見直します。契約書と実際の働き方がずれたままだと、社会保険の加入や有給休暇の日数の判断まで狂ってしまいます。

入社の手続きは、実務的でテクニカルな対応が求められる場面が多い仕事です。一方で、準備さえできていれば間違えるような業務ではありません。入社の前という大事なタイミングなので、不備のないよう丁寧に進め、本人が気持ちよく入社日を迎えられるように整えておきます。

制度の詳しい内容は、厚生労働省の2024年4月からの労働条件明示のルール変更(モデル労働条件通知書もここから入手できます)、メール・SNSでの労働条件の明示、パートタイム・有期雇用労働者に関するルールの変更(2026年10月1日施行)、内定・内々定の取り消しの留意点、採用内定の取消に関する裁判例で確かめられます。解雇予告のルールは、東京労働局の労働基準法 解雇編にまとまっています。個別の事案で判断に迷うときは、社会保険労務士や弁護士に確認してください。

更新履歴

  • 2026年10月10日: 雇入時の健康診断の確認と、健康診断の記事へのリンクを追加
  • 2026年10月9日: チェックリスト(Excel)を追加
  • 2026年10月7日: 関連する記事へのリンクを追加
  • 2026年10月1日: 関連する記事へのリンクを追加
  • 2026年9月30日: 公開