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健康診断の未受診をなくすには?入社時健診から定期健診の仮予約・追いかけ、結果の保存まで

健康診断を毎年なんとか回しているけれど、未受診の人を追いかけるのに苦労している担当者に向けた記事です。入社時と毎年の健康診断で会社がやることを整理し、未受診者を出さない年間の段取りと、結果が届いた後の扱いをまとめました。

この記事で分かること

  • 入社時と毎年の健康診断で、会社がやることと、受ける項目の違い
  • 未受診者を出さない年間の段取り(時期の決め方・全員分の仮予約・追いかけ方)
  • 病院と決めておくことと、費用を抑える方法
  • 結果の保存・報告(有所見者の集計)と、再検査をどこまで追うか

会社がやる2つの健康診断

会社が従業員に受けさせる健康診断は、入社時の健康診断(雇入時の健康診断)と、年1回の定期健康診断の2つが基本です。どちらも労働安全衛生法で会社に義務づけられたもので、費用は会社が負担します。

会社が行う健康診断
種類いつ会社の規模による違い
雇入時の健康診断雇い入れるときすべての会社
定期健康診断1年以内ごとに1回すべての会社。常時50人以上の事業場は、結果を労働基準監督署に報告する

対象になるのは「常時使用する労働者」です。パート・アルバイトは、契約期間が1年以上(更新で1年以上になる見込みを含む)で、週の所定労働時間が同じ仕事をする正社員の4分の3以上なら対象になります。4分の3に届かなくても、おおむね2分の1以上なら受けさせるのが望ましいとされています。受診にかかった時間の賃金は、法律では決まっておらず会社と従業員で決めることですが、払うのが望ましいとされています。

入社時の健康診断は、入社のたびに発生します。一方、定期健康診断は、年1回であれば時期は会社が決めてよく、いつやるかを決めることが、この仕事のコツになります。年度で管理する会社の、1年の流れは次のとおりです。

  1. 時期と病院を決める年度の初め受診の期間と、受け入れてくれる病院を決めます。ストレスチェックを行う会社は、その実施時期もここで年間の予定に入れます。
  2. 全員分を仮予約して案内する5〜8月ごろに受診会社が受診日を仮に決めて予約し、変更は本人から病院に連絡してもらいます。
  3. 結果を回収し、今の名簿と突き合わせる受診の後結果の届いていない人が、未受診の人です。
  4. 未受診の人を追いかける秋〜12月年内で追い切ります。年明けは病院の予約が取りにくくなります。
  5. 医師の意見を聞き、報告する結果がそろったら異常の所見がある人について医師の意見を聞きます。50人以上の事業場は、結果を労働基準監督署に報告します。

入社時の健診は入社前に終える

雇入時の健康診断は、入社する人を雇い入れるときに行います。入社前3か月以内に受けた健康診断の結果を本人が出せば、その結果で受けた項目は省略できます(労働安全衛生規則43条)。前の会社で受けた定期健康診断の結果が使えることもあるので、まず手元に結果がないかを聞きます。

雇入時の健康診断は、入社前までに終わらせる仕事として扱います。入社後の期間は、何かあったときのための予備と考えておきます。入社予定の人は、前の会社の有給を消化しているなど、入社前のほうが時間に余裕があることが多いものです。内定の段階で伝えることの1つに入れ、とにかく早めに案内します。

入社時の健康診断は、入社の手続きの流れに組み込んでしまうことがすべてです。内定を出したら案内し、入社日までに結果を受け取る、という順番を決めておけば、毎回思い出す必要がなくなります。

人事労務のシステムを使っている会社なら、入社手続きのフォーム(入社する人に答えてもらう設問)に、健康診断の項目を足せることが多いです。健診結果のPDFをアップロードしてもらう欄を作れたり、最初から用意されていたりするシステムもあります。案内と回収をシステムの中で済ませれば、紙やメールでのやり取りが要らなくなります。この仕組みは、定期健康診断の結果の回収にも使えます。

受ける項目に気をつける

雇入時の健康診断は、定期健康診断と項目がほぼ同じですが、年齢による省略ができません。定期健康診断では、40歳未満の人(35歳を除く)の血液検査や心電図などを医師の判断で省略できるため、若い人が「定期健診」の内容で受けると、雇入時の健康診断としては項目が足りないことがあります。

雇入時と定期の健康診断の項目(労働安全衛生規則43条・44条)
項目雇入時定期で省略できる場合(医師が必要でないと認めたとき)
既往歴・業務歴、自覚症状・他覚症状、血圧、尿検査必要省略できない
身長・体重・腹囲・視力・聴力必要身長は20歳以上、腹囲は40歳未満(35歳を除く)など
胸部エックス線必要40歳未満(20・25・30・35歳を除く)など
貧血・肝機能・血中脂質・血糖・心電図必要40歳未満(35歳を除く)
喀痰検査不要胸部エックス線で病変がないときなど

労務の現場から

本人は受けたつもりでも、項目が足りずに受け直しになることがあります。健康診断の呼び名は病院によって違うので、「入社用(雇入時)の健康診断を受けたい」と病院に相談してもらうのが確実です。そうしたメニューがない病院なら、定期健康診断の項目を省略なしで受けてもらいます。

雇入時の健康診断を受けた人は、受けた日から1年間は、定期健康診断で同じ項目を省略できます(労働安全衛生規則44条3項)。入社前に定期健康診断と同じ項目をすべて受けてもらえば、その年の定期健康診断にも回さずに済むので、最初からその内容で受けてもらうのが一番です。

入社初日に受診を確かめる

案内をしていても、受けないまま入社してくる人はいます。入社初日には、オリエンテーションや手続きの説明など、本人と必ず接する場面があるはずです。その場で受診が済んでいるかを確かめ、まだなら、仕事が忙しくなる前に、日を決めて早めに受けてもらいます。

内定から入社日までの段取りの全体は、次の記事にまとめています。

詳しく読む入社手続きは何をいつまでに?内定から試用期間まで、労働条件通知書兼雇用契約書で回す段取り

定期健診の時期は決め打ちにする

定期健康診断の時期は、業務の忙しい時期を避けて決めます。ただ、あらゆる部署の事情に配慮しようとすると、いつまでも決まりません。基本は、会社が時期を「決め打ち」にします。

年度で管理するなら、なるべく年度の早いうちに始めます。4月は異動や入社で忙しい時期と重なりやすいので、5〜8月あたりがねらい目です。後ろにずらしすぎると、未受診の人を追いかける時間が足りなくなります。忙しい時期を避けつつ、追いかけが十分に回る時期に置くのが判断の軸です。

年度で管理する場合の、定期健康診断の1年
時期やること判断のポイント
4月受診の期間と病院を決める配慮しすぎず、会社が決め打ちにする
5〜8月全員分を仮予約し、受診してもらう変更は本人から病院へ
9〜10月未受診の人に1回目の声かけ「とにかく受けてください」でよい
11〜12月期日を切って追いかける「◯日までに受診日を連絡してください」と期限を示す
1〜3月予備の期間病院が埋まりやすい。ここに頼らない

労務の現場から

受診を促しても、なかなか受けてもらえないことがあります。そのまま1〜3月になると、本人に受ける気があっても病院の予約が埋まっていて、いくつもの病院に問い合わせて、なんとか予約を取ることになりがちです。2月・3月に入ってから年度内の受診を促しても、間に合わないことが多いので、年内で追い切るスケジュールを組むのが一番のおすすめです。

全員分を仮予約し、変更は本人に

受診日は、従業員一人ひとりの予定を聞いて決めようとすると、きりがありません。会社が全員分の受診日を仮に決めて予約し、都合が悪い人は本人が病院に連絡して変更する、という形にします。「いつか受けてください」と案内するより、受ける日が決まっていて、そこから変える形のほうが、本人も動きやすくなります。

病院とは、事前に次のことを決めておきます。提携している病院がない場合は、人事から病院に連絡して「◯人分の予約枠をください」と相談し、情報の受け渡しのしかたを一緒に決めていきます。

  • 会社がまとめて予約を入れる方法(名簿の渡し方)を決めたか
  • 受診日の変更は、本人から病院に直接連絡してよいことにしたか
  • 予約した人が来なかったときに、病院から会社へ連絡が来るようにしたか
  • 結果の会社控えを、病院から会社に直接送ってもらえるか(受診のときに本人の同意を取ってくれる病院もある)
  • 費用の請求先と請求のしかた(会社にまとめて請求か)を決めたか
  • 結果をデータ(一覧)でもらえるか。有所見の人の一覧ももらえるか(有料のこともある)

労務の現場から

業務を一番楽にするのは、親身になってくれる病院を提携先として見つけることです。近くて費用が抑えられ、予約や結果の受け渡しの運用が楽な病院が見つかれば、それが最善です。人数が少ない会社でも、ある程度融通をきかせてもらえることがあります。人数が少ないから無理だろうと決めつけず、近くの病院に気軽に打診してみます。

協会けんぽに入っている会社なら、協会けんぽの生活習慣病予防健診を定期健康診断として使えます。定期健康診断の項目を含み、がん検診も付いた健診で、協会けんぽが費用の一部を補助します。対象は35歳から74歳の被保険者で、令和8年度からは20歳・25歳・30歳の人も補助を受けられるようになりました(胃・大腸がんの検査を除く)。自己負担の額や申し込みのしかたは、都道府県の支部の案内で確かめてください。

未受診者は今の名簿で突き合わせる

予約を入れるときに、Excelやスプレッドシートで受診の管理表を作っておきます。予約さえ入れてしまえば、受診した人の分は進みますし、予約した日に来なかった人は病院から連絡が来ます。担当者が最初の声かけをする前に、自然に進んでいく段階を作れるわけです。

そのうえで、未受診の人は、結果の回収状況から見つけます。健康診断の結果は会社が保存しなければならないので、回収できているかを名簿と突き合わせれば、おのずと未受診の人が出てきます。

注意突き合わせは、年度の初めに作った名簿ではなく、その時点で在籍していて受けるべき人の名簿を抜き出して行います。年度の途中で入社・退職した人や、契約が変わって対象になった人がいるので、最初の名簿のままだと確実に漏れが出ます。

追いかけるときは、段階を分けます。1回目の声かけは「とにかく受けてください」で十分です。期日が近づいてきたら、「◯日までに受診日を連絡してください」と期限を示します。事業所が多い会社では、労務がすべての人を直接追いかけるより、各事業所の管理者に「必ず受診させる」ことを業務の一部として任せる流れにします。シフト制で働いていて勤務の調整が必要な職場は、上司を巻き込まないと受診の日が取れません。

受診率100%は確かにハードルが高い目標です。それでも、受けてもらうために1年間を使えます。早めに始めて時間を味方にすれば、十分に届く目標です。

結果の保存・報告と再検査

健康診断の結果が届いたら、会社は次のことを行います(厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」)。

健康診断の結果が届いた後に会社がやること
やること期限・期間対象
結果を本人に通知する遅滞なくすべての会社
健康診断個人票を作り、保存する5年間すべての会社
異常の所見がある人について、医師の意見を聞く健診を受けた日から3か月以内すべての会社。意見を聞いて、必要なら勤務時間の短縮などの措置をとる
定期健康診断結果報告書を出す遅滞なく常時50人以上の事業場。2025年1月1日から電子申請が原則

50人以上の事業場で手間がかかるのは、定期健康診断結果報告書です。受診した人数のほか、聴力・胸部エックス線・血圧・肝機能などの検査項目ごとに、所見があった人(有所見者)の数を書きます。人数が少なければ結果を目で見て数えれば足りますが、人数が増えると集計が大変です。健診の結果をデータでもらえる病院は多く、料金がかかる場合もありますが、それで集計は一気に楽になります。所見があった人について医師の意見を聞くときも、所見のあった人の一覧を病院からもらえるかを聞いておくと、産業医への依頼がすぐにできます。

健康診断の結果は、病歴などを含む取り扱いに注意が必要な個人情報です。結果を見られる人を担当者に限り、保管場所を決めておきます。

結果で「要再検査」「要精密検査」となった人の受診(二次健診)は、法律で会社に義務づけられてはいません。会社がやるのは、受診を勧めるところまでです。まずは、勧める連絡を最低限でも確実に出せる仕組みを整えます。医師の意見を聞くときに、再検査の結果が判断の材料になることもあるので、勧めた記録は残しておきます。

会社の規模で変わること

健康診断の義務は、会社全体ではなく、事業場(本社・支店・工場など、場所ごとの単位)ごとの人数で決まります。常時50人以上の労働者がいる事業場では、次のことが加わります。

事業場の人数で変わること
項目50人以上の事業場50人未満の事業場
定期健康診断結果報告書労働基準監督署に出す出さなくてよい
産業医選任する選任の義務はない。地域産業保健センターで医師の相談を無料で受けられる

人数が少ない会社でも、近くの病院に相談すれば融通をきかせてもらえることがあり、結果の会社控えを直接送ってもらうなど、提携による手間の削減を受けられます。事業所が多い会社では、労務だけで抱え込まず、勤務の調整ができる現場の管理者に受診の管理を任せる運用が欠かせません。人数が増えるほど病院にとっても受ける意味が大きくなるので、従業員が増えたときは、結果のデータや有所見の人の一覧をもらえないか、病院に相談してみる価値があります。50人未満の事業場は、地域産業保健センターで、健康診断の結果についての医師の意見や、面接指導を無料で受けられます。

年1回のストレスチェックも、同じく年間の予定に入れて回す仕事です。常時50人以上の事業場は今も義務で、50人未満の事業場も2028年4月1日から義務になります。実施の流れと、結果を誰が見てよいかは、次の記事にまとめています。

詳しく読むストレスチェックはどう進める?50人未満も2028年に義務化、Webでの実施・国のプログラムの使い方と結果の扱い

早く始めて、年内で追い切る

健康診断を確実に回すコツは、仕組みで進むようにすることです。入社時の健康診断は入社の手続きに組み込み、内定の段階で案内する。定期健康診断は年度の早い時期に決め打ちにして、全員分を仮予約し、今の名簿で結果を突き合わせて年内で追い切る。この流れを一度作れば、毎年の仕事はずっと軽くなります。

制度の中身は、次の一次情報で確かめられます。健康診断の種類と会社の義務は厚生労働省の労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう、条文は労働安全衛生規則(43条〜52条)、報告の電子申請は労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービスのお知らせにあります。

更新履歴

  • 2026年10月10日: 公開