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電子契約サービスはどう選ぶ?雇用契約書は人事労務システム、社外との契約は専用サービスで使い分ける

雇用契約書や業務委託の契約書を電子にしたいけれど、人事労務システムの機能で足りるのか、電子契約サービスを別に入れるべきか分からない。そんな担当者や経営者に向けて、2つの種類の使い分けと、入れる時期の目安、主要なサービスの料金をまとめた記事です。料金は2026年10月時点で各社の公式サイトに載っているもの(税抜)です。

結論

電子契約は、送る相手で使い分けます。雇用契約書・労働条件通知書・給与改定の通知など従業員向けの書類は人事労務システムの機能、業務委託や取引先との契約は単独の電子契約サービスが向いています。従業員向けは、勤怠と給与のシステムが決まってから入れるのが基本で、社外との契約が多い会社は、社外向けのサービスを先に入れてかまいません。従業員が10人前後で、書類を出すのが年1回程度なら、従業員向けは無理に入れなくても困りません。

2つの種類と使い分け

電子契約には、人事労務システムに付いている機能と、単独で使う電子契約サービスの2種類があります。どちらも、書類をWebで送り、相手が画面で確かめて同意・署名する点は同じですが、誰に送るための仕組みかが違います。

人事労務システムの機能と、電子契約サービスの違い
比べる点人事労務システムの機能電子契約サービス
主な相手システムに登録した従業員社外の相手(メールアドレスがあれば送れる)
向く書類雇用契約書・労働条件通知書、給与改定の通知、有期契約の更新業務委託契約書、取引先との基本契約・秘密保持契約
強み従業員の氏名・給与などを差し込み、まとめて作れる相手の登録が要らず、誰とでも同じ手順で契約できる
主な製品SmartHR、freee人事労務、ジョブカン労務HR、ジンジャー、KING OF TIMEクラウドサイン、GMOサイン、freeeサイン、マネーフォワード クラウド契約

人事労務システムで業務委託の相手と契約しようとすると、その相手を従業員と同じ名簿に登録することになり、人数の集計や手続きの対象を見誤るもとになります。総務や取引の担当が扱う契約まで人事労務システムに載せるのも、権限の管理の面で無理があります。社外との契約には、電子契約サービスを別に用意するのが自然です。

入れる時期の目安

人事労務のシステム化は、勤怠 → 給与 → 電子契約の順に入れるのが基本です。電子契約は、勤怠や給与と違って、入れないと業務が回らないものではありません。また、給与計算ソフト(人事労務システム)を先に決めておけば、その製品に付いている電子契約の機能をそのまま候補にできます。

例外は、業務委託や取引先との契約が多い会社です。社外向けの電子契約サービスは、勤怠や給与とデータがつながらないので、郵送や押印の手間が負担になっているなら、勤怠や給与とは別に先に入れてかまいません。

どちらの種類を入れるかは、「何をしたいか」で決まります。入社の書類の回収を早くしたいのか、社外との契約の郵送をなくしたいのかで、選ぶ種類から変わります。あれもこれもと1つの製品に求めるより、「ここは諦めるが、今回の要望は必ず叶えられるものにする」と決めておくと、迷わずに済みます。

従業員向けの機能を入れるかどうかは、年間に出す書類の枚数で考えます。入社のときの雇用契約書だけでなく、有期契約の更新や給与改定の通知も数に入れます。

計算例: 年に入社が6人、半年ごとに契約を更新するパートが12人、昇給の時期に全員40人へ給与改定の通知を出す会社

6通(入社) + 12人 × 2回(更新) + 40通(給与改定) = 70通

1通ずつExcelで作ってPDFにし、メールで送って回収する手間と、ひな形を作って差し込みで送る手間を比べます。

労務の現場から

従業員が10人前後で、書類を出すのが年1回程度なら、人事労務システムの電子契約はなくても困りません。一方、20〜30人を超えてくると、給与改定の通知や契約の更新をExcelで1人ずつ作る手間が目に見えて増えてきます。

小規模で、社長や担当者1人が書類をまとめて管理できている会社なら、無理にシステムに載せる必要はありません。ひな形を作る手間や、過去の書類をPDFで取り込む準備の手間と、今の枚数で得られる利点を比べて決めます。

従業員に送るときの決まり

労働条件通知書をメールなどの電子で渡せるのは、本人が希望した場合で、出力して書面にできる方法に限られます(2019年4月1日から)。本人が希望していないのに電子だけで渡すことはできず、厚生労働省は、希望したかを個別にかつ明示的に確かめること、届いたかを確かめること、出力して保存するよう伝えることを求めています。「紙がよい人だけ知らせてください」という聞き方では、希望を確かめたことにならないので注意します。

労務の現場から

実務では、「今回から雇用契約書などを電子で送りたいのですが、よろしいですか」と1人ずつ伝え、了承の返事をもらってから送る運用が一般的です。返事のメールや、システム上の同意の記録を残しておけば、希望を確かめた記録になります。紙を希望する従業員には、印刷して渡すと決めておけば十分に回ります。

製品によっては、受け取る従業員が電子での受け取りに同意する画面が組み込まれているものもあります。こうした仕組みの有無も、比べる点の1つです。

また、2024年4月から、労働条件として明示する項目が増えています(就業の場所・業務の変更の範囲、有期契約の更新の上限など)。ひな形を作るときは、増えた項目が入っているかを確かめます。ひな形を1か所直せば全員分に反映されることも、システムで出す利点です。

詳しく読む入社手続きは何をいつまでに?内定から試用期間まで、労働条件通知書兼雇用契約書で回す段取り

社外との契約と印紙

業務委託(請負)の契約書や、取引先との継続的な取引の基本契約書などは、紙で作ると印紙が必要になる場合があります。電子契約で交わしたデータは、印紙税がかかる「文書」にあたらないため、印紙は要りません。社外との契約が多い会社ほど、印紙代と郵送の手間の差が大きくなります。業務委託の契約そのものの注意点(雇用とみなされない線引きや、フリーランス法で発注側がやること)は、業務委託と雇用の違いの記事にまとめています。

電子契約サービスの多くは、相手にアカウントの登録を求めず、メールで届いたリンクから確かめて同意する形です。相手の負担が小さいかどうかも、サービスを選ぶときに見ておきます。

主要サービスの料金と特徴

中小企業での利用が多く、公式サイトで料金や機能を確かめられるサービスを選んでいます。料金は2026年10月時点の公式サイトの表示(税抜)で、変わることがあるので、申し込みの前に公式サイトで確かめてください。

社外向けの電子契約サービス

電子契約サービスの料金の目安(2026年10月時点、税抜)
サービス月額の目安送信の料金無料プラン
クラウドサインLight 11,000円(ユーザー数無制限)1件220円1ユーザー・月2件まで
GMOサインライト 8,800円(年契約。ユーザー数無制限)1件100円(当事者型は300円)1ユーザー・月5件まで
freeeサインStarter 5,980円(年払い。月50通込み)超えた分は1通100円3ユーザー・月1通まで
マネーフォワード クラウド契約マネーフォワード クラウドの料金プランに含む(人数はプランによる)0円なし

クラウドサインは弁護士ドットコムの電子契約サービスで、Lightプランは月11,000円に送信1件220円を足した料金です。ユーザー数に上限がないので、社内の複数の部署で使いたい会社に向きます(公式サイトの料金)。

GMOサインは、ライトプランが年契約で月8,800円です。メール認証で締結する立会人型が1件100円、相手も電子証明書で署名する当事者型が1件300円で、契約の重さに応じて使い分けられます(公式サイトの料金)。

freeeサインは、Starterプランが年払いで月5,980円(月払いは7,180円)で、月50通までの送信を含みます。freee人事労務とつなぐと、従業員の情報を使った雇用契約書の締結にも使えるので、従業員向けと社外向けを1つのサービスで管理できます(公式サイトの料金)。

マネーフォワード クラウド契約は、送信料と保管料が0円で、件数による追加の料金がありません。マネーフォワード クラウドの料金プランに含まれ、プランごとに使える人数が決まっています(ビジネスプランは3名、超えた分は1人900円)。マネーフォワードの会計ソフトを使っている会社や、契約の件数が多い会社に向きます(公式サイトの料金、クラウド契約の料金)。

人事労務システムの電子契約の機能

従業員向けの電子契約は、多くが人事労務システムのオプションで、料金は本体のプランと合わせた見積や、オプションごとの料金になります。すでに使っている人事労務システムがあるなら、まずその製品に機能があるかを確かめるのが一番の近道です。従業員の情報をそのまま使え、追加の費用も小さく済むことが多いからです。

人事労務システムの電子契約の機能
製品機能の形料金の形
SmartHR文書配付(作成・配付・締結・保管)有料オプション(見積)
freee人事労務雇用契約書を作り、freeeサインで締結雇用契約オプション(freeeサインのアカウントは無料)
ジョブカン労務HR登録済みの情報を差し込んで書類を作成・送付労務HRの料金に加えて、公式サイトで確認
ジンジャー雇用契約書・労働条件通知書の作成・締結・管理使う製品×人数(公式サイトで確認)
KING OF TIME入社の書類の電子署名と回収別料金のオプション

各製品の機能は、SmartHRの文書配付、ジョブカン労務HRの書類作成、ジンジャーの電子契約、KING OF TIMEの料金で確かめられます。従業員向けと社外向けの両方が要る会社は、「従業員向けは人事労務システムのオプション、社外向けは電子契約サービスの低い料金のプラン」と組み合わせると、1つの高いプランで全部をまかなうより安く済むことがあります。

過去の書類で確かめる

労務の現場から

導入で時間がかかるのは、設定と、その設定が正しいかの検証です。出している書類の種類や、差し込む項目、紙を希望する人への対応などを先に棚卸ししておき、説明を聞きながら「この書類はこの製品でどう作るのか」を1つずつ当てはめて確かめます。

人事労務システムの電子契約は、ひな形を一度作れば使い回せるのが利点ですが、裏を返せば、最初のひな形作りと過去の書類の取り込みに手間がかかります。お試しで1〜2種類の書類を作り直してみると、自社の書類を全部移すのにどれくらいかかるかが見えてきます。その手間と、今の枚数で得られる利点を比べて、入れるかどうかを最終的に決めます。

  1. 書類を相手で振り分ける従業員向けと社外向けに分け、それぞれの年間の枚数を数えます。
  2. 候補を3社ほどに絞り、同じ質問を送る下の質問を、各社に同じ言葉で送ります。
  3. 過去の書類を作り直す過去に出した雇用契約書や給与改定の通知を、お試しでひな形から作り直し、給与額・手当・契約期間などが元の書類と一致するかを確かめます。
  4. 自分宛てに送って締結まで試すスマートフォンで開いて同意・署名するまでの流れを、受け取る側の目で確かめます。
  5. 従業員に案内してから始める電子で送ることと、紙を希望する人には紙で渡すことを伝えます。給与明細も電子にするなら、その承諾とあわせて案内すると一度で済みます。

問い合わせでは、次の点を各社に同じように聞きます。

  • (従業員向け)年間◯通ほど出します。送信料を含めた初期費用と月額の総額はいくらですか
  • (従業員向け)書類に差し込める従業員の情報(給与額・手当・雇用区分・契約期間など)の一覧はありますか
  • (従業員向け)紙での受け取りを希望する従業員には、どう対応できますか。退職した人の書類は、いつまで保管・取り出しができますか
  • (社外向け)社外との契約は月◯件ほどです。送信料を含めた月額の総額はいくらですか
  • (社外向け)相手にアカウントの登録は要りますか。スマートフォンだけで締結できますか
  • (社外向け)過去の紙の契約書をPDFで取り込み、一緒に管理・検索できますか

電子契約を含めたシステム化の順番は、次の記事にまとめています。

詳しく読む人事労務システムは何から入れる?勤怠・給与・電子契約の導入順と選び方、準備期間の見積もり

労働条件の電子での明示は厚生労働省のリーフレット、2024年4月からの明示のルールは労働条件明示のルールの改正、電子契約と印紙税は国税庁の質疑応答事例で確かめられます。

更新履歴

  • 2026年10月7日: 公開