固定残業代は入れるべき?有効になる条件と、超えた分の精算・求人票の書き方
固定残業代(みなし残業代)を入れるかどうか迷っている経営者や、すでに入っている会社で給与計算を担当している人に向けた記事です。有効と認められる条件、決めた時間を超えた分の精算、求人票に書くことを、計算例とあわせて整理します。
結論
固定残業代は、決めた時間を超えた分を毎月きちんと払い、通常の賃金と区別できる形にしていれば、有効な仕組みです。ただ、残業代を払わなくてよくなる仕組みではなく、給与計算の手間はむしろ増えます。経営の課題を解く手段として必要になるまでは、積極的に入れる必要はありません。
固定残業代とは
固定残業代は、毎月決まった時間分の残業代を、実際の残業時間にかかわらず定額で払う仕組みです。基本給とは別に、「固定残業手当 ◯円(月20時間分の時間外手当として支給)」のような手当として払う形が一般的です。
よくある誤解は、「固定残業代を払っていれば、残業代はそれ以上払わなくてよい」というものです。実際の残業時間で計算した割増賃金が固定残業代を上回った月は、差額を払わなければなりません。
有効と認められる条件
固定残業代が残業代の支払いとして認められるには、次の条件を満たしている必要があります。満たしていないと、固定残業代の部分も通常の賃金とみなされ、残業代を改めて全額払うことになりかねません。
- 通常の労働時間の賃金と、固定残業代の部分が、はっきり区別できるか(金額と時間数が分かるか)
- その手当が、時間外労働・休日労働・深夜労働のどれの対価として払われているかが、契約書や就業規則、説明から分かるか
- 決めた時間を超えた分の割増賃金を、毎月差額として払っているか
- 固定残業代を除いた基本給が、最低賃金を下回っていないか
この区別は、求人票だけでなく、就業規則や労働条件通知書(雇用契約書)でもはっきりさせておく必要があります。入社のときに渡す書面に、固定残業代の金額・時間数と、超えた分を追加で払うことを書いておきます。
手当が固定残業代として認められるかは、契約書などの書き方だけでなく、会社から本人への説明の内容や、実際の労働時間の状況も含めて判断されます(日本ケミカル事件、最高裁平成30年7月19日)。
超えた分の精算のしかた
計算例: 基本給25万円に、月20時間分の固定残業代を払っている人が、30時間残業した場合(月平均所定労働時間160時間)
単価: 250,000円 ÷ 160時間 = 1,562.5円 固定残業代(20時間分): 1,562.5円 × 1.25 × 20時間 = 39,063円 実際の残業代(30時間): 1,562.5円 × 1.25 × 30時間 = 58,594円 差額: 58,594円 − 39,063円 = 19,531円を追加で払う残業が20時間より少なかった月も、固定残業代は減らさずに満額払います。深夜や法定休日の労働は、固定残業代に含めていなければ、別に計算して払います。
精算は、毎月「固定残業代で払った額」と「実際の時間で計算した割増賃金」を比べ、足りない分を払う形です。固定残業代の単価の計算に使う基本給は、固定残業代を除いた額です。
固定残業代があると、給与計算ソフトの設定が一段大変になります。勤怠の側には影響しませんが、給与の側で、固定残業代の時間数と、超えた分の差額の計算を正しく設定する必要があります。入れる前に、使っている給与計算ソフトでこの精算を自動でできるかを確かめておきます。
求人票に書くこと
固定残業代を採用している会社は、求人票や募集要項に、次の3つをすべて書く必要があります。
| 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 固定残業代を除いた基本給の額 | 基本給 250,000円(固定残業手当を除く額) |
| 固定残業代の時間数と金額 | 固定残業手当 39,063円(時間外労働の有無にかかわらず、20時間分の時間外手当として支給) |
| 超えた分を追加で払うこと | 20時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給 |
入れるべきかどうか
労務の現場から
固定残業代を入れる会社・入れない会社のどちらも経験してきました。入れると、見た目の給与が上乗せされる、というのが経営にとっては大きいのでしょう。あとは、人件費をコントロールしやすくなります。従業員の側から見ると、その枠の中でいかに無駄な残業をしないか、という感覚になっていると思います。
ただ、個人的には、なくなったほうが良いと思っている仕組みの1つです。ここは労務とは別に、人材マネジメントとしての人事戦略が関わってきます。基本的には、経営の課題にぶつかって、その解決の手段の1つとして考えるようになるまでは、積極的に入れる必要はありません。
| 立場 | 良い点 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 会社 | 求人の見た目の給与が上がる。人件費の見通しを立てやすい | 給与の設計と毎月の差額の精算が増える。条件を欠くと残業代を全額払い直すことになる |
| 従業員 | 残業が少ない月も定額がもらえる | 基本給が低く見えることがある。超えた分が払われているか確かめにくい |
残業代の計算のしかたと、36協定での残業時間の管理は、次の記事にまとめています。
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