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ハラスメント・労務トラブル

労基署の調査(臨検)が来たらどうする?連絡から当日の対応、是正勧告後の是正報告書まで

労働基準監督署(労基署)から「調査に伺います」と連絡が来たときに、何をそろえ、当日どう対応し、指摘を受けたら何を出せばよいかを順番にまとめた記事です。調査の種類ときっかけ、そろえておく帳簿と保存期間、是正勧告書と指導票の違い、是正報告書の書き方まで整理します。

  1. 連絡の中身を確かめる連絡が来たら日時と、用意する書類の一覧を確かめます。都合が悪ければ日程を相談します。
  2. 書類をそろえて見直す調査の前一覧の書類を集め、抜けや食い違いがないかを先に確かめます。
  3. 当日、書類の確認を受ける当日監督官が一覧に沿って書類を確かめ、分からない点を質問します。
  4. 指摘の書面を受け取る指摘があれば法違反があれば是正勧告書、改善を求める点があれば指導票が渡されます。
  5. 直して報告する期日まで指摘ごとに直し、是正報告書(指導票には改善報告書)を出します。

調査の種類と来るきっかけ

労基署の調査は「臨検(りんけん)」や「監督指導」と呼ばれます。労働基準監督官が事業場に立ち入り、帳簿や書類を確かめ、会社や働く人に質問するものです(労働基準法101条)。きっかけの違いで、主に次の種類があります。

労基署の調査(監督)の種類
種類きっかけ中身
定期監督労基署の計画法改正の内容や管内の状況をふまえて選んだ事業場に入る
申告監督働く人からの申告申告された内容を中心に確かめる
災害時監督重い労働災害原因を調べ、同じ災害を防ぐよう指導する
再監督前回の指摘指摘した違反が直ったかを確かめる

労働局の説明では、監督指導は原則として予告なしに行うものとされています。ただ実務では、事前に電話や文書で連絡が来て、用意する書類を指定されることが多くあります。

現場で見るきっかけとして多いのは、従業員からの通報や相談と、出すべき届出が出ていないことです。働く人が労基署に申告したことを理由に、解雇などの不利益な扱いをすることは法律で禁じられています(同法104条)。申告の前に社内で声を拾えるよう、相談を受ける窓口を整えておくことも予防になります(窓口の設け方はハラスメント防止の実務で扱っています)。勤怠と36協定の日々の管理で指摘の材料を作らない方法は、次の記事にまとめています。

詳しく読む残業と36協定の実務は?協定の結び方・届け出から、上限を守る月の途中の確認まで

連絡が来たら書類をそろえる

連絡では、調査の日時と場所、当日に用意する書類が伝えられます。この一覧が、そのまま当日に確かめられる範囲になります。

労務の現場から

労基署は敵ではありません。用意する書類で分からないものがあったり、日程を動かしたかったりするときは、連絡すれば答えてくれますし、調整もしてくれます。肩ひじを張りすぎずに準備を進めてかまいません。

書類の一覧は、調査の狙いを読む手がかりにもなります。特に確かめたい点や疑問のある点があるときは、その分野の書類が厚めに求められていることが多いので、「このあたりがポイントになりそうだ」と予測して、先に中身を見直しておけます。

労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(タイムカードなどの労働時間の記録)は、あわせて「法定三帳簿」と呼ばれる、調査の基本になる書類です。保存期間は法律では5年ですが、経過措置で当分の間は3年とされています。

そろえておく主な帳簿と保存期間
帳簿書くこと保存期間
労働者名簿氏名・生年月日・履歴・性別・住所・従事する業務の種類・雇い入れの日・退職の日と理由など退職などの日から3年
賃金台帳氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数、時間外・休日・深夜の時間数、賃金の種類ごとの額、控除した額など最後に記入した日から3年
出勤簿日ごとの始業・終業の時刻などの記録3年
年休管理簿年次有給休暇管理簿。有給休暇を与えた時季・日数・基準日有給休暇を与えた期間中と、その期間が終わってから3年
健診個人票健康診断個人票。健康診断の結果5年
衛生委員会衛生委員会の議事録(常時50人以上の事業場)3年

帳簿のほかに、人数で決まる義務が守られているかも見られます。常時50人以上の事業場では、産業医を選んで届け出ているか、衛生委員会を毎月開いて議事録を残しているかを確かめられることがあります。

賃金に関する記録は、賃金の支払日のほうが遅ければ支払日から数えます。このほか、36協定届や就業規則(常時10人以上の事業場は届出が必要)の控えも、すぐ出せるようにしておきます。

当日は書類の確認が中心

監督官は、身分を示す証票を持って来ます。当日は、事前に伝えられた書類を確かめ、分からない点を質問する形で進みます。必要に応じて、職場の設備を見たり、働く人に話を聞いたりすることもあります。

労務の現場から

当日は、新しく一から話を聞かれるというより、一覧に沿って書類が「あるか・ないか」を見て、その中身を確かめるのが中心です。質問があれば、その場で答えます。

対応するのは、自信があれば労務の担当者本人でかまいませんし、上司に同席してもらってもかまいません。ただ、話は細かな実務に及ぶので、担当者自身が説明できるようになっておくのが一番です。

  • 連絡で指定された書類が、すべて手元にそろったか
  • 賃金台帳の時間外・深夜の時間数を、出勤簿の記録と突き合わせたか
  • 36協定の上限を超えた月がないかを確かめたか
  • 当日に説明する人と、書類を出し入れする人を決めたか

注意調査を拒んだり、質問にうそで答えたり、事実と違う内容を書いた帳簿を出したりすると、それ自体が30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法120条)。不備があっても、ありのままを見せたうえで、どう直すかを考えます。

是正勧告書と指導票の違い

調査で問題が見つかると、書面で指摘を受けます。書面は2種類あり、出す報告書も違います。

指摘の書面と、出すもの
書面書かれること出すもの
是正勧告書違反した法律の条文と違反の事実、直す期日是正報告書
指導票条文の違反としてではなく、改善を求める事項(例: 労働時間の管理のしかた)改善報告書

是正勧告は行政指導です。ただし、指導に従わない場合に限らず、違反が重大・悪質と判断された場合は、労基署は行政指導を終えて送検の手続きに移ります。送検された事案は、会社名を含めて労働局が公表することがあります。報告は、是正の期日が来たら遅れずに出すよう求められています。

是正報告書の書き方と出し方

労務の現場から

臨検で突っ込まれるのは、書類を用意していながら中身に不備があるところです。指摘の多くは、届出が出ているか、36協定が守られているかといった、直し方のはっきりした内容です。指摘を受けた時点で直し方はおのずと見えているはずなので、それを一つずつ進めます。

  1. 指摘ごとに中身を確かめる受け取ったらすぐ条文・違反の事実・期日を一覧にします。直し方が分からなければ、担当の監督官に聞きます。
  2. 同じ問題がほかにないかを見る指摘された人や月だけでなく、ほかの人・ほかの部署に同じ問題がないかを確かめます。
  3. 直す協定の締結と届出、不足した賃金の計算と支払い、就業規則の作成と届出など、指摘ごとに直します。就業規則を変えるときは過半数代表者の意見を聴く手続きも要るので、早めに始めます。
  4. 報告書を書き、裏付けを添える指摘ごとに「何を、いつ直したか」を書き、書類の写しや振込の明細などを添えます。
  5. 期日までに出す是正の期日の後すぐ郵送でよいとしている監督署もあります。
是正報告書の書き方の例(労働局の記載例をもとに作成)
指摘書くこと添えるもの
通知書労働条件通知書を作り、交付した作った通知書の写し
36協定協定を結び、労基署に届け出た届け出た協定届の写し
割増賃金不足額を計算し、支払った計算の内訳と、受領書や振込の明細
就業規則就業規則を作り、労基署に届け出た届け出た就業規則の写し
健康診断対象の人が定期健康診断を受けた(または受診の予定日)受診の状況が分かる資料

「今後注意します」のようなあいまいな書き方は、報告として認められません。直した中身と日付を具体的に書きます。様式は、労基署で渡されたものか、労働局のサイトに載っているものを使います(任意の様式でよいとしている監督署もあります)。

期日までに直しきれないときは、黙って期日を過ぎるのではなく、事前に担当の監督官に連絡します。それまでの進み具合と今後の予定を伝えれば、報告の時期をあらためて示してもらえます。

指摘を受けないための日頃の備え

ふだん守るべき法令を守り、書類がそろっていれば、臨検はそのまま通ります。見られるのは、36協定や賃金が正しく払われているかといった基本のところです。見落としやすいのは年に1回の届出や報告で、常時50人以上の事業場が出す定期健康診断結果報告も確認されることがあります。臨検が来てから慌てるのではなく、やるべきことを把握して日頃から続けておくことが一番の備えです。

  • 36協定を、期間が始まる前に届け出たか
  • 勤怠を毎日つけてもらい、月の途中で残業時間を確かめたか
  • 割増賃金に、深夜・休日の時間が正しく入っているかを確かめたか
  • 常時10人以上の事業場で、就業規則を届け出たか
  • 定期健康診断を行い、常時50人以上の事業場は結果を報告したか
  • 常時50人以上の事業場で、産業医を選任し、衛生委員会を毎月開いて議事録を残したか
  • 帳簿を3年分、すぐ出せる形で保存したか

調査と是正の手続きは、厚生労働省の労働基準監督官の仕事、山梨労働局の労基署ってどんなところ?、福井労働局の是正報告書の記載例、魚津労働基準監督署の是正・改善報告書を作成する際のポイントで確かめられます。帳簿の保存期間は厚生労働省の未払賃金が請求できる期間などが延長されています、健康診断結果報告は健康診断結果報告の提出の仕方、条文は労働基準法(e-Gov法令検索)で確かめられます。

更新履歴

  • 2026年10月1日: 公開