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ハラスメント・労務トラブル テーマ別ガイド

ハラスメント防止で会社がやることは?相談窓口・調査・処分の流れと、カスハラ対策の義務

ハラスメントの相談を受ける担当者や経営者に向けて、会社として用意しておく仕組みを、方針づくりから相談窓口、調査、処分、再発防止まで順にまとめた記事です。2026年10月1日から義務になったカスタマーハラスメント(カスハラ)の対策も扱います。「どこからがパワハラか」という判断の基準は、別の記事で詳しく整理しています。

この記事で分かること

  • 会社に防止の義務があるハラスメントと、とるべき措置
  • 相談窓口を社内に置くか、外部に任せるかの考え方
  • 相談を受けたときの最初の聞き取りと、メモの残し方
  • 調査から処分・配置の見直し・再発防止までの進め方
  • カスハラ対策で会社が用意すること

ハラスメント対策の全体の流れ

ハラスメント対策は、起きる前の備えと、相談が来てからの対応に分かれます。どちらも法律で会社に求められていることで、流れにすると次のとおりです。

  1. 方針を決めて知らせる常時ハラスメントをしてはならないことと、行った人への処分を就業規則などに書き、社員に知らせます。
  2. 相談窓口を置く常時誰が相談を受けるかを決め、社員に知らせます。
  3. 相談を受けて記録する相談が来たタイミングで相談した人から、何が起きたかを聞き取って記録します。
  4. 事実を確かめる調査行為者とされた人や周りの人からも話を聞き、記録と照らし合わせます。
  5. 処分と配置を決める事実が分かったら就業規則にもとづく処分と、配置の見直し、相談した人への配慮を決めます。
  6. 再発を防ぐ対応の後方針を改めて知らせ、研修などで繰り返し伝えます。

慌てやすいのは、相談が来てからの後半です。誰が聞き取り、誰が処分を決めるのかを、平常時のうちに決めておくと、いざというときに迷わずに動けます。

会社に義務があるハラスメント

会社が防止の措置をとる義務があるハラスメントは、厚生労働省のパンフレットでは6つです。妊娠・出産等に関するものと、育児・介護休業等に関するものをまとめると、次のようになります。会社の規模にかかわらず、すべての会社が対象です。

防止の措置が会社の義務になっているハラスメント
種類どんな言動か根拠の法律と、義務になった時期
パワハラ職場での優越的な関係を背景にした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動労働施策総合推進法。大企業は2020年6月1日、中小企業は2022年4月1日から
セクハラ職場での性的な言動男女雇用機会均等法。以前から
マタハラ等妊娠・出産や、育児休業・介護休業などの制度の利用に関する言動男女雇用機会均等法、育児・介護休業法。以前から
カスハラ顧客や取引先などからの、社会通念上許容される範囲を超えた言動労働施策総合推進法。2026年10月1日から
求職者セクハラ事業主(役員を含む)や社員から、面接やインターンシップなどに来た人への性的な言動男女雇用機会均等法。2026年10月1日から

どのハラスメントでも、会社がとる措置の柱は共通で、次の4つです(方針の明確化と周知、相談体制の整備、起きた後の迅速で適切な対応、プライバシーの保護と不利益な扱いの禁止)。それぞれ、会社の中に何を用意すればよいかに置き換えると、準備の抜けが見つけやすくなります。

防止の措置と、会社で用意するもの
措置会社で用意するものこの記事の節
方針就業規則の禁止の規定と懲戒の規定。研修や社内報での周知方針を決めて知らせる
相談体制相談窓口と担当者。担当者が使う対応の手順相談窓口の置き方
起きた後の対応事実を確かめる手順、相談した人への配慮、行為者への措置、再発防止相談を受けたら〜再発防止
プライバシー等相談の内容を扱う人の範囲。相談や事実確認への協力を理由に不利益に扱わないことの周知相談窓口の置き方

このほか、マタハラ等では業務の体制を整えるなど原因を取り除く措置が、カスハラでは特に悪質なものへの対処の措置が加わります。派遣社員へのハラスメントは、派遣元だけでなく、受け入れている派遣先の会社も措置をとる必要があります。業務を委託しているフリーランスへのハラスメントについても、従業員がいる発注側の会社は、相談に応じる体制を整えるなどの措置をとる必要があります(フリーランス法)。発注側の義務は、業務委託と雇用の違いの記事にまとめています。

パワハラにあたるかどうかの判断のしかたは、次の記事で、指針の3つの要素と場面ごとの例を使って整理しています。

詳しく読むどこからがパワハラ?指導との境界線を、指針の3要素と場面ごとの例で整理

方針を決めて知らせる

最初の措置は、ハラスメントをしてはならないという方針と、行った人には厳しく対処することを決め、管理職を含む全員に知らせることです。典型的なのは、就業規則に禁止の規定と懲戒の規定を置き、研修や社内報で中身を伝える形です。

厚生労働省のモデル就業規則には、パワハラ・セクハラ・妊娠出産等に関するハラスメント・その他のハラスメントを禁止する条文と、それに違反したことを懲戒の理由にする条文があります。自社の就業規則に同じ定めがあるかを、まず確かめます。懲戒(制裁)を定めるときは、その種類と程度を就業規則に書く決まりです(労働基準法89条)。

就業規則に規定を足すときの手順(過半数代表の意見の聴取・届出・周知)は、就業規則の記事で説明しています。

ただ、禁止の一文だけでは、管理職は日々の指導でどこに気をつければよいか分かりません。実務では、「ほかの社員の前で注意しない」「語気を強めない」「一方的に話し続けない」のように、会社としての伝え方の指針もあわせて示しておきます。中身はパワハラの判断基準の記事の「会社で決めておく伝え方のルール」にまとめています。

相談窓口の置き方

相談窓口は、担当者を決める、相談の制度を設ける、外部の機関に対応を委託する、のどの形でもよいとされています(パワハラ指針)。大事なのは、社員が窓口を知っていることと、担当者が相談の内容に合わせて対応できることです。

相談窓口の置き場所ごとの特徴
置き場所良いところ気をつけること
法務部門法律の知識があり、判断の根拠を示しやすい法律の判断が先に立ちやすく、相談した人の話を受け止める場になりにくいことがある
人事部門社内の事情が分かり、そのまま調査や配置の話に進めるので対応が早い聞き取りや調整に、担当者の工数がかかる
社外の窓口最初の聞き取りを、客観的でフラットな立場で行ってもらえる費用がかかる。受けた相談を社内の誰に、どうつなぐかを決めておく

労務の現場から

窓口の置き方は、どれか1つが正解というより、それぞれに一長一短があります。人事部門が受ければ対応は早い一方で、そのぶん工数がかかります。

ハラスメントの相談は、感情のこもった話になったり、聞き取りがとても長い時間に及んだりすることが少なくありません。その負担が担当者に重くのしかかっている会社は、最初の聞き取りを外部の窓口に任せることも検討してみてください。

どの形でも、相談した人や関係者のプライバシーを守ることと、相談したことや事実の確認に協力したことを理由に不利益な扱いをしないことを決めて、社員に知らせます。パワハラ・セクハラ・マタハラ等の相談を1つの窓口でまとめて受けられるようにしておくことも、望ましい取り組みとされています。

相談を受けたら最初にやること

最初の面談で聞いた内容は、その後の調査と処分のもとになります。ここでは結論を出そうとせず、何が起きたかを正確に残すことに集中します。

  1. 5W1Hで聞くいつ・どこで・誰が・誰に・何を・どのように、を意識して聞きます。話が前後しても、最後にこの形に整理します。
  2. 裏づけの有無を聞くチャットやメールの画面、録音、その場にいた人など、話を裏づけるものがあるかを聞きます。ないものは「ない」と書きます。
  3. 見返せる形でまとめる何が起きたか、どんな状況だったかを、客観的に、後から自分で読み返しても分かる形でまとめます。
  4. この後の流れを伝える誰が話を聞くか、プライバシーを守ること、相談したことで不利益に扱わないことを伝えます。

5W1Hと裏づけの有無がそろっていれば、最初の聞き取りとしては基本的に足ります。メモは次のような項目で残しておくと、調査する人に引き継ぎやすくなります。

最初の聞き取りのメモ(例)
項目書くこと書き方の例
いつ日時。繰り返しなら頻度と期間先月から週に1〜2回。直近は先週の打ち合わせ
どこで場所。オンラインかどうかチームの席で。一部はオンライン会議で
誰が誰から誰への言動か。その場にいた人上司から本人へ。同じチームの2人が近くにいた
何を言われたこと・されたことと、そのときの様子。言葉はできるだけそのまま「こんなこともできないのか」と大きな声で言われた
なぜ直前に何があったか提出した資料の数字に誤りがあった
裏づけ記録や証人の有無。ないものは「ない」チャットの画面あり。録音はない

注意指針は、ハラスメントにあたるか微妙な場合でも、広く相談に応じるよう求めています。最初の面談で「それくらいは指導の範囲では」と結論を言わないようにします。

事実を確かめる調査

最初の聞き取りの後は、行為者とされた人からも話を聞きます。主張が食い違うところは、その場にいた人などの第三者からも聞きます。指針は、事実を迅速かつ正確に確かめることを求めていて、社内で確かめるのが難しいときは、労働局の調停など中立な第三者機関に委ねる方法も示しています。

  • 相談した人と、行為者とされた人の両方から話を聞いたか
  • 食い違うところを、第三者の話や記録で確かめたか
  • 話を聞いた人に、内容を口外しないよう伝えたか
  • 聞き取りのときに、相談した人の心身の状態に配慮したか

調査で起きやすい間違いは、先に相談してきた人の話だけで事実を決めてしまうことです。一方の主張を鵜呑みにせず、第三者の立場で、どちらの言い分が合っているかを客観的に判断します。手がかりになるのは、チャットの画面や音声などの記録と、その場にいた人の意見です。集めた事実をパワハラの物差しに当てはめる方法は、パワハラの判断基準の記事で説明しています。

社内で判断に迷うときは、労働局や労働基準監督署の中などにある総合労働相談コーナーに相談できます。ハラスメントの防止措置を担当しているのは、労働局の雇用環境・均等部(室)です。労働基準監督署の調査(臨検)とは窓口が違うので、臨検の流れは労基署の調査の記事を見てください。

処分と配置を決める

事実が確認できたら、行為者への措置と、被害を受けた人への配慮を決めます。

労務の現場から

調査の後の処分は、就業規則の懲戒の定めに紐づきます。懲戒にはいくつかの段階が定められているはずなので、起きたことの程度がどの段階にあたるかを考えます。そのときは、同じような事案でどの程度の処分が妥当とされているかや、社内の過去の処分と比べると、判断の材料になります。

処分と並んで考えるのが、配置転換などの職場の見直しです。処分の着地が見えてきた段階か、できればその途中で、「今後の配置をどうするか」を話しておくとスムーズです。同時に進めるのは大変ですが、1つずつ片づけるより、並行して進めることをおすすめします。

懲戒の主な種類(厚生労働省のモデル就業規則)
種類中身気をつけること
けん責始末書を出させて、将来を戒める―
減給始末書を出させて、賃金を減らす1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1回の賃金支払期の賃金総額の10分の1まで(労働基準法91条)
出勤停止一定の日数、出勤を止め、その間の賃金を払わない何日までかを就業規則に書いておく
懲戒解雇予告の期間を置かずに解雇する解雇予告手当を払わずに即時に解雇するには、労働基準監督署長の認定が必要

懲戒の種類はこの4つに限られず、会社によっては降格などを定めています。どの処分も就業規則に定めがあることが前提で、行為の性質や態様に比べて重すぎる処分は、権利の濫用として無効になります(労働契約法15条)。懲戒解雇を含む解雇の手続きは、退職と解雇の記事で扱っています。

被害を受けた人への配慮として、指針は、関係の改善の手助け、行為者と引き離すための配置転換、行為者の謝罪、労働条件の不利益の回復、心身の不調への相談の対応などを挙げています。配置転換を考えるときは、相談した人が不利益を受ける形にならないよう、本人の意向を聞いて決めます。

相談した人が心身の不調で休むことになったときの手続きは、休職と復職の記事にまとめています。

再発防止までが対応

処分が決まっても、対応は終わりではありません。指針は、方針を改めて知らせる、研修をやり直すといった再発防止の措置を求めています。事実が確認できなかった場合も同じです。

  • 禁止の方針と、行った人に厳しく対処することを、社内報や研修で改めて知らせたか
  • 相談と調査の記録を、見られる人を限って保管したか
  • 窓口や調査の手順で、うまく回らなかったところを見直したか

カスハラ対策の義務と準備

2026年10月1日から、顧客や取引先などからのカスハラについても、会社が防止の措置をとることが義務になりました。カスハラは、顧客や取引先、施設の利用者などの言動のうち、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、働く人の就業環境を害するものです。電話やSNSでの言動も含みます。一方で、顧客からの苦情のすべてがカスハラになるわけではありません。

カスハラについて会社がとる措置
措置中身
方針カスハラには毅然と対応し、社員を守るという方針を決めて知らせる
対処上司に指示を仰ぐ、できるだけ1人で対応させない、犯罪にあたりうる言動は警察に通報する、などの対処を決めて知らせる
窓口窓口を決めて知らせ、担当者が対応できるようにする
起きた後事実を確かめ、被害を受けた社員に配慮し、再発防止の措置をとる
悪質な場合特に悪質なものへの対処の方針(警告文を出す、出入りを禁止するなど)を決めて知らせ、実行できる体制を整える
あわせて相談した人や関係者のプライバシーを守り、相談したことや事実の確認に協力したことで不利益に扱わないことを知らせる

対策を決めるときは、消費者の権利や、障害を理由とする差別の禁止・合理的配慮(障害者差別解消法)に気をつける必要があります。

労務の現場から

カスハラ対策にどこまで力を入れるかは、仕事の中身で変わります。コールセンターや接客が中心の会社は、より厳密に取り組む必要があります。一方で、一般的な会社で、普通の倫理観の中で仕事をしていれば、大きな問題になることはそれほど多くありません。その場合は、一般的な方針を定めて知らせ、改めて気をつけようと意識づけることが取り組みの中心になります。

ただし、義務の中身は業種を問わず同じです。接客の少ない会社でも、方針とその場の対処を知らせ、社内のハラスメントの相談窓口と調査の流れをカスハラにも使えるようにしておきます。

同じ日から、面接やインターンシップなどに来た求職者へのセクハラの防止も義務になりました。面談の時間や場所、やり取りに使う手段など、採用活動のルールを決めて、社員と求職者の両方に知らせることが求められています。

制度の詳しい内容は、厚生労働省の職場におけるハラスメントの防止のために、事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット(PDF)、パワーハラスメント防止のための指針(PDF)で確かめられます。カスハラと求職者へのセクハラは令和7年の法改正のページとリーフレット(PDF)、就業規則の条文例はモデル就業規則、相談先は総合労働相談コーナーのご案内にまとまっています。個別の事案で判断に迷うときは、行政の窓口や社会保険労務士、弁護士に確認してください。

更新履歴

  • 2026年10月1日: 公開