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残業と有給のアラートは自動にできる?確定した勤怠で36協定の回数・80時間超・年5日を知らせる仕組み(サンプル付き)

勤怠の締めが終わったあと、36協定の特別条項の回数や、月80時間を超えた人、有給の年5日を、毎月手で確かめている労務の担当者に向けた記事です。確定した勤怠のデータから、本人・上司・その上の人へ段階的に知らせる段取りと、それをGoogleのスプレッドシートで自動にする方法を、動くサンプルと一緒に紹介します。

この記事で分かること

  • 締めのあとに確定データで見る3つと、それぞれの法律の決まり
  • 特別条項の回数を、3回目から段階的に知らせる段取り
  • 月80時間を超えた人への通知と、産業医への情報の渡し方
  • 有給の年5日を、残りの月数から逆算して追いかける方法
  • 仕組みにすると減る手間(50人の会社の例)と、Google版のサンプル

締めのあとに確定データで見る3つ

月の途中の残業の予測や日々の打刻漏れと違い、ここで扱うのは、締めが終わって確定した1か月の勤怠です。確定した数字だからこそ、回数を数えたり、法律で決まった通知を出したりできます。見るのは次の3つです。

確定データで見るものと、法律の決まり
見るもの法律の決まり知らせる相手
36協定の特別条項の回数時間外労働が月45時間(1年単位の変形労働時間制は42時間)を超えられるのは、36協定の期間(1年)で6回まで3回目から本人、4回目から上司、5回目からその上の人
月80時間超時間外・休日労働が月80時間を超えた人に、その時間を通知する。産業医にも氏名と時間を渡す本人(産業医への情報は担当者がまとめる)
有給の年5日年10日以上付与される人に、付与から1年以内に5日取らせる付与から6か月で本人、遅れていれば上司も

残業時間の上限そのもの(単月100時間未満、2〜6か月の平均80時間以内など)と、36協定の結び方は、次の記事で説明しています。

詳しく読む残業と36協定の実務は?協定の結び方・届け出から、上限を守る月の途中の確認まで

サンプル: 勤怠の確定データでアラート(Googleのスプレッドシート)

この記事で紹介する仕組みそのものです。コピーして「① 準備」を押すと、必要なシートができます。最初は、メールを送らずに記録だけ残すテストモードで動きます。本番での動作は保証できませんので、自社で試してから使ってください。

Googleのスプレッドシートをコピーする(無料)

特別条項の回数の知らせ方

特別条項を使って月45時間を超えた回数は、36協定の期間の中で数えます。6回を使い切ると、その期間の残りの月は45時間を超えられません。繁忙期が後に来る部署ほど、早めに知らせておく必要があります。

月45時間を超えた回数ごとの知らせ方
回数宛先書くこと
3回目本人あと何回か。計画的な使用のお願い
4回目本人と上司あと何回か。業務の調整のお願い
5回目本人と上司、CCにその上の人件名を【至急】にする
6回目本人と上司、CCにその上の人と人事責任者この期間は、もう45時間を超えられないこと

注意1年単位の変形労働時間制(対象期間が3か月を超えるもの)をとる場合は、月の原則が42時間になり、42時間を超えた回数を数えます。サンプルでは「設定」の「月の原則の時間」を42にします。また、自動車運転の業務と医師は、年6回や単月100時間未満・2〜6か月の平均80時間以内の決まりがかからず、年の上限も違います。建設の事業のうち災害の復旧・復興の事業も、単月100時間未満と平均80時間以内がかかりません。これらの人には、このサンプルの判定をそのまま使わず、厚生労働省の資料で確かめてください(建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制)。

メールには、これまでに45時間を超えた月と時間を(参考)として並べます。どの月で使ったかが分かると、本人も上司も残りの月の見通しを立てやすくなります。どう業務を調整するかは、部署で決めてもらえば十分です。

労務の現場から

36協定の期間は、会社の決算の期とずれていることがあります。「今期」と書くと、どちらの1年か分からなくなるので、「36協定の期間(2026年4月〜2027年3月)」のように年月で書きます。確定データで送るころには、もう次の月に入っているので、「来月」ではなく「11月」のように月の名前で書きます。

すでに上限を超えた可能性があるもの(単月100時間以上、2〜6か月の平均80時間超、7回目など)は、本人や上司には自動で送らず、担当者にだけ知らせます。違反の可能性があるときに会社としてどう動くかは、人が判断するところだからです。

注意単月100時間未満と2〜6か月の平均80時間以内は、時間外労働と休日労働を合わせて見ます。2〜6か月の平均は36協定の期間をまたいでも数えるので、新しい期間の最初の月でも、前の期間の月と合わせて確かめます。

月80時間を超えた人への通知

時間外・休日労働の時間(休憩を除いて、1週40時間を超えて働いた時間)が月80時間を超えた人には、その時間を本人に速やかに知らせることが義務になっています(労働安全衛生規則52条の2第3項)。本人が申し出れば、医師による面接指導を行います。通知は、書面やメールで行うのが一般的です。

同じ人の氏名と超えた時間は、産業医にも速やかに(おおむね2週間以内に)渡します(労働安全衛生規則14条の2)。該当者がいない月も、その旨を伝えます。管理監督者や、事業場外みなし労働時間制の人も対象です。36協定の回数の対象にならない管理監督者も、80時間超の通知からは外せません。

サンプルでは、本人には時間と面接指導の申し出の案内だけを送り、産業医に渡す一覧は担当者あてのまとめに載せます。ストレスチェックの面接指導と同じく、申し出は窓口でまとめてから医師につなぐ形です。

注意80時間超の判定に使う時間は、法定の時間外労働と休日労働の合計とは少しずれることがあります。厚生労働省は「1か月の総労働時間 −(その月の暦日数 ÷ 7)× 40」で計算するとしています。勤怠システムにこの時間を出す項目があれば、それを使います(厚生労働省「長時間労働者への医師による面接指導制度について」)。

有給の年5日の追いかけ方

年10日以上の有給が付与される人には、付与から1年以内に5日取らせる必要があります(労働基準法39条7項)。期限の直前に慌てないよう、残りの月数から逆算して、知らせ方を段階的に強めます。

  1. 付与から6か月で、本人に知らせる付与から6か月まだ5日に届いていない人に、「〇月末までにあと〇日取る必要があります。計画的な取得を進めてください」と送ります。
  2. 月1回のペースで届かなくなったら、上司にも送る残りの月数 < 残りの日数たとえば残り4か月で、まだ5日残っている人です。取得日を決めて申請してもらいます。
  3. 取得日を返信してもらう残り3か月から全体へのお知らせではなく、一人ずつ取得日の返信を求め、確実に追いかけます。
  4. それでも届かない人は、時季指定を考える残り1か月【至急】で送り、その上の人もCCに入れます。決まらなければ、本人の意見を聞いたうえで会社が取得日を指定します。

メールには、付与日や取得日数は書きません。繰り越した分と通算しているなど、数え方が人によって違うことがあり、かえって分かりにくくなるからです。期限と、あと何日取る必要があるかだけを書きます。有給の付与と年5日のルールは、次の記事にまとめています。

詳しく読む有給休暇は何日付与する?パートの比例付与から、付与・取得の管理を仕組みにする方法まで

仕組みにすると、どれくらい楽になるか

50人の会社(上司は6人)で、毎月の確定データの確かめと連絡にかかる労務の担当者の手間を比べます。手で行う場合は、確定データをExcelに貼り、回数・平均・有給の残りを関数で確かめて、該当者に個別にメールを送る形を置いています。自社の数字に置き換えて見てください。

50人の会社の確定データの確かめと連絡にかかる手間(1か月の目安)
やること手で行う仕組み
回数・平均・80時間超・有給の残りを確かめる90分10分
該当者へのメールを書いて送る40分15分
産業医に渡す一覧を作る15分5分
合計約2時間25分約30分

手で行う場合のメールは、1か月にのべ8通(1通5分)で見ています。仕組みにすると、担当者は確定データを貼ってボタンを押し、できたメールに目を通して送るだけになります。

計算例: 時間の単価を1時間3,000円とした場合

手で行う: 約2時間25分 × 12か月 = 約29時間 → 約87,000円
仕組み: 約30分 × 12か月 = 約6時間 → 約18,000円

1年で約23時間・約7万円の差です。仕組みを作る手間は、サンプルを使えば2〜3時間です。

手間が減るだけでなく、確認漏れがなくなります。2〜6か月の平均は、5通りの平均を毎月全員分確かめる必要があり、手で見ていると漏れが出やすいところです。

労務の現場から

この業務で時間以上に大切なのは、法令を守り、従業員の健康管理を正しく行えることです。残業や有給の状況は刻々と変わり、気づくのが遅れるほど打てる手がなくなります。数字が確定したらすぐに知らせ、先手先手で動けるようにしておきます。

確定データの取り出し方

勤怠システムの月の集計(1人1行)を、締めのあとにCSVで出します。使う列は次のとおりです。列の名前は、サンプルの「設定」シートで自社のシステムに合わせて変えられます。

確定データで使う列
列使うところ
社員番号名簿(メール・上司・その上の人・管理監督者か・有給の基準日)とつなぐ
時間外労働(法定)特別条項の回数、協定の月と年の上限
休日労働(法定)時間外労働と合わせて、単月100時間未満と2〜6か月の平均80時間以内を確かめる
月80時間の判定の時間(あれば)80時間超の通知。なければ時間外労働と休日労働の合計で判定
有給の取得日数年5日の残り(今の付与の期間に取った日数)

回数と平均を数えるには、過去の月の実績が要ります。サンプルの「実績の履歴」に、36協定の期間の分と、その前の5か月分を入れておきます。毎月ボタンを押すたびに、その月の分が自動で足されます。

Google版の作り方

サンプルを使う場合の手順です。会社のGoogle Workspaceのアカウントで行います。

  1. スプレッドシートをコピーする上のボタンからコピーします。コピーしてから1分ほどたって画面を読み込み直すと、上のメニューに「勤怠のアラート」が出ます。
  2. 「① 準備」を押して、権限を承認する初めて動かすときに、権限の承認を求められます。「このアプリはGoogleで確認されていません」と出たら、「詳細」から先に進みます。設定・名簿・月の実績・実績の履歴・送信の記録のシートができます。
  3. 「設定」シートを36協定に合わせる協定の起算月、特別条項で決めた月と年の上限、人事責任者のメールを入れます。
  4. 名簿と実績の履歴を入れる名簿に全員を入れ、管理監督者には「はい」を入れます。実績の履歴に過去の月の時間外労働と休日労働を入れます。
  5. テスト用のデータで試す「テスト用のデータを入れる」を押してから「② 今月のアラートを作る」を押すと、架空の9人分のメールが「送信の記録」に並びます。「テストモード」を「自分あて」にすると、すべて自分に届きます。
  6. 毎月の締めのあとに動かす確定データを「月の実績」に貼って「② 今月のアラートを作る」を押します。メールは「確認待ち」で残るので、目を通してから「③ 確認待ちのメールを送る」を押します。

担当者あてのまとめには、上限を超えた可能性がある人、80時間を超えた人(産業医に渡す一覧)、時季指定を考える人が並びます。ここだけは確認待ちにせず、すぐ届きます。

注意Googleの無料のアカウントでは、スクリプトから1日に送れるメールの宛先が100件までです(Google Workspaceは1,500件)。会社のGoogle Workspaceで動かしてください(Apps Scriptの割り当て)。

MicrosoftやTeams・Slackでは

Microsoftの環境では、確定データのCSVをOneDriveかSharePointに置き、Excelで回数と平均を計算して、Power Automateで送る形にできます。

Microsoftの環境での作り方の対応
やること使う機能
回数・平均・有給の残りを計算するExcelに名簿と月ごとの実績を置き、COUNTIFS・AVERAGEなどで計算する
毎月動かすPower Automateの「繰り返し」(締めのあとの日に設定)
メールで送るOutlookで、本人と上司の2人を宛先にして送る
Teamsで送る本人と上司にメンションを付けて投稿する

回数や80時間超は個人の情報なので、チャンネル全体には流さず、本人と上司だけに届く形にします。

業務の自動化を何から始めるか、作った仕組みを属人化させない工夫は、次の記事にまとめています。

詳しく読む労務の仕事は何から自動にする?業務の選び方から、作った仕組みを属人化させない工夫まで

サンプルを自社の勤怠システムに合わせて組み込みたい、Microsoftの環境で作りたいといった相談は、お問い合わせから「仕組みづくりの相談」を選んで送ってください。ほかの会社にも役立ちそうな内容は、記事で取り上げます。

確定データでのアラートは、毎月の締めが終わっていることが前提です。締めの催促を自動にする方法は、次の記事にまとめています。

詳しく読む勤怠の締めの催促は自動にできる?期限の決め方と、本人・上司へ段階的に送る仕組み(サンプル付き)