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労務カレンダー
業務の自動化 テーマ別ガイド

労務の仕事は何から自動にする?業務の選び方から、作った仕組みを属人化させない工夫まで

労務の仕事を、Googleのスプレッドシートやメール・チャットで自動にしたいと考えている担当者に向けた記事です。何から始めるかの選び方、道具の選び方、作った仕組みを自分しか直せない状態にしない工夫、効果の見せ方、実際に作ってつまずいたところをまとめました。動くサンプル付きの各論は、最後に一覧にしています。

この記事で分かること

  • 自動にする業務の見つけ方と、月10時間のライン
  • 最初の1つに向いている仕事
  • GoogleとMicrosoft、メール・Teams・Slackの選び方
  • 作った人しか直せない仕組みにしない工夫
  • 効果の見せ方と、作ってみてつまずいたところ

何から自動にするか

現場に「自動にできる仕事はありますか」と聞いても、たいてい答えは出てきません。何ができるのかを知らなければ、思いつきようがないからです。聞き方を変えて、時間で拾います。

  1. 時間のラインを決める「1か月に10時間以上かかっている業務」のように、線を先に決めます。1か月に1日以上かかっている業務なら、減らせば大きく楽になり、浮いた時間をほかの仕事に回せます。
  2. 記録から拾うメールやチャットの履歴を見返し、やり取りの件数が多い業務を拾います。催促や確認のくり返しは、本人が気づかないうちに時間を取られている仕事です。カレンダーや日報の記録からも、作業の時間を割り出します。
  3. 一覧にして順番をつける業務の名前と中身、1か月の時間を一覧にして、時間の長いものから並べます。生成AIに聞き取り役をさせて、担当者と話しながら一覧を作る方法もあります。

この一覧は、あとで効果を見せるときの比べるもとにもなります。最初に作っておくと、「どの業務が、何時間から何時間になったか」をそのまま示せます。

50人ほどの会社では、1つの業務だけで月10時間に届くものは多くありません。同じデータを使う業務はまとめて見ます。たとえば勤怠の締めの催促(月約3時間35分)と、締めのあとのアラート(月約2時間25分)は、どちらも勤怠のデータを使う仕事です。1年に1回のストレスチェック(年約61時間)を月にならすと約5時間で、3つを合わせると月10時間を超えます。

小さく、みんなの目に触れるものから

最初から大きな仕組みは作りません。最初の1つは、従業員みんなが触れて、変わったことが目で見て分かるものにします。勤怠の締めの催促や、ストレスチェックの案内とリマインドのように、全員に届く仕事です。

毎月届くメールが変わると、「今はこんなことが自動でできるのか」と気づく人が出てきます。ITに詳しくない人にも見て分かるので、次の仕組みを作るときに話が通りやすくなります。担当者だけが楽になる仕組みは、ありがたみが周りに伝わりにくいので、2つ目以降に回します。

道具の選び方

使える道具は、会社がGoogleとMicrosoftのどちらを使っているかと、連絡にメール・Teams・Slackのどれを使っているかで決まります。新しい道具を入れるより、毎日使っているものの組み合わせで作るほうが、社内の承認も運用も楽です。

会社の環境と、自動にするときの道具
環境データを置く・計算する決まった時刻に動かす・送る
Google Workspaceスプレッドシート・フォームApps Script(時間で動く仕組み、Gmailでの送信)
Microsoft 365Excel(OneDriveかSharePointに置く)・FormsPower Automate(繰り返し、Outlookでの送信)
Teams・Slackで知らせる上のどちらかTeamsはワークフロー、Slackはアプリ(ボット)から本人と上司に送る

作る前に、社内の情報システムやセキュリティの担当者に確かめます。自社で作ったスクリプトには「このアプリはGoogleで確認されていません」と出たり、管理者の設定で外部への送信が止められていたりすることがあります。個人の情報を扱う仕組みは、どこにデータを置くかも先に決めておきます。

注意Googleの無料のアカウントでは、スクリプトから1日に送れるメールの宛先が100件まで、Google Workspaceは1,500件までです(Apps Scriptの割り当て)。会社の仕組みは、個人のアカウントではなく会社のアカウントで作ります。

作った人しか直せない仕組みにしない

自分で作った仕組みは、作った人しか直せない状態になりがちです。担当が変わったとたんに止まり、誰も直せずに手作業へ戻る、ということが起こります。かといって、スクリプトやマクロの中身を全員にわかってもらうのは無理です。そこは割り切って、中身を見なくても動かし方を変えられる作りにします。

  • 変えそうな値(期限、宛先、回数、文面の署名など)はコードに書かず、「設定」シートに出す
  • 「このセルを変えると、動きがこう変わる」を設定シートのメモに書く
  • 使い方のシートを付け、最初に押すボタンと毎月の手順を書く
  • メールを送らずに記録だけ残すテストモードと、自分あてに送るモードを付ける
  • 強い言い方のメールは、すぐに送らず担当者が目を通してから送る

この記事の各論のサンプルは、どれもこの形で作っています。Microsoftで作る場合も、設定用のExcelを1つ用意しておけば同じ考え方で運用できます。

効果の見せ方

小さな会社や、経営者に近い立場で作る場合は、「楽になった」という周りの実感で十分です。社内に報告が要る会社では、最初に作った一覧をもとに、減った時間に担当者の時間の単価を掛けて金額にします。

各論のサンプルで減る時間(50人の会社の例、1年分)
業務手で行う仕組み
ストレスチェック(担当者・拠点の管理者・回答する人の合計)約61時間約9時間
勤怠の締めの催促約43時間約10時間
確定データでのアラート(36協定・80時間超・有給の年5日)約29時間約6時間
合計約133時間約25時間

計算例: 時間の単価を1時間3,000円とした場合

(約133時間 − 約25時間)× 3,000円 = 約324,000円

3つを合わせて、1年で約108時間・約32万円の差です。サンプルを使えば、作る手間は1つにつき2〜3時間です。

時間のほかにも、確認漏れや送り忘れがなくなる、給与計算に使える日数が増える、催促に追われる疲れがなくなる、といった効果があります。数字にしにくいものも、報告のときに一言添えておきます。

作ってみてつまずいたところ

思ったとおりに動かない、作り込みすぎて手に負えなくなる、ということは、仕組みを作っていれば必ず起こります。この記事の各論のサンプルを作るときにも、実際に次のようなことがありました。

サンプルを作るときにつまずいたことと、直し方
起きたこと直し方
ストレスチェックの質問を独自の並びにしたら、どこにかかる選択肢なのか分かりにくくなった国の質問票の言い回しと並びに戻した。決まった様式は崩さない
メールの本文が、画面の幅に関係なく途中で改行された文字だけのメールをやめ、HTMLのメールで送るようにした
面接指導の申し出を、そのつど医師に送る作りにしていた実務の流れに合わせ、窓口でまとめてから医師に打診する形にした
丁寧に書こうとして、催促のメールの趣旨が分かりにくくなった。締めのあとに送るのに「来月」と書いていた事実・回数・お願いだけに削り、月は「11月」のように名前で書いた
テストで「今日の日付」を固定し「自分あて」にしたまま、毎朝テストのメールが届き続けた毎朝動く仕組み(トリガー)を止め、テストの設定を元に戻した

労務の現場から

テストはしっかり行います。ただ、テストから本番に移るときは、テストのデータと設定をきれいにしてから臨みます。固定した日付、自分あての宛先、架空の名簿、毎朝動く仕組みが残ったままだと、本番で思わぬメールが届きます。本番に切り替える日に、テストで変えたところを一つずつ元に戻します。

文面は、実際にその仕事をしてきた人に読んでもらうのが一番です。仕組みを作る人が書いた文面は、正しくても現場の言い方とずれていることがあります。

サンプル付きの各論

どれも、Googleのスプレッドシートをコピーすれば動くサンプルが付いています。Microsoftの環境で作る場合の対応も、それぞれの記事に書いています。

詳しく読むストレスチェックは自社で回せる?Googleフォームで案内・判定・面接指導の申し出まで自動にする方法(サンプル付き) 詳しく読む勤怠の締めの催促は自動にできる?期限の決め方と、本人・上司へ段階的に送る仕組み(サンプル付き) 詳しく読む残業と有給のアラートは自動にできる?確定した勤怠で36協定の回数・80時間超・年5日を知らせる仕組み(サンプル付き)

勤怠や給与のシステムをこれから入れる段階なら、先にシステムを選ぶほうが早いこともあります。システムの入れ方は、次の記事にまとめています。

詳しく読む人事労務システムは何から入れる?勤怠・給与・電子契約の導入順と選び方、準備期間の見積もり

自社の業務に合わせて仕組みを作りたい、Microsoftの環境で作りたいといった相談は、お問い合わせから「仕組みづくりの相談」を選んで送ってください。ほかの会社にも役立ちそうな内容は、記事で取り上げます。