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業務の自動化

ストレスチェックは自社で回せる?Googleフォームで案内・判定・面接指導の申し出まで自動にする方法(サンプル付き)

ストレスチェックを紙や外部ツールで行っていて、「自社で回せないか」と考えている労務の担当者に向けた記事です。Googleフォームとスプレッドシートを使い、案内の配信・リマインド・高ストレスの一次判定・結果の通知・面接指導の申し出・集団分析までを自動にする仕組みを、動くサンプルと一緒に紹介します。Microsoftの環境で作る場合の考え方と、外部に頼むときの線引きも書きました。

この記事で分かること

  • 紙で行う場合と仕組みにした場合の、手間と費用の差
  • 案内から集団分析までの流れと、人が判断するところ
  • Google・Microsoftと、Teams・Slack・メールの組み合わせ方
  • Google版のサンプルの使い方(コピーして使えます)
  • 判定・集団分析のExcelのテンプレート
  • 外部に頼むときに、頼めることと頼めないこと

紙と仕組みで手間はどう違うか

ストレスチェックの実施の流れや、結果を誰が見てよいかといった基本は、次の記事にまとめています。この記事は、その流れを自社の仕組みで回す方法の話です。

詳しく読むストレスチェックはどう進める?50人未満も2028年に義務化、Webでの実施・国のプログラムの使い方と結果の扱い

まず、仕組みにすると手間がどれだけ減るかを見ておきます。3つの拠点に合わせて50人がいる会社が、57項目の質問票で実施する例です。労務の担当者だけでなく、拠点の管理者の配布・回収と、回答する人の時間も入れています。

3拠点・50人で実施する場合の手間(1年分の目安)
誰の手間紙仕組み(2年目以降)
労務の担当者35時間3時間
拠点の管理者9時間1.5時間
回答する人約17時間約4時間
合計約61時間約9時間

紙の場合、労務の担当者は、準備・配布・督促・回収した用紙の確認と入力・判定と結果の封入・面接指導の調整・集団分析・回答と結果の保管に時間を取られます。拠点の管理者は、配布と説明・回収と送付・督促・結果の配布で、1拠点あたり3時間ほどかかります。仕組みにすると、拠点の管理者の仕事は声かけだけになります。回答する人は、紙は1人20分、Webは1人5分で見ています。

この例は、各拠点が50人未満なので、労働基準監督署への報告書は出しません(人数は会社全体ではなく事業場ごとに数えます)。50人以上の事業場があれば、その事業場の分の報告書を作る手間が加わります。

計算例: 時間の単価を、どの立場も1時間3,000円とした場合

紙: 61時間 × 3,000円 = 183,000円(ほかに印刷・封筒・郵送で約1万円)
仕組み: 9時間 × 3,000円 = 27,000円

1年で約52時間・約16万円の差です。仕組みを作る手間は、サンプルを使えば2〜3時間なので、1年目から元が取れます。実施者(医師・保健師など)の費用は、どちらでも同じなので除いています。

回答する人の時間は、Webにすると大きく減ります。試しに57項目を答えてみると、2分ほどで終わりました。案内のメールには、初めての人が読みながら答えることを考えて「5分ほど」と書いています。

社内で仕組み化を提案するときは、この表のように「誰が何時間かけているか」を先に出し、減る時間に単価を掛けて金額にすると、話が通りやすくなります。自社の数字に置き換えて使ってください。

サンプル: ストレスチェック自動化(Googleのスプレッドシート)

この記事で紹介する仕組みそのものです。コピーして「① 準備」を押すと、フォーム2つと必要なシートが自動でできます。最初は、メールがすべて自分あてに届くテストモードで動きます。本番での動作は保証しないので、自社で試してから使ってください。

Googleのスプレッドシートをコピーする(無料)

テンプレート: ストレスチェック判定・集団分析シート(Excel)

回答(1〜4)を入れると、高ストレスの一次判定と、部署ごとの集団分析(仕事のストレス判定図の値)が出ます。Microsoftの環境で作る場合や、回答を別の方法で集めた場合に使えます。

Excelをダウンロード(無料・登録不要)

仕組みの全体の流れ

流れは次のとおりです。自動にするのは、案内・リマインド・点数の計算・メールの送信といった事務の部分です。高ストレスかどうかを決めるのは、仕組みではなく実施者です。

  1. 名簿を入れる実施事務従事者氏名・メールアドレス・部署を入れると、一人ずつ受付番号と専用の回答リンクができます。フォームではメールアドレスを集めず、受付番号で名簿とつなぎます。
  2. 案内を送る自動一人ずつ専用のリンクをメールで送ります。TeamsやSlackのチャンネルには、「始まりました」という全体向けのお知らせだけを流します。
  3. リマインドする自動・毎朝回答期限まで、まだ答えていない人にだけメールを送ります。
  4. 点数と一次判定を出す自動回答が届くと、合計点と「高ストレス候補」の一次判定がシートに入ります。
  5. 実施者が確認する実施者実施者に確認の依頼を送り、実施者が一人ずつ「高ストレス者」か「該当しない」を選びます。
  6. 結果を本人に送る自動実施者の判定が入った人にだけ、結果をメールで送ります。高ストレス者には、面接指導の申し出のリンクを付けます。
  7. 申し出を受けて、医師に連絡する実施事務従事者申し出はシートに記録され、事務局に知らせが届きます。まだ医師に連絡していない申し出を、まとめて医師に送ります。
  8. 集団分析を作る自動部署ごとに、仕事のストレス判定図の値を出します。10人未満の部署は表示しません。

面接指導の申し出のフォームでは、「面接指導を申し出る」ことと「結果を会社に提供することに同意する」ことを、1つの回答として受け取ります。面接指導を申し出た人は、結果の提供に同意したものとして扱えるためです。

労務の現場から

面接指導の申し出は、医師に1件ずつ直接届ける形より、事務局でいったん集めてから医師に日程を打診する形のほうが一般的です。医師のほうも、申し出が来るたびに連絡を受けるより、まとめて受け取るほうが日程を組みやすくなります。サンプルも事務局でまとめる形を基本にし、申し出のたびに医師へ直接送りたい会社のために、設定で切り替えられるようにしています。

集団分析の数字をAIに読ませて、職場への提案の文案を作ることもできます。その場合も、AIに渡すのは10人以上で集計した数字だけにし、一人ひとりの回答は渡しません。社内にAIの利用のルールがあれば、先に確かめます。

環境ごとの組み合わせ

使える道具は、会社がGoogleとMicrosoftのどちらを使っているかで決まります。通知の先はTeams・Slack・メールの3つです。この2×3の組み合わせで考えれば、たいていの会社の環境に当てはまります。

環境ごとの道具と、向いている通知
環境使う道具向いている通知
GoogleGoogleフォーム・スプレッドシート・Apps Scriptメール・Slack(Teamsは全体のお知らせだけ)
MicrosoftMicrosoft Forms・Excel・Power Automateメール・Teams(Slackは全体のお知らせだけ)

Microsoftの環境では、Power AutomateからTeamsの本人あてのメッセージも送れます。どの組み合わせでも、守る決まりは同じです。全員向けの依頼と全体のリマインドはチャンネルに流してかまいませんが、一人ひとりの回答リンク・督促・結果は、メールか本人だけに届くメッセージで送ります。チャンネルに個人の名前や結果を流すと、ほかの人に見える状態になってしまいます。

Google版の作り方

サンプルを使う場合の手順です。会社のGoogle Workspaceのアカウントで行います。

  1. スプレッドシートをコピーする上のボタンからコピーします。コピーの画面の「Apps Script ファイルを表示」で、中身のコードを先に確かめられます。コピーしてから1分ほどたって画面を読み込み直すと、上のメニューに「ストレスチェック」が出ます。
  2. 「① 準備」を押して、権限を承認する初めて動かすときに、Googleアカウントの権限の承認を求められます。自社で書いたスクリプトには「このアプリはGoogleで確認されていません」と出るので、「詳細」から先に進みます。会社の設定で止められる場合は、Google Workspaceの管理者に相談します。承認すると、フォーム2つ(回答用と面接指導の申し出用)と、設定・名簿・回答・面接指導・集団分析・ログのシートができます。
  3. 「設定」シートを決める回答期限、実施事務担当・実施者・医師のメールアドレス、お知らせの送り先(メールのみ・Slack・Teams)を入れます。SlackはIncoming Webhook、TeamsはWorkflowsの「Webhook 要求を受信したらチャネルに投稿する」のURLを入れます。
  4. 自分あてにテストする最初は「テストモード」が「はい」になっていて、メールはすべて実施事務担当のアドレスに届きます。名簿に自分を1人入れて、案内から結果、申し出までを一度通します。「テスト用のデータを入れる」で、架空の13人分の回答と集団分析も試せます。
  5. 本番に切り替えるテストのデータを消し、名簿に全員を入れ、「テストモード」を「いいえ」にしてから「② 案内を送る」を押します。

注意Googleの無料のアカウントでは、スクリプトから1日に送れるメールの宛先が100件までに限られます(Google Workspaceは1,500件)。50人を超える会社では、必ず会社のGoogle Workspaceで動かしてください(Apps Scriptの割り当て)。

労務の現場から

自分で作った仕組みは、作った人しか直せない状態になりがちです。実務では、変えることがありそうな値(期限、宛先、判定の基準、通知の先)をコードに書かず、設定用のシートに出しておきます。「このセルを変えれば動きが変わる」と分かっていれば、コードを読めない人でも毎年の運用を引き継げます。サンプルの「設定」シートも、その考え方で作っています。

サンプルを作るときに実際に試して直したところも、自分で作る場合の参考になります。Cの質問(周りの人の支え)を「気軽に話ができる:上司」のような行に並べると、「非常に・かなり・多少・全くない」がどこにかかるのか分かりにくくなりました。国の質問票と同じく、「どのくらい気軽に話ができますか」「どのくらい頼りになりますか」「どのくらいきいてくれますか」の3つの問いに分け、それぞれ上司・同僚・家族等の3行で答える形にしています。質問票の文言や並びは、自己流に崩さないほうが答えやすくなります。

Microsoftの環境で作るなら

Microsoftの環境では、Microsoft Formsで回答を集め、Power Automateで流れを組みます。点数の計算と集団分析は、上のExcelのテンプレートを使えます。

Microsoftの環境での作り方の対応
やること使う機能
一人ずつの回答リンクMicrosoft Formsの事前入力の機能(答えをあらかじめ入れたリンクを作る機能)で、受付番号を入れたリンクを作る
回答の受け取りPower Automateの「新しい応答が送信されるとき」と「応答の詳細を取得する」で、Excelの表に1行ずつ足す
点数・一次判定・集団分析集めた回答を、Excelのテンプレートの「回答」シートに貼り付ける
案内・リマインド・結果Power Automateの「繰り返し」で毎朝動かし、Outlookでメールを送るか、Teamsで本人あてにメッセージを送る

回答のExcelは、実施者と実施事務従事者だけが開けるOneDriveかSharePointの場所に置きます。チームの共有のフォルダに置くと、ほかのメンバーも開ける状態になるので注意します。

回答と結果を守るために

自社で回す場合に、仕組みの側で確かめておきたいところです。

  • 回答のシートを開けるのは、実施者と実施事務従事者だけになっているか(人事権を持つ人は、実施事務従事者になれません)
  • フォームでメールアドレスを集めず、受付番号で名簿とつないでいるか
  • チャンネルには全体向けのお知らせだけを流し、個人のリンクや結果を流していないか
  • 結果は、実施者の判定が入った人にだけ送るようになっているか
  • 集団分析で、10人未満の集団を表示しない設定になっているか
  • 本番の前に、テストのデータと、テストで届いたフォームの回答を消したか
  • 結果の記録を5年間保存できる場所と、見られる人を決めているか

判定の基準は、厚生労働省の「数値基準に基づいて『高ストレス者』を選定する方法」の評価基準の例(合計点数を使う方法)によります(厚生労働省の資料)。集団分析は、東京大学の仕事のストレス判定図の計算方法によります。実施者が別の基準を使う場合は、「設定」シートの数字を変えます。

外部に頼むときの線引き

仕組みを作る部分を外部に頼むこともできます。ただし、ストレスチェックは「誰が結果を見てよいか」が決まっている制度なので、頼める範囲にも線があります。業者や詳しい人に頼むときは、次の表で確かめてください。

ストレスチェックの仕組みづくりで、外部に頼めること
頼む内容考え方
仕組みを作って引き渡す頼める。テスト用のデータで動きを確かめ、ファイルの持ち主と見られる人は自社の実施事務従事者にして、引き渡した後は作った側の権限を外す
運用を代わりに行い、回答のデータに触れる実施事務従事者としての委託の契約が要る。守秘の取り決めも含めて、慎重に決める
高ストレス者の決定、面接指導が必要かの判断実施者(医師・保健師など)だけが行う。業者には頼めない
労働基準監督署への報告書を、報酬を払って作成・提出してもらう社会保険労務士の業務。社会保険労務士でない業者には頼まない

業務の自動化を何から始めるか、作った仕組みを属人化させない工夫は、次の記事にまとめています。

詳しく読む労務の仕事は何から自動にする?業務の選び方から、作った仕組みを属人化させない工夫まで

サンプルを自社の環境に合わせて組み込みたい、Microsoftの環境で作りたいといった相談は、お問い合わせから「仕組みづくりの相談」を選んで送ってください。ほかの会社にも役立ちそうな内容は、記事で取り上げます。

制度の中身は、厚生労働省のストレスチェック制度のページ(実施マニュアル・指針・Q&A)で確かめられます。条文は労働安全衛生規則(52条の9〜52条の21)にあります。