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人事労務システム

給与計算ソフト・人事労務システムはどう選ぶ?年末調整と入退社の手続きまで1つで回るかで比べる主要製品と料金

給与計算ソフト(給与システム)を入れたい、または乗り換えたいけれど、どれも同じに見える。そんな担当者や経営者に向けて、給与計算ソフトと、給与計算に入退社の手続きや年末調整までまとめた人事労務システムの選び方、主要な製品の料金・特徴をまとめた記事です。毎月の計算はどの製品でもできるので、差が出るのは年末調整や入退社の手続きとのつながりです。料金は2026年10月時点で各社の公式サイトに載っているもの(税抜)です。

結論

給与計算を外に委託しているなら、委託先と相談して先にソフトを決めます。自社で計算するなら、給与と年末調整が1つの製品で回り、入社のときの情報がそのまま給与と社会保険の手続きに使えるかを一番に見ます。勤怠とのつながりはCSVの取り込みで足りることが多いので、こだわりすぎません。候補を3社ほどに絞り、過去3か月分の再計算と1か月の並行稼働で、実績と合うかを確かめてから決めます。

最初に決めること

給与計算ソフトを選ぶ前に、計算を自社でするか、社会保険労務士や税理士、代行の会社に委託するかを決めます。委託する場合は、委託先が対応できるソフトが限られることが多いので、ソフトより先に委託先と相談して決めます。勤怠管理システムも、委託先が勤怠のデータを受け取れる形式に合わせて選びます。

自社で計算するなら、次に「このソフトで何をしたいか」を決めます。年末調整の紙をなくしたいのか、入退社の二重入力をなくしたいのかで、重く見るところは変わります。あれもこれもと求めず、「ここは諦めるが、今回の要望は必ず叶えられる製品にする」と決めておくと、比べるときに迷いません。

年末調整まで1つで回るか

年末調整には、その年の1年分の給与の結果と、扶養などの最新の情報がすべて要ります。給与と年末調整が別々の製品だと、年末調整の途中で分かった扶養の変更を給与の側に直し、もう一度年末調整の側に読み込ませる、という行き来が起きます。

労務の現場から

年末調整は、短い期間でとても正確な処理が求められる業務です。その最中に、システムの間でデータがぐるぐる回る状態になるのは致命的です。手間が増えるだけでなく、どちらのデータが最新か分からなくなり、間違いのもとになります。給与と年末調整が同じシステムで完結することは、給与計算ソフトを選ぶうえで一番妥協してはいけない条件です。

最近はほとんどの製品が「年末調整に対応」とうたっていますが、作りは製品によって違います。従業員が自分で申告を入力できるか、申告の回収が別の製品やオプションになっていないか、年末調整で分かった変更が給与の側にどう戻るかを確かめます。問い合わせでは、次のように具体的に聞くと、その製品の作りがよく分かります。

  • 年末調整の途中で扶養が変わった場合、給与の側の従業員の情報はどう直りますか
  • 従業員からの申告の回収は、給与計算と同じ製品・同じ料金で使えますか
詳しく読む年末調整はいつから何をする?10月の事前確認から1月の提出まで、担当者の段取り

入退社の手続きとのつながり

年末調整の次に見るのは、入退社の手続き(社会保険・雇用保険)とのつながりです。人事労務の情報と給与のソフトが分かれていると、昇給や住所の変更のたびに両方に入力し、両方を確かめることになります。入社のときに集めた情報が、そのまま給与計算と社会保険の手続きに使われるかを確かめます。

給与計算ソフトには、随時改定(月変)の対象になりそうな人など、その時々に必要な対応を知らせてくれる仕組みを持つものが多くあります。算定基礎届・月額変更届・年度更新・賞与支払届といった定型の手続きは、ソフトに任せる前提で回します。選ぶときは、こうした知らせや届け出の作成をどこまで任せられるかも見ておき、導入した後はそれを使いこなします。

資本金が1億円を超える法人などは、算定基礎届・月額変更届・賞与支払届などを電子申請で出すことが義務になっています。対象の会社は、ソフトから電子申請まで済ませられるかも確かめます。

詳しく読む社会保険の資格取得届・喪失届はいつまでにどこへ?入社・退職の手続きの早見表と段取り

勤怠とのつながりと成り立ち

勤怠とのつながりは、年末調整と入退社の手続きの次に見ます。カタログで「API連携に対応」とうたわれていても、実務での差は思ったほど大きくありません。

労務の現場から

API連携で、必要な項目が100%つながるシステムはほとんどありません。取り込めるのは一部の項目にとどまり、結局は画面で手直しするか、足りない分をCSVで取り込むことになります。登録済みの従業員の情報を更新するときは、新しく登録するときとCSVの形式が違うこともあり、「最初からCSVでまとめて取り込んだほうが楽だった」ということがよく起きます。

比べるときは、「同じシステムの中に勤怠があるか」と「それ以外」の2つに分け、API連携は「それ以外」と同じ扱いで評価するのが現実的です。

同じシステムでなくても困らない理由は2つあります。1つは、給与計算ソフトはほかの勤怠管理システムの結果もCSVなどで取り込めるのが普通で、同じシステムの中でも勤怠の結果を反映する操作は要るので、手間に極端な差が出ないことです。もう1つは、固定残業代の扱いなど会社ごとの計算のルールがあり、どのみち自社に合わせたデータの調整が要ることです。例外は入退社がとても多い会社や急に人が増えている会社で、人の登録や削除を1か所で済ませられる一体型の利点が大きくなります。

システムはどれも一長一短で、成り立ちによって特色が出やすくなります。勤怠管理から広がった製品は勤怠が強く、人事管理のシステムに機能を足した製品は、その分野の色が薄めになることがあります。もちろん例外もあり、会社の規模や運用によって合う製品は変わるので、決め打ちで勧められる製品はありません。

給与計算ソフトの成り立ちと強み
成り立ち主な製品強み・向いている会社
人事労務の一部freee人事労務、SmartHR、ジンジャー給与従業員の情報・入退社の手続きと給与を同じデータで回したい
会計ソフトのシリーズ弥生給与 Next、マネーフォワード クラウド給与同じシリーズの会計ソフトを使っている、費用を抑えて始めたい
勤怠から広がったKING OF TIME、ジョブカン給与計算勤怠と給与をまとめたい、入退社が多い
給与計算が主役給与奉行クラウド給与計算の機能の厚さを重く見る、委託先や顧問が同じシリーズを使っている

人事評価などのタレントマネジメントシステムから、労務に機能を広げた製品もあります。たとえばカオナビは、従業員のデータベースに、電子申請・年末調整・給与明細などの労務管理の機能を選んで足せます(公式サイトの労務管理)。公式サイトの機能の一覧に給与計算そのものは挙がっていないので、こうした製品を選ぶときは、給与計算ソフトとどうつなぐか、年末調整の結果が給与の側にどう渡るかを確かめます。

主要製品の料金と特徴

中小企業での利用が多く、公式サイトで料金や機能を確かめられる製品を選んでいます。料金は2026年10月時点の公式サイトの表示(税抜)で、変わることがあるので、申し込みの前に公式サイトで確かめてください。

給与計算ソフトの料金の目安(2026年10月時点、税抜)
製品月額の目安年末調整・入退社の手続き
freee人事労務年払い2,000円〜(5名込み、追加1人400円)年末調整は全プラン。従業員の申告入力と入退社の手続きはスターター以上
SmartHR給与計算は有料オプション(見積)年末調整・入退社の手続きを持つ人事労務システムに加える形
ジンジャー給与製品ごとに1人300円〜年末調整の計算を含む。人事労務の情報を自動で反映
弥生給与 Next年契約で月750円〜年末調整は全プラン。労務の手続きはベーシック以上
マネーフォワード クラウド給与年払い2,480円〜(人数はプランによる)年末調整・社会保険・人事管理は同じプランに含まれる別サービス
KING OF TIME1人300円(勤怠・人事労務を含む)給与計算・年末調整・人事労務が同じ料金
ジョブカン給与計算1人400円年末調整を含む。入退社の手続きはジョブカン労務HR
給与奉行クラウド5,500円〜(20名まで、年間契約)年末調整の計算を含む。申告の回収とWeb明細は別製品

freee人事労務

給与計算・年末調整・入退社の手続き・勤怠を1つの製品で扱えます。一番安いミニマムプラン(年払いで月2,000円、5名込み)から給与計算・年末調整・Web給与明細を使えますが、従業員が自分で年末調整の申告を入力する機能と、入退社の手続き(社会保険の電子申請)はスタータープラン以上、従業員の打刻はスタンダードプラン以上です。使いたい機能とプランの対応を確かめて選びます(公式サイトの料金)。

SmartHR

入退社の手続きや年末調整、従業員の情報の管理で使われる人事労務システムに、有料オプションとして給与計算を加える形です。人事労務で集めた情報を、そのまま給与計算に使えるのが強みです。料金は見積制です(公式サイトの料金、給与計算の機能)。すでにSmartHRで手続きをしている会社の候補です。

ジンジャー給与

ジンジャー人事労務と同じデータベースを使う給与計算システムです。人事労務で登録した身上の変更や社会保険の情報が給与に反映され、ジンジャー勤怠と使えば勤怠のデータも給与に渡せます。料金は「使う製品×人数」で、1人月300円からです(給与の機能、公式サイトの料金)。

弥生給与 Next

会計ソフトの弥生のクラウド給与計算ソフトで、すべてのプランで給与計算と年末調整ができます。年契約なら月750円相当(エントリーライト)から始められ、勤怠管理はエントリー以上、社会保険や入社などの労務の手続きはベーシック以上のプランで使えます。各プランに含まれる人数を超えると追加の料金がかかります(公式サイトの料金)。

マネーフォワード クラウド給与

マネーフォワード クラウドのシリーズの給与計算ソフトです。年払いで月2,480円(1名)からで、ビジネスプランは月6,480円(5名込み、6名から1人300円)です。同じ料金プランに、勤怠・年末調整・社会保険・人事管理などのサービスが含まれ、それぞれ別のサービスとして使う作りです。マネーフォワードの会計ソフトを使っている会社の候補です(公式サイトの料金)。

KING OF TIME

勤怠管理で知られる製品で、1人月300円の料金に人事労務・給与計算の機能も含まれます。勤怠を使っている会社なら、追加の料金なしで給与計算まで1つにまとめられます(公式サイトの料金)。人事労務と年末調整の情報のやり取りの仕組みは、お試しで確かめます。

ジョブカン給与計算

ジョブカンのシリーズの給与計算ソフトで、1人月400円、初期費用は0円です。公式サイトの機能の一覧に、Web給与明細・Web源泉徴収票・年末調整が挙がっています。入退社の手続きは同じシリーズのジョブカン労務HRで扱います。ジョブカン勤怠管理を使っている会社の候補です(公式サイト)。

給与奉行クラウド

長く使われてきた給与奉行のクラウド版で、年末調整の計算や住民税の処理まで基本の機能に含まれます。料金は20名までで月5,500円からの年間契約です。従業員からの年末調整の申告の回収(奉行Edge 年末調整申告書クラウド)やWeb給与明細は別の製品で、給与奉行とつないで使います(公式サイトの料金)。

料金で見落としやすい点

「給与計算の料金」だけで比べると、必要な機能をそろえたときの総額が逆転することがあります。

料金のほかに確かめること
確かめること差が出る理由例
使える機能従業員の申告入力や入退社の手続きが、上のプランにしかないことがあるfreee人事労務はスターター以上、弥生給与 Nextの労務はベーシック以上
別の製品申告の回収やWeb明細が、別の製品・オプションになっている給与奉行クラウド
含む人数基本料金に何人分が含まれ、超えた分がいくらか5名込み・20名までなど
見積の範囲人事労務の基本料金と給与計算のオプションを合わせた総額見積制の製品

過去の給与で確かめる

労務の現場から

導入で時間がかかるのは、設定と、その設定が正しいかの検証です。手当の種類や計算の方法、月の途中の入退社の扱いなど、自社の実務を先に棚卸ししておき、説明を聞きながら「この処理はこのソフトでどうやるのか」を1つずつ当てはめて質問・検証します。

検証は、過去3か月分の再計算と、1か月の並行稼働が最低ラインです。そこから先は担当者の経験によるところも大きいのですが、テストの中で、随時改定(月変)の対象者に知らせが出るかも確かめておくと安心です。見落としやすい手続きをシステムがどこまで知らせてくれるかは、製品によって差があります。

  1. 候補を3社ほどに絞る成り立ちの表と料金の表から、自社のやりたいことに合う製品を選びます。
  2. 同じ質問を送る下の質問を、各社に同じ言葉で送ります。
  3. 過去3か月分を再計算する支給の済んだ給与を新しいソフトで計算し直し、支給額・控除額・差引支給額が実績と合うかを確かめます。
  4. 1か月並行して計算する本番の1か月を今のやり方と新しいソフトの両方で計算し、一致してから切り替えます。

再計算に使う月には、賞与の月や、入退社・昇給・保険料の改定があった月を入れます。問い合わせでは、次の点を各社に同じように聞きます。

  • 従業員は◯名(うちパート・アルバイト◯名)です。給与計算・年末調整・Web給与明細・入退社の手続きまで使う場合の、初期費用と月額の総額はいくらですか
  • 年末調整の途中で扶養が変わった場合、給与の側のデータはどう直りますか
  • 入社の手続きで登録した従業員の情報は、そのまま給与計算に使えますか
  • 当社の勤怠管理システム(◯◯)のデータは、どの項目まで取り込めますか。取り込める項目の一覧はありますか
  • 随時改定(月変)の対象になりそうな人を知らせる機能はありますか
  • 年の途中から使い始める場合、その年の1月からの給与のデータはどう取り込みますか

切り替えの時期と、明細の電子化

切り替えは、年末調整・算定基礎届・賞与の月を避け、業務が落ち着いている時期にします。年の途中から使い始める場合は、年末調整のために、その年の1月からの給与のデータを新しいソフトに取り込みます。再計算のために取り込んだ過去のデータを、そのまま本番のデータとして使えば、二度手間になりません。

給与明細をWebやアプリで渡すときは、あらかじめ電子で渡す方法を示して、従業員の承諾を得ておきます(所得税法231条2項)。従業員が書面に出力(印刷)できる形で渡すことも要件です。給与明細は、「期限までに回答がなければ承諾したものとみなす」と前もって知らせておく方法も認められていますが、承諾した人からも書面での交付を求められたら、書面で渡します。労働条件通知書は本人の希望を個別に確かめる必要があり、扱いが違うので注意します。導入のときに、承諾の取り方もあわせて決めておきます。

給与計算ソフトを含めたシステム化の順番と、毎月の給与計算の回し方は、次の記事にまとめています。

詳しく読む人事労務システムは何から入れる?勤怠・給与・電子契約の導入順と選び方、準備期間の見積もり 詳しく読む給与計算は毎月どう回す?前月のロックから振込までの流れと、目視に頼らない確かめ方

電子申請の義務は日本年金機構の特定の法人の電子申請義務化、給与明細の電子交付は国税庁の電子交付に関するQ&Aで確かめられます。

更新履歴

  • 2026年10月7日: 公開