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年末調整はいつから何をする?10月の事前確認から1月の提出まで、担当者の段取り

年末調整を初めて担当する人や、毎年なんとか回しているけれど不安が残る人に向けて、10月から翌年1月までに担当者が何をどの順でやるかをまとめた記事です。制度の細かい説明は国税庁の手引きに任せて、ここでは「どこで従業員が詰まり、どう段取りすれば期限に間に合うか」を中心に書きます。

この記事で分かること

  • 10月から翌年1月まで、担当者がいつ何をするか
  • 本番が始まる前の「事前確認」で、何を従業員に見てもらうか
  • 書類の不備を溜めずにさばく方法と、締め切りのルールの作り方
  • 今年(令和8年分)の改正で気をつけること
  • 工程表と、従業員への案内の文面(Excel)のダウンロード

年末調整の全体スケジュール

年末調整は、その年の最後に払う給与で、1年分の所得税を計算し直して精算する手続きです。担当者の仕事は、大きく次の4つの段階に分かれます。

  1. 事前確認10月扶養家族や住所など、今の人事情報に誤りや変更がないかを、従業員に確かめてもらいます。
  2. 申告書の配布と回収11月中旬〜給与計算ソフトにその年の制度が反映されたら、申告書を配り、届いたものから確認と差し戻しを進めます。
  3. 計算と精算12月1年分の税額を計算し、12月の給与(か賞与)で、払いすぎた税金を返したり、足りない分を差し引いたりします。
  4. 源泉徴収票と給与支払報告書12月〜1月源泉徴収票を従業員に渡し、1月31日までに給与支払報告書を市区町村に出します。

ここで押さえておきたいのは、書類を集めて計算できる期間は、思っているより短いということです。その年の制度の確定情報がそろって給与計算ソフトに反映されるのは、例年11月中旬ごろ。配布はそれを待ってから始めるので、年内最後の給与までに使える時間は限られます。だからこそ、ソフトへの反映を待つ間の10月のうちに、先に集められる情報を正しくそろえておくことが大切です。

テンプレート: 年末調整の工程表と文面(Excel)

10月から翌年1月までの段取りを工程表にしました。年と回収の締め切り日を入れると期限が出ます。2枚目のシートには、事前確認の依頼(一覧を送る場合・システムで見てもらう場合)、締め切りの案内、差し戻しの文面があり、◯の部分を書き換えてそのまま使えます。

Excelをダウンロード(無料・登録不要)

対象になる人・ならない人

年末調整は、原則として会社に「扶養控除等(異動)申告書」を出している人の全員について行います。迷いやすいのは次のような人です。

年末調整の対象になるか(迷いやすい人)
こんな人年末調整補足
年の途中で入社し、年末まで勤めている人する前の勤め先の源泉徴収票を出してもらい、その金額も合わせて計算する。出してもらえない場合は年末調整ができず、本人が確定申告
年の途中で退職した人原則しない本人が確定申告。ただし、12月の給与を受け取った後に辞めた人などは、退職のときにする
2か所から給与をもらっている人主な勤め先だけでする扶養控除等申告書を出している会社でする。もう一方の会社ではしない
扶養控除等申告書を出していない人しない1か所からだけ給与をもらう人なら、申告書を出すよう案内する
その年の主な給与が2,000万円を超える人しない本人が確定申告

年の途中で退職したパートの人で、その年の給与が136万円以下(令和8年分)、かつ年内にほかで働く見込みがない人も、退職のときに年末調整をします。詳しくは国税庁の令和8年分 年末調整のしかたを見てください。

10月: 事前確認で勝負が決まる

年末調整でよく起きるトラブルは、計算の間違いよりも、「本番が始まってから、書類が足りないと分かる」ことです。

労務の現場から

よくあるのが、扶養に入れていた家族が実はもう扶養から外れていたと、年末調整になって分かるケースです。別居している家族のために、証明の書類が必要になるケースもあります。どちらも、年末調整が始まってから案内したのでは、書類をそろえるのが期限に間に合わないことが多くなります。

特に困るのが、仕送りの送金の記録のように、後からでは用意できない証拠です。年末になって記録が残っていないと分かっても手の打ちようがなく、結局その家族を扶養に入れられないことがあります。

だから、今の人事情報に不備がないかの確認は、本番を待たずに先に済ませておきます。確認するのは主に税の扶養ですが、社会保険の扶養にも関わるので、両方の目で見ておくと安心です。

事前確認では、次のような点を従業員に見てもらいます。会社が今登録している内容を一覧にして渡し、「変わったところだけ連絡してください」と頼むと、返事がもらいやすくなります。

  • 扶養に入れている家族の氏名・続柄・生年月日に、誤りや変更がないか
  • 家族それぞれの、今年の収入の見込み(パート収入・年金など)が、扶養の基準を超えていないか
  • 今年、結婚・出産・離婚・死亡などで、家族の状況が変わっていないか
  • 別居している家族を扶養に入れているか。仕送りの記録を残しているか
  • 国外に住む家族を扶養に入れているか。送金の記録を年末まで残せるか
  • 本人や家族に、障害者控除・ひとり親控除などの対象になる変化がないか
  • 住所に変更がないか(給与支払報告書は、翌年1月1日に住んでいる市区町村に出すため)
  • 今年、ほかの勤め先から給与をもらったか。その源泉徴収票が手元にあるか

国外に住む家族を扶養に入れるには、決まった書類が要ります。出すタイミングが書類によって違うので、事前確認のときに一緒に伝えておきます。

国外に住む家族を扶養に入れるときの書類
書類中身出すとき
親族関係書類その家族が本人の親族だと分かる書類(外国語なら訳文も)扶養控除等申告書を出すとき
送金関係書類その年に生活費などを送金したことが分かる、金融機関などの書類。家族一人ひとりへの送金が分かるもの(代表の一人にまとめて送った記録では、ほかの家族の分にならない)年末調整のとき

注意国外に住む30歳以上70歳未満の家族は、留学中の人、障害がある人、その年に38万円以上の仕送りを受けている人でないと、扶養控除の対象になりません。38万円以上の仕送りは、送金の書類で合計額を示す必要があります。年の途中から記録を残していないと、年末になってからでは間に合いません。

なお、年末調整で見る「税の扶養」と、健康保険の「社会保険の扶養」は、基準も必要な書類も別です。パートの家族の収入の基準については、次の記事で整理しています。

詳しく読む106万円の壁と130万円の壁の違いは?撤廃後に残る「週20時間」と手取りの確かめ方

11月中旬〜: 配布と、溜めない一次対応

給与計算ソフトにその年の制度が反映されたら、申告書の配布を始めます。クラウドの給与計算ソフトの年末調整の機能を使えば、従業員はスマホやパソコンで質問に答え、控除証明書を画像や電子データで出せます。紙で配るよりも、回収の状況をひと目で追えるのが大きな利点です。年末調整まで1つのソフトで回せるかの比べ方は、給与計算ソフトの選び方の記事にまとめています。

労務の現場から

受付が始まったら、届いた書類から順にチェックしていきます。よくあるのは、保険料控除の申告に、控除証明書ではなく保険会社から届いた単なる「お知らせ」が付いているケースや、そもそも控除の対象にならない書類が付いているケースです。

その場合は「この書類では控除を受けられません」と差し戻し、保険会社に証明書を出してもらうよう伝えます。届いたものを溜め込まず、届いたそばから一次対応していくことが大切です。

差し戻しになりやすい書類
提出された書類必要なもの
保険会社からの契約内容の「お知らせ」や、払い込みの案内保険会社が発行する「控除証明書」(書面か電子データ)。なければ保険会社に再発行を頼んでもらう
火災保険だけの証明書地震保険の保険料が分かる控除証明書。火災保険の保険料は控除の対象にならない
前の勤め先の最後の給与明細前の勤め先が発行する「源泉徴収票」。給与明細では代わりにならない

差し戻すときは、何が足りず、どこに頼めば手に入るかまで書くと、やり取りが1往復で済みます。

(差し戻しの文面の例)「提出いただいた書類は保険会社からのお知らせで、控除証明書ではないため、このままでは控除を受けられません。保険会社に『生命保険料控除証明書』の再発行を依頼し、届いたら◯月◯日までにアップロードしてください。」

締め切りと「間に合わない人」のルール

回収で一番時間を取られるのは、書類がそろわない人を待つ時間です。これを防ぐには、配る前にルールを決めて、全員に同じように伝えておきます。

労務の現場から

分厚いマニュアルを作っても、従業員はあまり読んではくれず、結局やり取りが長引いてしまいます。それより効くのは、期限と、間に合わなかったときのルールを先に伝えておくことです。

もちろん、書類がそろうのはできる限り待ちます。ただ、生命保険料控除の書類や前の勤め先の源泉徴収票が届かない人を待ち続けると、全員分の給与計算や年末調整の結果の反映まで遅れてしまいます。だから、期限に間に合わなければ「ご自身で確定申告をお願いします」とあらかじめ伝えておき、期限を過ぎたら例外を作らずに進めます。そういう仕組みにしておくことが、年末調整を滞りなく終わらせるコツです。

制度の上では、年末調整の後に書類が出てきても、源泉徴収票を渡す翌年1月末までなら、年末調整をやり直すことができます。ただ、やり直しを受け付けるほど担当者の仕事は増え、ほかの人の処理も遅れます。期限の後に出てきた控除は、本人が確定申告で受けられるので、会社としては期限で区切ると決めてしまってかまいません。

(締め切りの案内の例)「提出期限は◯月◯日です。期限までに書類がそろわない控除は、会社の年末調整には入れずに計算します。その控除は、ご自身の確定申告で受けてください。前の勤め先の源泉徴収票が期限までに出せない方は、会社では年末調整ができないため、ご自身で確定申告をしていただくことになります。」

12月: 計算と精算

申告書がそろったら、給与計算ソフトで1年分の税額を計算し、それまでに給与から差し引いてきた税額との差を精算します。精算は、この月の給与で行う会社が多く、払いすぎた人には返し、足りない人からは差し引きます。

  • ふだんの給与より先に賞与を払う場合は、賞与のときに年末調整をしてもかまいません(後で払う給与は見込みの額で計算し、実際の額と違えばやり直します)。
  • 返す額が大きく、その月に会社が納める源泉所得税の額を上回るときは、返しきれなかった分を翌年1月・2月に繰り越して精算できます。
  • 精算した額は、その月の源泉所得税の納付書(所得税徴収高計算書)の「年末調整による超過税額・不足税額」の欄に書きます。納める税額が0円になっても、納付書は税務署に出します。

計算結果の確認は、毎月の給与計算と同じ考え方が使えます。一人ずつ目で見直すのではなく、「全員分の還付額と徴収額の合計が、ソフトの集計と合うか」「前の年と比べて大きく変わった人に、変わる理由(扶養の増減・保険料控除など)があるか」のように、確認のしかたを先に決めておき、それが通れば終わりにします。

1月: 源泉徴収票と給与支払報告書

源泉徴収票は、12月の給与の明細と同時に従業員に公開するのがよくある流れです。交付の期限は翌年1月31日です。

年末調整の後に出すもの
書類出す先期限
給与所得の源泉徴収票従業員翌年1月31日
給与支払報告書従業員が1月1日に住んでいる市区町村翌年1月31日
給与所得の源泉徴収票(税務署用)・法定調書合計表税務署翌年1月31日
  • 源泉徴収票を電子データで渡すには、従業員の承諾が要ります。「期限までに返事がなければ承諾したものとみなす」と事前に知らせる方法も使えます。承諾した人でも、紙での交付を求められたら紙で渡します。
  • 税務署に源泉徴収票を出すのは、年末調整をした人のうち給与が500万円を超える人(役員は150万円を超える人)などに限られます。さらに、令和9年1月1日以後に出す分からは、市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署に源泉徴収票を出したものとみなされます。
  • 法定調書の種類ごとに、前々年に出すべきだった枚数が30枚以上なら、e-Taxなどの電子での提出が義務です(令和9年1月以後に出す分から。それまでは100枚以上)。

今年(令和8年分)の改正

年末調整のルールは、毎年のように何かしら変わります。令和8年分は、令和8年度の税制改正で基礎控除の引き上げなどが行われ、改正は令和8年12月1日に施行されます。担当者が押さえておきたいのは次の点です。

  • 11月までの毎月の源泉徴収は、これまでどおりで変わりません。12月に行う年末調整で、改正後の基礎控除などを使って1年分の税額を計算し、精算します。
  • 扶養控除などの対象になる家族の所得の基準が、58万円から62万円に上がりました(給与だけの人なら、年収123万円以下から136万円以下)。
  • この改正で新しく扶養の基準を満たす家族がいる人は、扶養控除等(異動)申告書を出し直す必要があります。事前確認のときに、給与だけの収入の家族で、年収が123万円を超え136万円以下の人がいないかも見ておきます。
  • 給与所得控除の最低保障額が、令和8・9年分は74万円になりました。
  • 23歳未満の扶養親族がいる人は、令和8・9年分の一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に上がりました。
基礎控除の額(令和8年分、合計所得金額2,350万円以下の人)
合計所得金額給与だけの人の年収の目安基礎控除
489万円以下665万5,556円以下104万円
489万円超 655万円以下850万円以下67万円
655万円超 2,350万円以下2,545万円以下62万円

過去には、令和6年分の定額減税のように、年末調整の手順そのものが大きく変わった年もありました。改正の多い年ほど、給与計算ソフトへの反映を待つ間にできる準備、つまり10月の事前確認が効いてきます。

改正の内容は、国税庁の令和8年分 年末調整のしかたの「昨年と比べて変わった点」で確かめられます。源泉徴収票の電子交付は国税庁の電子交付のQ&A、税務署に出す範囲はタックスアンサー No.7411にまとまっています。

更新履歴

  • 2026年10月9日: 工程表と案内の文面(Excel)を追加
  • 2026年10月7日: 関連する記事へのリンクを追加
  • 2026年10月1日: 関連する記事へのリンクを追加
  • 2026年9月30日: 公開