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給与計算・賞与 テーマ別ガイド

給与計算は毎月どう回す?前月のロックから振込までの流れと、目視に頼らない確かめ方

給与計算を担当している人や、これから担当する人に向けて、毎月の給与計算をどんな段取りで回し、どう確かめれば間違えずに済むかをまとめた記事です。給与計算は間違えられない仕事なので、目で何度も見直す担当者は少なくありません。けれど、目視の確認を何度も繰り返すことは、正しさの保証になりません。ミスが起きる場所を先につぶし、確かめ方と確認の終わりを決めておく。その仕組みを、1か月の流れにそって説明します。

この記事で分かること

  • 給与計算の1か月の流れと、担当者が力を入れる場所
  • 変更の反映漏れを防ぐ「前月のロック」
  • 目視に頼らない確かめ方と、確認の終わりの決め方
  • 総支給から手取りまでの計算の中身(計算例つき)
  • 最低賃金を下回っていないかの確かめ方

給与計算の1か月の流れ

給与計算ソフトを使っていれば、勤怠のデータを取り込むだけで計算結果は出ます。担当者の仕事は、計算そのものより、その前と後にあります。1か月は、次の4つの段階に分けて考えると回しやすくなります。

  1. 人事情報の変更をロックする前月昇給・手当の変更・入退社など、次の給与に関わる変更を、前月のうちにすべて給与計算ソフトに反映します。
  2. 勤怠を締める締め日の直後打刻漏れや承認待ちの申請を早めに片づけ、勤怠を確定させます。
  3. 計算結果を確かめる振込データの期限まで意図した変更が正しく反映されているかを、先に決めておいた方法で確かめます。
  4. 月次確定・明細・振込・納付支給日まで・翌月結果を確定し、明細の公開と振込の準備をします。引いた税や保険料は、決まった期限までに納めます。

賃金は毎月1回以上、決まった日に払うことが労働基準法で決まっています。締め日と支給日は賃金規程などで決めておき、支給日を後ろにずらすことはできません。締め日から、銀行に振込データを渡す期限までの数日が、確かめに使える時間のすべてです。1と2は、その時間を確かめのために残しておくための段階です。

前月のうちに変更をロックする

給与計算の失敗やヒヤリの多くは、計算の間違いではなく、変更の反映漏れから起きます。

労務の現場から

反映漏れが起きるのは、大きく2つの場面です。ぎりぎりになって変更を伝えられる場合と、前から分かっていたのに反映を忘れる場合です。どちらも、期限が迫ってから焦って直すことになります。

そこで現場では、昇給や退職など人事情報の変更を、前月のうちにすべて給与計算ソフトのマスターに反映しきり、そこで「ロック」します。あわせて、何を変更したかを残す管理簿と、反映漏れがないかを確かめるリストを必ず用意します。人事のマスターは給与計算ソフトの中に持ち、変更の履歴はExcelなどで別に残します。期限の直前に慌てないよう、ここを仕組みにしておくことが大切です。

前月のうちに確かめておきたいのは、次のような変更です。

  • 昇給・降給や手当の新設・変更を、適用する月から反映したか
  • 入社する人の給与・振込口座・扶養の情報を登録したか
  • 退職する人の退職日と、最後の給与の計算方法(日割りなど)を確かめたか
  • 住所や通勤経路の変更を、通勤手当に反映したか
  • 扶養の増減を、源泉所得税の計算に反映したか
  • 社会保険料の改定(定時決定・随時改定)や料率の変更を反映したか
  • 住民税の変更の通知が届いた人の税額を直したか
  • 休職・復職や育児休業などで、支給や保険料が変わる人がいないか

給与計算ソフトには、随時改定(月変)の対象になりそうな人など、その月に必要な対応を知らせてくれる機能を持つものが多くあります。こうした機能を使いこなすことも、漏れを減らす手段の1つです。知らせの機能を含めた給与計算ソフトの選び方は、給与計算ソフトの選び方の記事にまとめています。

詳しく読む社会保険は誰が入る?加入条件の判定から入退社の手続き、算定・月変まで担当者の実務の流れ

勤怠を早く正確に締める

月が変わって最初にやるのが、勤怠の締めです。振込データを銀行に渡す期限は決まっているので、締めが1日遅れれば、確かめに使える日数がそのまま1日減ります。

労務の現場から

給与計算の中で最優先なのは、勤怠をいかに早く、正確に締めるかです。勤怠に不備がある従業員を早めに見つけて処理できれば、銀行データの取り込み期限までの残りの日程を、給与計算の担当者とダブルチェックしながら進められます。そのためには、従業員にとって使いやすい勤怠管理システムを選ぶことも大切です。

勤怠管理システムの選び方は、勤怠管理システムの選び方の記事で説明しています。

締める前には、次の点を見ておきます。

  • 打刻漏れや打刻の修正依頼が残っていないか
  • 残業・休日出勤の申請が、承認まで済んでいるか
  • 有給休暇などの申請が、勤怠に反映されているか
  • 月の途中で入社・退職した人の勤務日が、在籍期間と合っているか
  • 時間外・深夜・法定休日の時間が、分けて集計されているか
詳しく読む残業代の計算方法は?割増率と1時間あたりの単価、間違えないための確かめ方

計算は「チェック」の工程にする

勤怠を流し込めば、計算結果は自動で出ます。そのため計算の段階で担当者がやることは、「意図した変更が、正しく反映されているか」を確かめることが中心になります。この確かめも、ロジックを組んでおけば短い時間で済みます。

労務の現場から

支給漏れや不備を恐れるあまり、目視で何度も確認を繰り返す担当者は少なくありません。けれど、目視の回数を増やしても正しさの保証にはなりません。求められるのは、ロジックを組んで目視に頼らずに済むようにする工夫です。

たとえば、計算結果をまったく別のExcelのツールに流し込んで突き合わせ、そのチェックを通れば不備はないと言い切れる仕組みを作ります。単純な差し引きは合っていて当然なので、少しひねった確かめ方を持つのがポイントです。「今月は特別な手当があり、その合計は◯円のはず。全員分のこの項目を足せば◯円になるはず」のような確かめ方を、自社の給与体系に合わせていくつも用意しておきます。

そして何より、チェックの終わりを仕組みとして決めておくことです。「この方法で確かめられたら終わり」と決まっていれば、見直しを繰り返す必要はなくなります。

自社の確かめ方を作るときの手がかりとして、突き合わせの例を挙げます。

突き合わせの例(自社の給与体系に合わせて作る)
項目計算結果の側突き合わせる相手
変更の反映前月から支給額・控除額が変わった人変更の管理簿に載っている人
臨時の手当その項目の全員分の合計対象者の人数×支給額
社会保険料保険料が変わった人標準報酬月額が変わった人
住民税その項目の全員分の合計市区町村の通知の月割額の合計

両側が合わない人や項目があれば、そこが反映漏れや二重の支給の候補です。合えば、そこで確認は終わりです。

毎月の計算で判断が要る場面

毎月の計算の中にも、ソフト任せにせず判断が要る場面があります。現場で気にかけているのは、月の途中の退職、同じ月の入社と退職、臨時の手当の3つです。

月の途中の退職と日割り

月初めなど中途半端な時期に退職する人が出たら、給与計算ソフトの日割り計算が正しく動いているかを確かめます。日割りの方法(暦日で割るか、所定労働日数で割るかなど)は、賃金規程で決めたとおりにします。

社会保険料は、資格を失う日(退職日の翌日)の属する月の前月分までかかります。毎月の給与からは前月分の保険料を引くので、退職日によって最後の給与から引く月数が変わります。

退職日と、最後の給与から引く社会保険料
退職日資格を失う日引く分
月末翌月1日前月分と退職月の分(2か月分)
月末より前退職日の翌日前月分だけ

同じ月の入社と退職(同月得喪)

入社した月のうちに、月末より前の日で退職した人は、社会保険の資格を同じ月に取って失うことになります(同月得喪)。この場合は、ふだんの退職とは逆に、その月1か月分の保険料がかかります。ただし厚生年金保険料は、同じ月のうちに次の勤め先の厚生年金や国民年金に入った場合は納めなくてよくなり、後から会社に還付されます。本人負担分は本人に返すことになるので、ソフトの処理とあわせて確かめます。

臨時の手当を出すとき

臨時の手当を出す月は、源泉所得税の課税の処理を確かめます。定期の給与とは別に払う手当で、あらかじめ支給額や支給の基準、支給の時期が決まっていないものは、賞与の性質を持つ給与として、賞与と同じ計算で源泉徴収します。毎月の給与に混ぜて計算すると、税額がずれます。判断のしかたは源泉徴収の記事で、賞与の保険料と税の計算は次の記事で説明しています。

詳しく読む賞与から引く社会保険料・源泉所得税の計算方法は?1人分の計算例と、退職・休業する人の扱い

月次確定・明細・振込・納付

確かめが終わったら、あとは決まった順に進めるだけです。

  1. 月次の確定(ロック)をする計算結果の確かめが済んだら、給与計算ソフトで今月分を確定させ、後から数字が動かないようにロックします。
  2. 明細の公開を設定する支給日の当日に明細が公開されるように設定しておきます。
  3. 振込データを渡す振込データを自分たちで銀行に取り込むか、経理の担当に渡します。銀行の受付の期限に間に合わせます。
  4. 税と保険料を納める口座からの引き落としで納める仕組みにしているケースが多く、そうしておけば納め忘れを防げます。

給与の明細(給与等の支払明細書)は、会社が従業員に渡すことが所得税法で決まっている書類です。メールやシステムなど電子で渡すときは、あらかじめ従業員の承諾を得ておきます。

給与から引いたものの納め方(原則)
引くもの納める期限納め先・納め方
源泉所得税支給した月の翌月10日税務署
住民税支給した月の翌月10日通知を出した市区町村ごと
社会保険料翌月の末日(前月分を納める)年金事務所から届く納入告知書で。健康保険組合の会社は、健康保険料は組合へ
雇用保険料毎月は納めない年に1回の年度更新で、会社の負担分とあわせて申告・納付

給与の支払いを受ける人(従業員など)が常時10人未満の会社は、税務署や市区町村の承認を受ければ、源泉所得税と住民税を半年分ずつまとめて納める「納期の特例」を使えます。

総支給から手取りまでのしくみ

ソフトが自動で出す計算の中身も、しくみは押さえておきます。確かめ方を作るときに、どこが変われば何が動くかが分かるからです。

給与から引くものの全体像
引くもの金額の決まり方変わるとき
社会保険料標準報酬月額×料率の本人負担分定時決定・随時改定、料率の改定
雇用保険料その月の賃金の総額×料率料率の改定(年度ごと)
源泉所得税保険料を引いた後の額と扶養の人数で、税額表から扶養の増減、税額表の改正
住民税市区町村が通知した額6月分から新しい額。年の途中の変更の通知

社会保険料は健康保険と厚生年金で、40歳から64歳の人は介護保険料が加わります。令和8年4月分からは、子ども・子育て支援金も健康保険料とあわせて引きます。ここまでの法律で決まったもの以外(社宅の費用や親睦会の会費など)を給与から引くには、労使協定が要ります(労働基準法24条)。

計算例: 30代・扶養なし、基本給24万円・職務手当1万円・通勤手当1万円(電車、非課税)、住民税の月額1万円の人(協会けんぽ東京、令和8年度の料率・令和8年分の税額表)

総支給額: 240,000円 + 10,000円 + 10,000円 = 260,000円 社会保険料(標準報酬月額26万円): 健康保険12,805円 + 支援金299円 + 厚生年金23,790円 = 36,894円 雇用保険料(一般の事業): 260,000円 × 5/1000 = 1,300円 源泉所得税: (260,000円 − 10,000円 − 36,894円 − 1,300円)= 211,806円 → 月額表の甲欄・扶養0人で4,770円 手取り: 260,000円 − 36,894円 − 1,300円 − 4,770円 − 10,000円 = 207,036円

通勤手当は税の計算からは外しますが、社会保険料と雇用保険料の計算には含めます。

源泉所得税の税額表の引き方は源泉徴収の記事で説明しています。住民税と、年に1度の所得税の精算は次の記事にまとめています。

詳しく読む住民税の特別徴収はどう進める?6月の切り替えと入社・退職の手続き、通知書の電子化まで 詳しく読む年末調整はいつから何をする?10月の事前確認から1月の提出まで、担当者の段取り

最低賃金を下回っていないか

最低賃金は毎年改定されます。都道府県ごとの地域別最低賃金は毎年度見直され、新しい額になる日(発効日)も都道府県ごとに違います(令和8年度は、10月1日の都道府県から12月の県まで分かれています)。基準になるのは、働いている事業場のある都道府県の額です。特定の産業には地域別より高い特定最低賃金が決まっていることがあり、両方が当てはまる人には高いほうが適用されます。

比べるときは、時給の人はそのまま、日給の人は1日の所定労働時間で、月給の人は1か月の平均所定労働時間で割って、1時間あたりの額にします。このとき、次の賃金は除きます。

  • 臨時に払われる賃金(結婚手当など)と、1か月を超える期間ごとに払われる賃金(賞与など)
  • 時間外・休日の割増賃金など、所定の時間や日を超えた労働に払う賃金と、深夜の割増分
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

計算例: 月給制で、基本給21万円・職務手当1万円・通勤手当1万円・家族手当5,000円、1か月の平均所定労働時間が160時間の人

(210,000円 + 10,000円)÷ 160時間 = 1,375円

通勤手当と家族手当は除き、職務手当は含めます。1,375円が、事業場のある都道府県の最低賃金額以上なら満たしています。

注意残業代の単価を出すときに除く手当と、最低賃金と比べるときに除く手当は同じではありません。たとえば住宅手当は、残業代の単価からは除けることがありますが、最低賃金と比べるときは含めます。

改定の額が公示されたら、発効日より前に全員の1時間あたりの額を確かめ、下回る人の昇給を「前月のロック」に入れておきます。

  • 事業場のある都道府県の改定後の額と発効日を、厚生労働省の一覧で確かめたか
  • 自社の業種に特定最低賃金がないかを確かめたか
  • 時給の人だけでなく、月給・日給の人も1時間あたりに直して比べたか
  • 発効日が給与の計算期間の途中に来るとき、発効日以後の分を新しい額で比べたか

月給・日給の人を時間額に直すときは、次のツールが使えます。最低賃金の対象になる賃金と年間休日を入れると、時間あたりの額と、最低賃金を満たすのに必要な月給が出ます。

最低賃金を下回っていないかチェック

入力した内容は送信されません(このページの中だけで計算します)

賃金の形

基本給と、毎月決まって払う手当(職務手当・住宅手当など)の合計。通勤手当・家族手当・精皆勤手当・残業代・賞与・臨時の賃金は除きます。

会社のカレンダーの年間休日数。1か月平均所定労働時間 =(365 − 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12

事業場のある都道府県の額。毎年改定され、発効日も都道府県ごとに違います。特定最低賃金がある業種は、高いほうと比べます。

目視の回数より仕組みで防ぐ

給与計算は、絶対に間違えてはいけない仕事です。だからこそ、中身を理解したうえで進め、ダブルチェックは必ず行います。ただし、目視で何度も見直すことを正しさの代わりにはしません。変更は前月にロックし、勤怠は早く締め、計算結果は決めた方法で確かめ、確かめられたらそこで終わりにする。この順番を毎月同じように回すことが、ミスを防ぐ一番の近道です。

制度の中身は、次の一次情報で確かめられます。最低賃金と比べる賃金と計算のしかたは厚生労働省の最低賃金の対象となる賃金と最低賃金額以上かどうかを確認する方法、都道府県ごとの額と発効日は地域別最低賃金の全国一覧、産業ごとの額は特定最低賃金についてにあります。社会保険料を給与から引く月は日本年金機構の退職した従業員の保険料の徴収、同月得喪は同機構のよくある質問、源泉所得税の納期と納期の特例は国税庁のタックスアンサー No.2505で確かめられます。

更新履歴

  • 2026年10月9日: 計算ツールを追加
  • 2026年10月7日: 関連する記事へのリンクを追加
  • 2026年10月1日: 公開