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給与計算・賞与

賞与から引く社会保険料・源泉所得税の計算方法は?1人分の計算例と、退職・休業する人の扱い

賞与の計算を任されたときに、「何を、何をもとに、いくら引くのか」を1本で確かめられるようにまとめた記事です。社会保険料・雇用保険料・源泉所得税の計算のしかたを1人分の計算例で通して示し、支給日の前後に退職や休業をする人の扱い、賞与支払届まで整理します。

結論

賞与からは、健康保険料(40〜64歳は介護保険料も)・子ども・子育て支援金・厚生年金保険料・雇用保険料・源泉所得税を引きます。社会保険料は賞与の額から千円未満を切り捨てた「標準賞与額」に料率を掛け、雇用保険料は賞与の総額に料率を掛けます。源泉所得税は、前月の給与(社会保険料などを引いた後)の額で税率が決まるため、前月の給与計算が正しいことが前提になります。

賞与から引くものと計算のもと

賞与から引くものは、毎月の給与とほぼ同じです。違うのは「何に料率を掛けるか」で、毎月の給与のような等級(標準報酬月額)は使わず、その回の賞与の額をもとに計算します。住民税は、毎月の給与から引く仕組みなので、賞与からは引きません。

賞与から引くものと、計算のもと
引くもの計算のもと上限
健康保険料・介護保険料・子ども・子育て支援金標準賞与額(賞与の額の千円未満を切り捨て)× 料率 ÷ 2年度(4月〜翌3月)の累計で573万円
厚生年金保険料標準賞与額 × 18.3% ÷ 21か月あたり150万円
雇用保険料賞与の総額 × 本人負担の料率なし
源泉所得税(賞与の額 − 上の保険料の合計)× 前月の給与で決まる率なし

介護保険料は40歳から64歳までの人だけにかかります。子ども・子育て支援金は、2026年4月分の保険料から健康保険料とあわせて納めるもので、賞与にもかかります。

社会保険料の計算と上限

社会保険料のもとになる標準賞与額は、税金や保険料を引く前の賞与の額から、千円未満を切り捨てた額です。たとえば賞与が485,600円なら、標準賞与額は485,000円です。これに健康保険・厚生年金それぞれの料率を掛け、本人と会社で半分ずつ負担します。

上限は、健康保険と厚生年金で決め方が違います。健康保険(介護保険料・子ども・子育て支援金を含む)は、4月から翌年3月までの年度の累計で573万円までです。厚生年金は、1か月に払った賞与ごとに150万円までで、同じ月に2回払ったときは合計して150万円で見ます。年に何回も多額の賞与を払う会社でなければ上限にかかることはまれですが、役員賞与などで上限を超える人がいるときは、給与計算ソフトが年度の累計を正しく持っているかを確かめておきます。

本人の負担分に円未満の端数が出たときは、給与から引く場合、50銭以下は切り捨て、50銭を超えれば切り上げて1円にします。料率は支給した月の分の料率を使います。協会けんぽの料率は毎年3月分から変わるので、3月に払う賞与は新しい年度の料率で計算します。

注意社会保険でいう「賞与」は、年3回以下で払うものです。年4回以上払う賞与は、賞与ではなく毎月の報酬として扱い、標準報酬月額の計算に入れます。名前が「賞与」「決算手当」などでも、回数で判断します。

雇用保険料の計算

雇用保険料は、社会保険料と違って標準賞与額を使わず、賞与の総額にそのまま料率を掛けます。上限はありません。料率は4月から翌年3月までの年度ごとに決まり、令和8年度は一般の事業で本人負担が1,000分の5、会社負担が1,000分の8.5です(農林水産・清酒製造の事業は本人負担が1,000分の6・会社負担が1,000分の9.5、建設の事業は本人負担が1,000分の6・会社負担が1,000分の10.5)。

毎月の給与で使っている料率と同じなので、給与計算ソフトの設定が正しければ、賞与だけ別に設定し直すことはありません。

賞与の額と料率を入れると、上限を当てはめた標準賞与額と、項目ごとの保険料(本人負担)が出ます。後の計算例の検算にも使えます。

賞与の社会保険料を計算

入力した内容は送信されません(このページの中だけで計算します)

税金や保険料を引く前の額。

健康保険の上限(4月〜翌3月の累計573万円)に使います。

厚生年金の上限(1か月150万円)に使います。

会社と本人を合わせた率。協会けんぽは都道府県ごとに毎年3月分から変わります。健康保険組合は組合の率。

40歳から64歳の人だけ。それ以外の人は空のままにします。

健康保険料とあわせて納めます(2026年4月分から)。

年度ごとに決まります。事業の種類で率が違います。

源泉所得税は前月の給与で決まる

賞与の源泉所得税は、毎月の給与の税額表(月額表)ではなく、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で計算します。この表は、賞与の額ではなく前月の給与の額で税率を決めるのが特徴です。

  1. 前月の給与から社会保険料などを引く前月に払った給与の額(通勤手当などの非課税分を除く)から、前月の給与で引いた社会保険料・雇用保険料を差し引きます。
  2. 算出率の表で率を探す扶養控除等申告書を出している人は甲欄を使い、扶養親族等の数の列で、1の金額が入る行を探します。その行の「賞与の金額に乗ずべき率」が税率です。
  3. 賞与から保険料を引いた額に率を掛ける賞与の額から、その賞与で引く社会保険料・雇用保険料を差し引き、2の率を掛けます。円未満は切り捨てます。

甲欄・乙欄の決め方や扶養親族等の数え方は、毎月の源泉徴収の記事で説明しています。扶養控除等申告書を出していない人は、同じ表の乙欄を使います。前月の給与がない人(休業中の人など)や、賞与の額が前月の給与(社会保険料などを引いた後)の10倍を超える人は、この表を使わず、月額表で計算します。

算出率の表を使わない場合の計算のしかた
場面計算のしかた
前月の給与がない(賞与 − 社会保険料など)÷ 6 を月額表に当てはめて税額を出し、それを6倍する
賞与が前月の給与の10倍を超える(賞与 − 社会保険料など)÷ 6 に前月の給与(社会保険料などを引いた後)を足して月額表で税額を出し、前月の給与の税額を引いてから6倍する

賞与の計算の対象期間が6か月を超えるときは、6の代わりに12を使います。計算の手順は、国税庁の賞与に対する源泉徴収で確かめられます。

注意算出率の表は年分ごとに変わります。国税庁は、令和9年分から算出率の表と月額表が改正されると案内しています。年が変わって最初の賞与の前に、給与計算ソフトの税額表が新しい年分になっているかを確かめてください。

労務の現場から

賞与の所得税は、前月の給与に紐づいて計算されます。前月の処理に不備があれば、賞与の税率まで変わり、計算をやり直すことになります。賞与の月は、前月の給与計算に不備がない状態を最低限そろえておくことが、再計算の手間を防ぐための必須の条件です。

前月の給与で扶養の人数の変更や手当の反映が漏れていると、賞与の源泉所得税も一緒にずれます。賞与の計算に入る前に、前月の変更がすべて反映されているかを先に確かめます。

計算例: 1人分を通して計算する

次の計算例は、東京都の会社で協会けんぽに加入する45歳の人の場合です(保険料率は令和8年度、源泉所得税は令和8年分の算出率の表)。扶養親族等は0人、前月の給与は月給28万円(通勤手当などはなし、標準報酬月額も28万円)とします。

計算例: 前月の給与が28万円の人に、賞与50万円を払う場合

前月の給与: 280,000円 − 保険料43,400円 = 236,600円 → 甲欄・扶養0人の「94千円以上260千円未満」の行 → 率 4.084% 社会保険料: 500,000円 ×(9.85% + 1.62% + 0.23% + 18.3%)÷ 2 = 75,000円 雇用保険料: 500,000円 × 5/1000 = 2,500円 源泉所得税:(500,000円 − 77,500円)× 4.084% = 17,254円(円未満切り捨て)

前月の保険料43,400円は、28万円に同じ料率を掛けた社会保険料42,000円と、雇用保険料1,400円の合計です。賞与から引く額は合計94,754円で、振り込む額は405,246円になります。

計算例の内訳(本人の負担と会社の負担)
項目本人会社
健康保険料(9.85%を折半)24,625円24,625円
介護保険料(1.62%を折半)4,050円4,050円
子ども・子育て支援金(0.23%を折半)575円575円
厚生年金保険料(18.3%を折半)45,750円45,750円
雇用保険料(本人5/1000・会社8.5/1000)2,500円4,250円
源泉所得税(4.084%)17,254円―
合計94,754円79,250円

会社も、本人とほぼ同じ額の保険料を負担します(表のほかに、会社だけが払う子ども・子育て拠出金や労災保険料もあります)。賞与の原資を決めるときは、支給総額だけでなく、会社負担の保険料を上乗せして考えておくと資金繰りがずれません。

同じ人に扶養親族等が1人いれば、前月の給与236,600円は扶養1人の列で「107千円以上250千円未満」の行に入り、率は2.042%、源泉所得税は8,627円になります。扶養の人数が1人違うだけで税額が大きく変わるので、前月の給与で扶養の人数が正しいかは必ず確かめます。

注意保険料率は、都道府県や健康保険組合、年度によって違います。40歳未満や65歳以上の人には介護保険料はかかりません。実際の計算では、その人が加入している保険の料率を使ってください。

支給日の前後に退職・休業する人

賞与の計算で迷いやすいのは、支給日の前後に退職する人や、休業中の人です。まず、その人に賞与を払うかどうかは、就業規則(賃金規程)の支給対象者の定めで決まります(最後の節)。払うと決まったら、社会保険料と源泉所得税は次のように扱います。

退職・休業する人に賞与を払うときの扱い
場面社会保険料源泉所得税
月末に退職かかる(資格を失うのは翌月1日のため)いつもどおり
月の途中で退職(退職前に支給)かからない(資格を失う月の賞与のため)いつもどおり
退職した後に支給かからない原則として乙欄
産前産後休業中免除(免除の期間中の月に支給したとき)前月の給与がなければ月額表で計算
育児休業中支給した月の末日を含めて1か月を超えて休むなら免除前月の給与がなければ月額表で計算
病気などで休職中かかる(免除のしくみはない)前月の給与がなければ月額表で計算

退職の日付が1日違うだけで、社会保険料がかかるかどうかが変わります。資格を失うのは退職日の翌日で、資格を失った月に払った賞与には保険料がかかりません。月末に退職する人は、資格を失うのが翌月1日なので、支給した月の保険料がかかります。

保険料がかからない場合や免除になる場合も、在職中(被保険者の間)に払った賞与は賞与支払届を出します。資格を失った月に払った賞与は、健康保険の年度の累計(573万円)に入るためです。退職した後に払う賞与は、被保険者ではない人への支払いなので、届出の対象になりません。

育児休業中の賞与が免除されるのは、支給した月の末日を含めて、連続して1か月を超える育児休業を取っている場合だけです(2022年10月1日以後に始まった育児休業)。1か月を超えるかは暦日で数え、土日も含めます。短い育児休業の途中で払った賞与は、免除になりません。産前産後休業は、休業を始めた月から、終わった日の翌日がある月の前月までが免除で、賞与の保険料もこの間は免除されます。

雇用保険料には、産休・育休中の免除のしくみがありません。休業中の人に賞与を払うときも、雇用保険料は引きます。産休・育休に入る人の手続き全体の段取りは、育児休業・介護休業の手続きの記事にまとめています。

退職した後に払う賞与の源泉所得税は、原則として乙欄で計算します。ただし、その年のうちに払うときに、本人がほかの会社に扶養控除等申告書を出していないことが明らかなら、甲欄で計算してもかまいません(国税庁の退職後に支給される給与等の源泉徴収)。

労務の現場から

賞与の計算で確かめるポイントは、支給日を挟んで退職するケースなど、支給対象者の考え方に不備がないかです。計算そのものは給与計算ソフトに任せられても、「誰に払うか」「その人は支給日にどういう状態か」を入れるのは人です。

支給日の前に、退職の予定がある人と休業中の人を洗い出し、退職日・休業の期間と、規程の支給対象者の定めを突き合わせてから計算に入ると、後からのやり直しを防げます。

70歳以上の人は厚生年金の保険料はかかりませんが、「70歳以上被用者賞与支払届」を出します。75歳以上の人は健康保険ではなく後期高齢者医療制度に入るため、健康保険料もかかりません。

賞与支払届と支給後の手続き

賞与を払ったら、支給日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を日本年金機構(健康保険組合に入っている会社は健康保険組合にも)に出します。この届出で標準賞与額が決まり、支給した月の分の保険料として、毎月の保険料とあわせて納めます。

  • 賞与を払った人全員分を届け出たか(保険料が免除・対象外の人も含む)
  • 同じ月に2回払ったときは、合計して1回分として届け出たか
  • 登録している賞与の支払予定月に払わなかったときは、「賞与不支給報告書」を出したか
  • 源泉所得税を、毎月の給与の分とあわせて納めたか

賞与支払届は、給与計算ソフトから届出のデータを出力し、そのまま電子申請で出せるものが多くあります。手書きや手入力で作り直すより、使っているソフトにその機能があるか、どの画面から出すのかを、最初の賞与の前に一度確かめておくと、毎回の手間が小さくなります。

支給の前に確かめること

賞与は年に1〜2回しかないので、手順を忘れがちです。支給日の前に、次の点を確かめておきます。

  • 前月の給与計算に、扶養の人数や手当の変更の反映漏れがないか
  • 支給日の前後に退職する人・休業中の人を洗い出し、支給対象になるかを規程で確かめたか
  • 給与計算ソフトの保険料率・税額表が、今の年度・年分になっているか
  • 40歳・65歳になる人の介護保険料の扱いが正しいか
  • 全員分の賞与の合計が、決まった支給総額と一致するか

最後の項目は、1人ずつの明細を目で追うより確実な確かめ方です。給与計算では、目視での確認を何度も繰り返すより、「合っていれば必ずこの数字になる」という確かめ方を決めておくほうが漏れを防げます。賞与なら、全員分の支給額の合計が決裁された支給総額と一致するか、全員分の保険料の合計が料率から見込んだ額とずれていないかを、数式で突き合わせます。

減額・不支給は規程で決めておく

賞与は、毎月の給与と違って法律で払う義務が決まっているものではなく、払うかどうか、いくら払うかは、就業規則や賃金規程、雇用契約の定めで決まります。賞与の定めをする会社は、その内容を就業規則に書く必要があります(常時10人以上を雇う会社。労働基準法89条)。

規程に書いておきたいのは、次の3つです。

  • 会社の業績や本人の勤務成績によって支給額を決め、支給しない場合もあること
  • 支給額を決める対象の期間と、評価の考え方
  • 支給日に在籍している人に支給すること(支給日在籍要件)

支給日に在籍している人だけに払う定めは、最高裁の判例(大和銀行事件)で有効とされています。一方で、「基本給の◯か月分を必ず支給する」のように金額を決めて約束している場合は、業績が悪くても減らせなくなります。規程を変えて減らしやすくするのは、労働条件の不利益な変更にあたるおそれがあるため、社会保険労務士などに相談しながら進めてください。賞与に関する判例は、厚生労働省の確かめよう労働条件(賞与の判例)で見られます。

パートや契約社員に賞与を払わない、または少なくするときは、正社員との待遇差が不合理でないかも確かめます。会社への貢献に応じて払う賞与なら、貢献が同じなら同じ額、違えば違いに応じた額を払うのがガイドラインの考え方です。判断のしかたは、パートと正社員の待遇差の記事にまとめています。

賞与の保険料のもとになる考え方(標準報酬月額との違い)や、入退社の手続きは、社会保険の実務の記事にまとめています。

詳しく読む社会保険は誰が入る?加入条件の判定から入退社の手続き、算定・月変まで担当者の実務の流れ

制度の詳しい内容は、日本年金機構の従業員に賞与を支給したときの手続き、育児休業等期間中の社会保険料の免除要件の見直し、産前産後休業を取得したときの手続きで確かめられます。料率は、協会けんぽの令和8年度の保険料率と、厚生労働省の令和8年度の雇用保険料率、税率は国税庁の賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)を見てください。個別のケースで判断に迷うときは、年金事務所や税務署、社会保険労務士に確認するのが確実です。