社会保険は誰が入る?加入条件の判定から入退社の手続き、算定・月変まで担当者の実務の流れ
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の担当になった人や、少人数で労務を回している会社の担当者・経営者に向けて、加入するかどうかの判定から、入社・退職の手続き、保険料が決まるしくみまでを1本にまとめた記事です。届出の書き方の細部は日本年金機構の案内に任せて、ここでは「いつ何をし、どこで漏れやすいか」と「どこまでを仕組みに任せられるか」を中心に書きます。
この記事で分かること
- 入社から退職まで、担当者がいつ何をするか(1年の届出と期限の一覧つき)
- パート・アルバイトを含めた、加入するかどうかの判定のしかた
- 入社・退職で出す届出と期限(詳しい手順は別の記事へ)
- 保険料のもとになる標準報酬月額の決まり方(算定基礎届・月額変更届・育休から戻った人)
- 手続きを社内でやるか、外に任せるかの考え方
社会保険の仕事の全体像
従業員1人について見ると、社会保険の仕事は「入社で加入し、毎月の保険料を納め、年に1回と給与が大きく変わったときに保険料を見直し、退職で抜ける」の繰り返しです。
- 加入するかを判定する採用・契約の変更のとき雇用契約の時間・日数と会社の規模から、加入するかどうかを決めます。
- 資格取得の手続きをする入社から5日以内健康保険・厚生年金の資格取得届を出します。雇用保険の取得届は翌月10日までです。
- 保険料を控除して納める毎月前月分の保険料を給与から差し引き、会社の負担分と合わせて、その月の末日までに納めます。
- 保険料を見直す7月・固定給が変わったとき7月に全員分の算定基礎届を出し、固定給が大きく変わった人は月額変更届を出します。
- 資格喪失の手続きをする退職から5日以内資格喪失届を出し、回収した資格確認書などを返します。
このうち、情報を集めて届け出る部分は電子化でき、保険料を見直す対象の人は給与計算ソフトが知らせてくれます。人が目を配るべきなのは、雇用契約と実際の働き方のずれや、退職する人からの回収のように、システムでは拾えないところです。
| 届出 | 出すとき | 期限 |
|---|---|---|
| 資格取得届(健康保険・厚生年金) | 入社したとき | 5日以内 |
| 被扶養者(異動)届 | 扶養する家族がいる・変わったとき | 5日以内 |
| 資格取得届(雇用保険) | 入社したとき | 翌月10日まで |
| 資格喪失届(健康保険・厚生年金) | 退職したとき | 5日以内 |
| 資格喪失届・離職証明書(雇用保険) | 退職したとき | 資格を失った日の翌日から10日以内 |
| 賞与支払届 | 賞与を払ったとき | 5日以内 |
| 算定基礎届 | 毎年(7月1日時点の全員) | 7月10日 |
| 月額変更届 | 固定給が変わり、標準報酬月額が2等級以上変わるとき | 速やかに |
| 労働保険の年度更新 | 毎年 | 6月1日〜7月10日 |
健康保険・厚生年金の届出は日本年金機構(事務センターか年金事務所)へ、雇用保険はハローワークへ出します。健康保険組合に入っている会社は、健康保険の届出を組合にも出します。
加入するかどうかの判定
判定は「会社が社会保険の適用事業所か」と「その人が加入の対象か」の2段階です。
会社のほうは、法人なら社長1人だけの会社でも適用事業所です。個人事業所は、常時5人以上を雇い、法律で決まった業種にあたる場合に適用されます(それ以外も、従業員の半数以上の同意で任意に加入できます)。2029年10月からは、個人事業所も業種を問わず、常時5人以上で適用になります。ただし、その時点ですでにある事業所は、当分の間は対象外です。
働く人のほうは、次の表で判定します。
| こんな人 | 加入 | 補足 |
|---|---|---|
| 正社員など、フルタイムで働く人 | する | 試用期間中も、入社日から加入 |
| 週の時間と月の日数が、どちらも正社員の4分の3以上のパート | する | 会社の規模に関係なく加入 |
| 4分の3未満で、週20時間以上のパート(従業員51人以上の会社) | する | 2か月を超えて働く見込みがあること。昼間の学生は原則として対象外 |
| 4分の3未満で、週20時間以上のパート(従業員50人以下の会社) | しない | 2027年10月からは、従業員36人以上の会社で加入に変わる |
| 2か月以内の期間を決めて雇う人 | 原則しない | 契約が更新される見込みがあれば、最初から加入 |
| 70歳以上の人 | 健康保険だけ | 厚生年金は70歳で抜ける |
| 75歳以上の人 | しない | 後期高齢者医療制度に移る |
ここでいう「従業員」は、厚生年金に入っている人の数です。パートの人の月額8.8万円以上という賃金の要件は2026年10月1日に撤廃され、今は週20時間が判定の中心です。51人のラインは、2027年10月の36人以上から段階的に下がり、2035年10月になくなります。
パート・アルバイトや学生を採用するときに、働く日数と時間、学校の種類などから加入するかを確かめたいときは、社会保険・雇用保険の加入判定ツールが使えます。
加入の判定は会社ごとに行います。副業などで2つの会社でそれぞれ加入の要件を満たす人は、本人が「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を出し、2社の報酬を合算して標準報酬月額が決まります。副業を認めるときの保険の扱いは、副業・兼業の記事にまとめています。
労務の現場から
判定のもとになるのは、雇用契約書(労働条件通知書)に書いた所定の時間・日数です。ただ、「契約書のうえでは基準に届かないから入らなくてよい」という理屈は通りません。契約を超えて働く状態が続いているなら、本来は契約のほうが見直されているはずだからです。
よく迷うのは、週20時間を超える月と超えない月が混ざる人です。基本は、ふだんの働き方がどちらかで契約を結び、契約を超えて働く状態が続くなら、そのたびに契約を直します。契約書を実態に合わせておくことが、加入の判定を正しくする一番の近道です。
パートの人の加入の判定、扶養から外れる130万円の基準、加入をためらう人への手取りの示し方は、次の記事で詳しく整理しています。
詳しく読む106万円の壁と130万円の壁の違いは?撤廃後に残る「週20時間」と手取りの確かめ方入社・退職の手続き
入社したら、健康保険・厚生年金の資格取得届を5日以内に出し(扶養する家族がいれば被扶養者(異動)届も一緒に)、雇用保険の取得届を翌月10日までに出します。退職したら、退職日の翌日が資格を失う日(喪失日)になり、そこから5日以内に資格喪失届を、雇用保険の喪失届は喪失日の翌日から10日以内に出します。
どちらも、担当者の仕事の中心は届出の書き方より、必要な情報や回収するものをそろえることです。入社する人のマイナンバーや扶養する家族の情報は、紙ではなく給与計算ソフトや人事労務のシステムで集めておけば、そのまま電子申請まで進められます。
退職する人の資格確認書などは、退職した後に追いかけて回収するのはかなり難しくなります。現場では、最終出勤日に立ち会い、その場で回収しきるようにしています。
保険料は、喪失日がある月の前月分までかかります。月末に退職した人は退職した月の分までかかるので、最後の給与から2か月分を差し引くことがあります。退職後の健康保険(任意継続・国民健康保険・家族の扶養)の案内のしかたは、退職と解雇の記事にまとめています。
提出先(協会けんぽと健康保険組合の違い)、入社前の情報のそろえ方、退職のときに回収するもの・しないもの、よくあるつまずきは、次の記事にまとめています。
詳しく読む社会保険の資格取得届・喪失届はいつまでにどこへ?入社・退職の手続きの早見表と段取り保険料が決まるしくみ
毎月の保険料は、実際の給与の額ではなく、「標準報酬月額」に保険料率を掛けて決まります。標準報酬月額は、給与(報酬月額)を決まった幅の等級に当てはめた額です。報酬には、基本給のほか、残業代・通勤手当・家族手当などの手当も入ります。
- 健康保険は50等級(5万8千円〜139万円)、厚生年金は32等級(8万8千円〜65万円)です。
- 厚生年金の上限は、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に上がります。
標準報酬月額が決まる(変わる)のは、次の4つの場面です。
| 場面(届出) | もとにする報酬 | いつから使うか |
|---|---|---|
| 入社したとき(資格取得届) | 入社時に決めた給与の見込み | 入社した月から |
| 毎年7月の見直し(算定基礎届) | 4〜6月に払った報酬の平均 | 9月から翌年8月まで |
| 固定給が大きく変わったとき(月額変更届) | 変わった月から3か月の平均 | 4か月目から |
| 育休から戻ったとき(育児休業等終了時報酬月額変更届) | 育休が終わった日の翌日がある月から3か月の平均 | 4か月目から |
保険料率は、厚生年金が18.3%で固定されています。協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに毎年変わり、令和8年度は3月分から適用です(東京都は9.85%)。40歳から64歳の人は介護保険料率(令和8年度は1.62%)が加わり、令和8年4月分からは子ども・子育て支援金(0.23%)も加わりました。どれも会社と本人が半分ずつ負担します。料率は、協会けんぽの令和8年度の保険料率で確かめられます。
毎月の保険料(本人負担)は、次のツールで計算できます。報酬月額と会社の保険料率を入れると、健康保険・厚生年金それぞれの等級と、項目ごとの保険料が出ます。
算定基礎届(毎年7月の見直し)
7月1日に在籍している人について、4〜6月に払った報酬を届け出て、その年の9月分からの標準報酬月額を決め直します。提出期限は7月10日です。
- 報酬の支払いの対象になった日数(支払基礎日数)が17日未満の月は、平均から除きます(週20時間の基準で加入しているパートの人は11日)。
- 6月1日以降に入社した人、6月30日以前に退職した人、7月から月額変更で改定する人は、対象外です。8月か9月に月額変更で改定される予定の人も、会社が申し出れば算定基礎届を省略できます(電子申請では、出さないことが申出の扱いになります)。
- 4〜6月は残業が多い月にあたりやすく、その年の9月から1年間の保険料が高めに決まることがあります。業務の性質上、毎年この時期だけ報酬が増える場合は、1年間の平均で決めるよう申し立てる方法もあります(等級の差などの要件があります)。
月額変更届(固定給が変わったとき)
昇給・降給や手当の新設などで固定的な賃金が変わり、次の3つがそろったら、月額変更届を出します。
- 基本給・手当など、固定的な賃金が変わった
- 変わった月から3か月の報酬の平均で、今の標準報酬月額と2等級以上の差が出た
- その3か月とも、支払基礎日数が17日以上(週20時間の基準で加入しているパートの人は11日以上)
計算例: 標準報酬月額28万円の人が、昇給で基本給が月3万円上がった場合
(315,000円 + 320,000円 + 310,000円)÷ 3 = 315,000円 → 標準報酬月額 320,000円昇給した月から3か月の報酬(残業代・通勤手当を含む)の平均は31万5千円で、標準報酬月額は32万円(報酬月額31万〜33万円の等級)になります。28万円から32万円へ、健康保険・厚生年金とも2等級上がるので、月額変更届を出し、昇給した月から4か月目の保険料から変わります。同じ人の昇給が月1万円で、平均が29万5千円だった場合は、30万円の等級で1等級の差にとどまるため、月額変更の対象にはならず、次の算定基礎届で見直されます。
注意残業時間が増えた・減っただけでは、月額変更の対象になりません。また、固定給が上がったのに残業代が減って平均では2等級以上下がった場合のように、固定給の上がり下がりと平均の上がり下がりが逆のときも、対象外です。
算定基礎届や月額変更届の対象になる人は、給与計算ソフトを入れている会社なら、基本的には自動で抽出されます。毎月の給与の動きを人が表で追いかけるより、その機能を使いこなすほうが確実です。これから給与計算ソフトを選ぶ・入れ替えるなら、月額変更の対象者がどういう形で知らされるのかを、選ぶ段階で確かめておくと安心です。
育休から戻った人の改定
育休から戻って短時間勤務になった人などは、給与が下がっても、2等級以上の差がつかなければ通常の月額変更の対象にならず、休業前の高い保険料が続いてしまいます。そこで、本人が申し出れば、1等級の差でも標準報酬月額を下げられるしくみがあります(育児休業等終了時改定)。
- 育休が終わった日の翌日がある月から3か月の報酬で見ます。支払基礎日数が17日未満の月は平均から除きます(3か月のうち1か月以上、17日以上の月が必要。週20時間の基準で加入しているパートの人は11日)。
- 改定されるのは4か月目からです。本人の申出を受けて、会社が届け出ます。
- 厚生年金には、あわせて使える「養育期間の標準報酬月額の特例」があります。3歳未満の子を育てる間に標準報酬月額が下がっても、将来の年金額は下がる前の額で計算されます。保険料を下げる届出と、この特例の申出書は、セットで案内すると漏れません。
産休から戻った人にも、同じしくみの産前産後休業終了時改定があります。
休業に入る前から戻るまでの手続き(休業中の保険料の免除、給付金の申請など)の段取りは、育児休業・介護休業の手続きの記事にまとめています。
賞与の保険料
賞与の保険料は、賞与の額から千円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を掛けて計算します。標準賞与額には上限があり、健康保険は年度(4月〜翌年3月)の累計で573万円、厚生年金は1か月あたり150万円です。賞与を払ったら、5日以内に賞与支払届を出します。年4回以上払う賞与は、賞与ではなく毎月の報酬として扱います。
詳しく読む賞与から引く社会保険料・源泉所得税の計算方法は?1人分の計算例と、退職・休業する人の扱い労働保険の年度更新
労災保険と雇用保険の保険料(労働保険料)は、毎月ではなく年に1回まとめて申告・納付します。これが年度更新で、期間は毎年6月1日から7月10日までです。前の年度に払った賃金の総額で保険料を確定させて精算し、あわせてその年度の概算の保険料を納めます。労災保険はパート・アルバイトを含めて全員に払った賃金、雇用保険は雇用保険に入っている人に払った賃金で計算します。
年度更新も、給与計算ソフトの中で集計の帳票を出して、申告書にそのまま書き写せるものが多くあります。一から賃金を集計し直す仕事ではなく、「自動化できるもの」と考えてかまいません。
年度更新の案内は、厚生労働省の労働保険年度更新に係るお知らせにあります。
紙をやめて電子申請にする
社会保険・労働保険の手続きは、ほとんどが電子申請でできます。資本金1億円を超える法人など(特定の法人)は、次の手続きを電子申請で出すことが義務になっています。
| 分野 | 手続き |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 算定基礎届、月額変更届、賞与支払届 |
| 雇用保険 | 資格取得届・資格喪失届・転勤届、高年齢雇用継続給付・育児休業給付の申請 |
| 労働保険 | 年度更新の申告書、増加概算保険料の申告書 |
義務の対象でない会社も、同じように電子申請を使えます。国の電子申請の窓口(e-Gov)から無料で出せるほか、給与計算ソフトや人事労務のシステムから直接出せるものも多くあります。入退社の情報をすでにシステムで集めているなら、システムからの申請が一番手間が少なく済みます。人事労務のシステムを入れる順番と選び方は人事労務システムの導入の記事に、給与計算ソフトの比べ方は給与計算ソフトの選び方の記事にまとめています。
現場から担当者に一番伝えたいのは、手続きの電子化という時代の波に乗ることです。紙は溜まるほど管理が大変になります。最初の設定の手間を惜しまずに、積極的に電子に切り替えていくことをおすすめします。電子申請の義務の範囲は、日本年金機構の電子申請の義務化と、厚生労働省の特定の法人の電子申請の義務化のリーフレットで確かめられます。
手続きは社内でやるか外に任せるか
入退社や保険料の見直しの手続きを、社会保険労務士に任せている会社も多くあります。社内でやるか、外に任せるかは、会社の規模と、担当者がほかにどれだけの業務を抱えているかで決めます。
労務の現場から
手続きを外に任せている場合、その業務が本当にそこまで手間のかかるものかを一度考えてみてください。実際に自分でやってみると意外と簡単なこともあり、経費を減らしたいなら、社内でやるのも一つの手です。ただしそれは、従業員が少ない会社での話です。入退社が一定数ある規模になれば、それなりの作業量になります。
反対に、その作業を外に任せて、社内の人手をほかの業務に回すのも立派な戦略です。どちらが正しいとは言い切れず、今その実務を担当している人の業務の幅によって変わります。外注の費用と見比べて「自分でやってみようかな」と思えるなら社内で、手続きに頭を使わないために、あえて外に出すのも有効です。
| 会社の状況 | 向いているやり方 | 理由 |
|---|---|---|
| 従業員が少なく、入退社がたまにしかない | 社内でやる | 件数が少なく、やってみると手順を覚えやすい。外注の費用を減らせる |
| 入退社が毎月のようにある | 外に任せることも考える | 届出の件数が増え、それなりの作業量になる |
| 担当者がほかの業務を多く抱えている | 外に任せる | 手続きに頭を使わずに済み、ほかの業務に時間を回せる |
| 外注の費用と比べて、自分でもできそうと感じる | 社内でやってみる | 電子申請とソフトの機能を使えば、手間は思ったより小さい |
どちらを選ぶ場合も、加入の判定のもとになる雇用契約の中身と、退職する人からの回収は、会社の中でしかできない仕事です。ここだけは外に任せきりにせず、社内で押さえておきます。
制度の詳しい内容は、日本年金機構の適用事業所と被保険者、資格取得の手続き、資格喪失の手続き、定時決定(算定基礎届)、随時改定(月額変更届)、育児休業等終了時報酬月額変更届、雇用保険は厚生労働省の事業主の行う雇用保険の手続きで確かめられます。個別のケースで迷うときは、年金事務所や社会保険労務士に確認するのが確実です。
更新履歴
- 2026年10月10日: 加入判定ツールへのリンクを追加
- 2026年10月9日: 保険料の計算ツールを追加
- 2026年10月7日: 関連する記事へのリンクを追加
- 2026年10月1日: 関連する記事へのリンクを追加
- 2026年9月30日: 公開