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助成金の申請は自分でできる?計画の届出から支給までの流れと、外に任せるかの判断

助成金を受けたいけれど、手続きが大変そうで手を出せていない経営者や担当者に向けて、雇用関係の助成金の申請の流れと、自分でやるか外に任せるかの判断のしかたをまとめた記事です。助成金は、もらいたいと思いながら、手続きが煩雑そうで見送っている会社が大半です。けれど、最初の1回を窓口で教わりながら済ませれば、次からは「いつものあれ」で進められるようになります。どこが大変で、どう乗り越えるかを、流れにそって説明します。

この記事で分かること

  • 雇用関係助成金を受けられる会社と、受けられない会社
  • 主な助成金の種類と、目的からの探し方
  • 計画の届出から支給までの流れと、一番大変なところ
  • 自分でやる場合の進め方と、外に任せる場合の選び方
  • 不支給・返還を防ぐために押さえること
  • キャリアアップ助成金(正社員化コース)の要件と流れ

助成金のしくみと受けられる会社

このメディアで扱う「雇用関係助成金」は、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークなどが出す助成金です。財源は、会社が納める雇用保険料の一部です。返す必要はありませんが、決まった取り組みを、決まった順番で行ったことを書類で示して、初めて支給されます。

受けられるのは、次の3つを満たす会社です(令和8年度のパンフレットによる)。

  • 雇用保険の適用事業所の事業主であること(申請日と支給決定日の時点で、雇用保険に入っている従業員がいること)
  • 決められた期間内に申請すること
  • 審査に協力すること(書類を整えて保管し、求められたら出す。実地調査にも応じる。従業員への聞き取りや、取引先・金融機関などへの照会が行われることもある)

一方で、次のような会社は、どの雇用関係助成金も受けられません。

  • 過去5年以内に不正受給で不支給や支給の取り消しを受けた会社
  • 前年度より前の労働保険料を納めていない会社
  • 申請の前日までの1年間に、労働関係の法令に違反した会社
  • 暴力団と関係がある会社、性風俗関連の営業などを行う会社(例外あり)など

労働保険料の滞納や、労働関係の法令の違反があると、取り組みの中身にかかわらず受けられないことがあります。助成金を考える前に、まず足元の労務が整っているかを確かめておきます。

主な雇用関係助成金

雇用関係助成金は種類が多く、毎年度、新設・統合や金額の見直しがあります。名前から探すより、自社がこれからやろうとしていることから探すほうが早く見つかります。

やろうとしていることと、主な助成金
やろうとしていること主な助成金
有期・パートの人を正社員にするキャリアアップ助成金(正社員化コース)
パートの人を社会保険に入れ、収入を増やすキャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)
従業員に研修・訓練を受けさせる人材開発支援助成金
育児・介護と仕事の両立を支える両立支援等助成金
高年齢者・障害者などを雇い入れる特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金
定年を引き上げる・継続雇用を延ばす65歳超雇用推進助成金
最低賃金を引き上げ、設備に投資する業務改善助成金(労働条件等関係の助成金)

全体の一覧と年度ごとの金額は、厚生労働省が毎年度出す「雇用・労働分野の助成金のご案内」で確かめます。金額は年度で変わるので、使う年度の資料を見るようにします。

パートの人の社会保険の加入と、定年の引き上げ・継続雇用については、次の記事で説明しています。

詳しく読む106万円の壁と130万円の壁の違いは?撤廃後に残る「週20時間」と手取りの確かめ方 詳しく読む定年後の再雇用はどう進める?1年前からの段取りと条件の決め方、同日得喪の手続きまで

計画の届出から支給までの流れ

多くの助成金は、取り組みを始める前に計画を届け出て、取り組んだ後に支給を申請する流れです。キャリアアップ助成金(正社員化コース)を例にすると、次のようになります。

  1. 計画を作って出す取り組みの前日までキャリアアップ計画を作り、労働局に出します。
  2. 就業規則などを整える取り組みの前正社員に転換する制度を、就業規則などに定めます。
  3. 取り組みを行う計画の期間中規則に沿って、有期の人を正社員に転換します。
  4. 決められた期間、賃金を払う転換後6か月転換後の賃金を6か月分払います。
  5. 支給を申請する6か月分を払った日の翌日から2か月以内賃金台帳や出勤簿、雇用契約書などを添えて申請します。
  6. 審査を受ける申請の後書類の追加の提出や、実地の調査を求められることがあります。

労務の現場から

申請の中で一番大変なのは、事前の計画の届出です。作文のように書く内容が多く、必要な書類もかなりあります。何かがあったから申請できるのではなく、これから何をするかという計画を先に届け出ておかなければならない。このハードルが、助成金の一番のネックです。

計画を出す前に取り組みを始めてしまうと、その取り組みは対象になりません。助成金を考えるなら、正社員への転換や研修などを決めた時点で、まず計画の届出から逆算して日程を組みます。申請の期限も、原則として支給要領に定める日の翌日から2か月以内と短いので、賃金を払い終える月を先に押さえておきます。

申請は、電子申請(雇用関係助成金ポータル)、郵送、窓口への持参のどれでもできます。キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金など、多くの助成金がポータルで電子申請できます。

自分でやるなら窓口で作る

労務の現場から

自分でやるなら、ハローワークや労働局の助成金の窓口に行って質問するのが一番早い方法です。経験がなくて分からないうちは、最初から窓口で話を聞き、その場で書類を作るようにします。

窓口で直接聞きながら作れば、差し戻しや不支給、ヒヤリにはまずつながりません。何度か往復するのは大変かもしれませんが、助成金を取りにいくと決めたのなら、それを繰り返します。

一度やり通せば、必要だった書類の正解が手元にそろいます。次からはそれを用意すればよいので、答え合わせは簡単です。自分でやる場合は最初が一番大変で、そこを越えれば意外と手間は減り、「いつものあれで」と進められるようになります。

窓口に行く前と、行った後に確かめておくことです。

  • 使いたい助成金と、使う年度の支給要領・パンフレットを確かめたか
  • 計画の届出の期限(取り組みの前日まで、など)を確かめたか
  • 就業規則・賃金規程・雇用契約書・賃金台帳・出勤簿を持参したか
  • 窓口で言われた追加の書類と、その意図をメモしたか
  • 出した書類の写しを、助成金ごとのフォルダに残したか(次回の正解になる)

外に任せるかの判断

選択肢は、自分でやりきるか、外部に委託するかの2つです。外注の費用は、受け取った額に対する割合(成功報酬)で決めているところが多く、相場はインターネットで調べればおおよそ分かります。割合でも1件いくらでも、決まっていれば手残りの額は計算できます。

労務の現場から

委託するなら、委託料を引いた手残りで、それでも本当にやる必要があるかを考えます。手残りは0よりは多いはずなので、損をすることはありません。ポイントになるのは、自分が実際にどれだけ手を動かすかです。

代行といっても、申請先が言ってくる「こういう書類を用意してください」をそのまま伝えてくるだけでは、頼む意味がありません。こちらから出さなければいけない書類はいくつかありますが、それをもとにどこまで作成してくれるのか。こちらの手作業の線引きは助成金や書類によって違うので一概には言えませんが、依頼する前に具体的に書面で明らかになっているのが理想です。

また、一度自分でやれば全体像が見えるので、次からは外注するか、自分でやれるかを判断できるようになります。

自分でやるか、外に任せるか
状況判断理由
初めてで、担当者が時間を取れる自分で(窓口で作る)一度やれば書類の正解がそろい、次から楽になる
同じ助成金を2回目以降自分で前回の書類で答え合わせができる
担当者が時間を取れない外に任せる手残りがあれば、やらないよりは得になる
代行の範囲があいまい依頼を見直す書類集めを丸投げされると、手間が減らない

依頼先は社会保険労務士に

雇用関係助成金の申請書類を、報酬を得て作ったり、代わりに提出したりできるのは、社会保険労務士(社会保険労務士法人)と、弁護士など法律で認められた人に限られます(社会保険労務士法27条)。資格のない業者が関わっていたことが分かると、不支給や返還の対象になることがあります。依頼する前に、相手が社会保険労務士として登録しているかを確かめます。

厚生労働省は、厚生労働省の委託事業者を名乗って、助成金の申請や「受給額の無料査定」を勧誘する書面が出回っているとして、注意を呼びかけています。厚生労働省はこうした勧誘に関わっていません。

不支給・返還を防ぐ

差し戻しや不支給、ヒヤリが起きやすいのは、最初から自分だけでなんとかしようとしたケースです。法改正で要件が変わっていたり、求められた書類の意図を見落としていたり、分かりにくい解釈が含まれていたりします。助成金で一番悲しいのは、取り組んだのにもらえないことです。窓口に聞くのは、それを防ぐためだと考えます。

要件を満たさずに受け取ったことが後で分かれば、返還を求められます。うその書類などで受け取った場合(不正受給)は、さらに重い扱いになります。

不正受給になったときの扱い
項目中身
返還受け取った額の全額に、年3%の延滞金と、受け取った額の20%を加えた額を払う
受給の停止5年間、すべての雇用関係助成金を受けられない
公表事業主の名前などが原則として公表される

不正受給には、従業員や依頼した社会保険労務士が不正をした場合も含まれます。外に任せても、責任は会社に残ります。申請した書類と添付書類は、支給決定日の翌日から5年間保存する必要があるので、外に任せた場合も原本か写しを受け取っておきます。

  • 計画の届出を、取り組みを始める前に済ませたか
  • 就業規則などに、助成金が求める制度を取り組みの前に定めたか
  • 賃金台帳・出勤簿・雇用契約書の内容が、互いに食い違っていないか
  • 支給申請の期限(多くは2か月以内)を、日付で押さえたか
  • 出した書類の原本か写しを、5年間保存する場所を決めたか

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

有期雇用やパートなどの人を正社員に転換した会社に支給される助成金です。雇用関係助成金の中でもよく使われ、計画を先に届け出る型の代表例です。受けるには、次の3つを満たします。

  1. キャリアアップ計画を出す正社員に転換する日の前日までに、労働組合などの意見を聴いて作った計画を出します。
  2. 転換の制度を規則に定める正社員に転換する制度を、就業規則などに定めておきます。
  3. 転換して賃金を上げる転換後6か月の賃金を、転換前6か月より3%以上増やします。

ここでいう正社員は、期間の定めのない労働契約を結び、正社員向けの就業規則が適用され、転換した時点で「賞与または退職金の制度」と「昇給」が当てはまる人です。転換したつもりでも、賞与や昇給の対象になっていなければ、要件を満たしません。勤務地や職務、時間を限った「多様な正社員」への転換も対象になります。

令和8年度の支給額は、中小企業が有期の人を正社員にした場合、1人あたり40万円です。雇い入れから3年以上の有期の人など「重点支援対象者」に当たる場合は、2期に分けて合計80万円になります。転換の制度を新しく定めた場合などの加算もあります。細かい要件や加算は年度で変わるので、厚生労働省の最新のパンフレットで確かめます。

最初の1回を窓口で越える

助成金の手続きが大変なのは本当です。特に、取り組みの前に計画を届け出るところで止まる会社が多くあります。けれど、最初の1回を窓口で教わりながら済ませれば、書類の正解が手元に残り、次からは自分でやるか外に任せるかを判断できるようになります。足元の労務を整え、計画の届出から逆算して日程を組む。そこから始めます。

制度の中身は、次の一次情報で確かめられます。助成金の一覧と受給の条件・不支給要件は厚生労働省の令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)、最新のお知らせや勧誘への注意は事業主の方のための雇用関係助成金にあります。キャリアアップ助成金はキャリアアップ助成金と正社員化コースのご案内、申請代行ができる人は東京労働局のキャリアアップ助成金についてで確かめられます。

更新履歴

  • 2026年10月1日: 主な助成金の表を、令和8年度のコース(短時間労働者労働時間延長支援コース)に修正
  • 2026年10月1日: 公開