離職票はいつまでにどう作る?要否の聞き方、5営業日で出す段取り、賃金の欄と離職理由の書き方(シート付き)
退職者の離職票を作る労務の担当者に向けた記事です。離職票が要るかの聞き方、給与の確定を待たずに出す段取り、離職証明書の賃金の欄と離職理由の書き方をまとめました。離職理由で揉めやすい有期契約の雇止めについては、ふだんから更新の経緯を残しておく方法も紹介します。賃金の欄の下書きと更新管理ができるシートも付けています。
この記事で分かること
- 離職票が要るかを、本人が自分で判断できるように聞く方法
- 給与の確定を待たずに、退職から5営業日ほどで出す段取り
- 離職証明書の賃金の欄(⑧〜⑫)の区切り方と、日数の数え方
- 離職理由の選び方と、有期契約の雇止めで会社都合になりうる場面
- 本人の事情で辞める人が、給付制限なしで受け取れる場合と、その案内のしかた
- 賃金の欄の下書きと、有期契約の更新管理ができるシート(サンプル)
離職票は「要るか」を本人が判断できるように聞く
労務の現場から
離職票は、退職後そのまま別の会社で働く人には要らない書類です。全員に出している会社は少なく、本人に要るかを聞いて出す形が多いと思います。大事なのは、「要らない」と答える人が、本当に要らないのかを自分で正しく判断できることです。案内に「そのまま他の会社に勤める人は対象外」と分かりやすく書いておけば、本人が一目で判断できます。聞くのは、退職の案内のアンケートでも、退職のオリエンテーションの中でもかまいません。
本人が離職票を希望しなければ、ハローワークには資格喪失届だけを出し、離職証明書は付けなくてかまいません。ただし、離職の日に59歳以上の人には、希望にかかわらず離職票を出します。希望しなかった人も、あとで必要になれば元の会社に離職証明書を頼んで、離職票を受け取れます(ハローワークのQ&A)。ただ、退職したあとに頼まれると、会社にも本人にも手間がかかります。案内には、判断の目安を書いておきます。
聞き方にもコツがあります。「離職票は出しますか?」とだけ聞くと、「念のためください」と答える人が多くなります。そのまま次の会社で働く人には要らない書類だということを前提にして、要る人だけが手を挙げる聞き方にします。
退職の案内に書く文の例
退職の翌日から次の会社で働く方は、離職票は要りません(失業給付の対象にならないため)。次の勤め先が決まっていない方、しばらく仕事を探す方だけ、「離職票が要る」に印を付けてください。離職の日に59歳以上の方は、印がなくてもお送りします。あとで必要になった場合も、ご連絡いただければ発行できます。
| 本人の状況 | 離職票 |
|---|---|
| 退職の翌日から、次の会社で働く | 基本は要らない(失業給付の対象にならない) |
| しばらく仕事を探す・次がまだ決まっていない | 要る |
| 離職の日に59歳以上 | 希望にかかわらず出す |
退職の手続き全体の流れと、ほかに出す書類は、次の記事にまとめています。
詳しく読む退職・解雇の手続きは何をどの順で?最終出勤日までの段取りと書類、解雇予告手当の計算まで給与の確定を待たずに、退職から5営業日で出す
労務の現場から
実務では、最後の給与が固まってから出したくなるので、どうしても遅くなります。そうしている会社も多いかもしれませんが、離職票はすぐに出さなければならない書類です。会社の都合で給与の支給日まで遅らせる、と強気に交渉するのはおすすめしません。退職日の後、勤怠が固まるまでの数日は待ちますが、固まったら通常の給与計算とは別に計算を早めて出します。目安は5営業日目くらいです。退職の前は有給の消化などで勤怠が落ち着いていることが多く、残業もあまりないので、勤怠を手で計算できる方法を整えておけば、5営業日目には出せます。
決まりの上でも、資格喪失届は被保険者でなくなった日(退職日の翌日)の翌日から10日以内に出し、離職票を希望した人の分はそこに離職証明書を付けます。5営業日を目安にしておけば、期限にも余裕があります。
- 離職票が要るかを聞く退職日が決まったら退職の案内のアンケートや退職のオリエンテーションで、上の表の目安と一緒に聞きます。
- 最後の月の勤怠を固める退職日の後、数日で通常の締めを待たず、離職票を希望した人の分だけ先に勤怠を確定します。
- 最後の期間の賃金を出す最後の締切日の翌日から退職日までの賃金を、通常の給与計算とは別に出します。
- 賃金の欄を下書きする賃金台帳から、離職証明書の⑧〜⑫の欄を下書きします(次の節とサンプルのシート)。
- 離職理由を本人に見てもらう離職証明書には、会社が書いた離職理由に本人が異議があるかを書く欄と、本人が記名する欄があります。
- 資格喪失届と一緒に出す5営業日目まで電子申請で届け出て、本人がマイナポータルの手続きを済ませていれば、離職票は本人のマイナポータルに直接届きます。
賃金の欄は「2つの区切り」で書く
離職証明書の賃金の欄で間違えやすいのは、期間の区切り方が2つあることです。⑧⑨は離職日から1か月ずつさかのぼり、⑩〜⑫は賃金の締切日ごとにさかのぼります。締切日が月末の会社では2つがそろいますが、20日締めの会社などでは、行ごとに期間がずれます(ハローワークの離職票の記入例)。
| 欄 | 区切り方 | 書く分 |
|---|---|---|
| ⑧ 被保険者期間算定対象期間・⑨ 基礎日数 | 離職日の翌日から1か月ずつさかのぼる(例: 月末の退職なら、その月の1日〜離職日、前の月の1日〜末日…) | 基礎日数が11日以上の月が12か月になるまで |
| ⑩ 賃金支払対象期間・⑪ 基礎日数・⑫ 賃金額 | 賃金の締切日ごとにさかのぼる。一番上は、最後の締切日の翌日〜離職日 | 締切日から締切日までの完全な期間で、基礎日数が11日以上の期間が6つになるまで |
例: 月末に退職した月給の人(賃金の締切日は20日)
⑧: 退職月の1日〜離職日 → 前の月の1日〜末日 → … 12か月分 / ⑩: 21日〜離職日(途中の期間) → 前の月の21日〜20日 → … 完全な期間6つ⑩の一番上の行は途中の期間なので、その下に完全な期間を6つ書きます。合わせて7行になります。
日数と賃金の数え方で迷いやすいところは、次のとおりです。
| 迷うところ | 数え方 |
|---|---|
| 月給の人の基礎日数 | その期間の暦日数(30日・31日など)。欠勤で給与を引いた期間は、その日数を引く |
| 日給・時給の人の基礎日数 | 出勤した日と有給を取った日の合計。半日だけ出た日も1日と数える |
| 基礎日数が10日以下の月 | その月の労働時間が80時間以上なら数える。時間数を⑬欄に書く(厚生労働省のリーフレット) |
| ⑫のA欄とB欄 | A欄は月や週で決まった額(月給・定額の手当など)、B欄は日・時間・出来高で決まる額(時給・日給など) |
| 通勤手当 | 賃金に入れる。数か月分の定期代をまとめて払った場合は、月数で割ってそれぞれの期間に入れる |
| 翌月に払う残業代 | 実際に残業した期間の行に入れる |
| 賞与 | 年2回の賞与など、3か月を超える期間ごとに払うものは入れない。3か月以内の期間ごとに払う特別の賃金(四半期ごとの手当など)があれば、⑭欄に書く |
賃金の欄の計算ミスを防ぐには、過去の賃金台帳を貼ると、書く内容が自動で計算されて出てくるシートを作っておくのが確実です。期間の区切りと日数の数え方さえ式にしてしまえば、あとは毎回同じ手順で下書きができます。
サンプル: 離職票の下書きと更新管理シート(Googleのスプレッドシート)
「賃金台帳」に締切日ごとの賃金を入れ、「下書き」に離職日・締切日・給与の形を入れると、離職証明書の⑧〜⑫の欄が書く順に並びます。式だけで作っているので、コピーしてすぐ使えます。Excelで使うときは、コピーしたあと「ファイル」→「ダウンロード」→「Microsoft Excel」で保存してください。出てくるのは下書きなので、出す前に元の賃金台帳・出勤簿と見比べてください。
離職理由は「自己都合」が基本、ずれやすいのは雇止め
離職理由の欄は、多くの場合は自己都合の退職です。⑦欄の「5 労働者の判断によるもの」の「(2) 労働者の個人的な事情による離職」に印を付け、転職などの理由を書きます。書き方は記入例のとおりで、面倒な書類ではありますが、本人にも書き方のポイントを添えて伝えれば十分です。離職理由を最後に決めるのはハローワークで、出した書類や資料をもとに「4D(正当な理由のない自己都合退職)」などの区分を付けます。
労務の現場から
大変なのは、会社と本人の認識がずれた場合です。よくあるのは有期契約の人で、本人が更新を希望したのに、会社が更新しないと決めたときです。会社は自己都合や契約の満了と考えていても、何度も更新してきた人だと、会社都合として扱われることがあります。実際に、自己都合のつもりでいたら、更新の回数で会社都合と判断されたことがありました。一定の期間や回数を超えていたら、争っても変わらないので、速やかに直すしかありません。それ以外の場合は、更新の回数やこれまでの契約書、1か月以上前に終了を伝えたか、その前から更新が難しい理由を伝えて進めていたか、といった資料を出します。
有期契約が終わって辞める人の扱いは、ハローワークが契約書や更新の経緯を見て決めます。おおまかな目安は次のとおりです(特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準)。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 更新を重ねて3年以上働いてきた人を、本人が希望したのに更新しない | 特定受給資格者(会社都合と同じ扱い) |
| 契約書で更新を約束していた(「更新する」と書いた)のに更新しない | 特定受給資格者 |
| 「更新する場合がある」と書いていて、本人が更新を希望したが合意できなかった | 特定理由離職者 |
| 最初の契約から「更新しない」と示していた・本人が更新を希望しなかった | 契約期間の満了 |
定年後の再雇用で、あらかじめ決めていた年齢に達して終わる場合は、3年以上の更新でも特定受給資格者にはなりません。また、3回以上更新した人、通算1年を超えて続けて雇っている人、1年を超える契約の人を雇止めにするときは、30日前までに予告します。本人に求められたら、雇止めの理由を書いた証明書も出します(厚生労働省のスタートアップ労働条件のQ&A)。
扱いが変わると、本人と会社の両方に影響があります。本人は、正当な理由のない自己都合の退職だと、失業給付を受け始めるまでに原則1か月の給付制限があります(2025年4月1日以降の退職)。ただし、退職日からさかのぼって5年の間に、正当な理由のない自己都合の退職で2回以上受給資格の決定を受けている人は、3か月になります(厚生労働省)。会社は、解雇や退職勧奨などの会社都合の離職を出すと、一定の期間、受けられなくなる助成金があります(どの離職が対象になるかは、助成金ごとに違います)。
割り切りも必要です。ハローワークが一度出した判断を覆すのは難しくなっています。なぜそう判断されたのかを1回確かめるのはよいのですが、決まりに沿って判断された部分なので、覆すのは難しいと考えておきます。それで助成金が受けられないなどの不利益があっても、身から出た錆と受け止め、次から起きないように流れを作ることのほうが大切です。
本人の事情で辞める人は、「正当な理由」に当たらないか確かめる
反対に、本人に有利な扱いを見落とさないことも大切です。自己都合の退職でも、⑦欄の「5 (2)」の①〜⑤に当てはまる事情があれば、正当な理由のある自己都合の退職(特定理由離職者)として扱われ、給付制限がかかりません。会社都合にはならないので、解雇や退職勧奨のように会社の側に響くこともありません。
| 欄 | 事情の例 |
|---|---|
| ① | 体力の不足、病気、けがなどで、仕事を続けられなくなった |
| ② | 妊娠・出産・育児で辞め、受給期間の延長を受けた |
| ③ | 親の病気や介護など、家庭の事情が急に変わった |
| ④ | 配偶者や扶養する家族と別居を続けるのが難しくなった |
| ⑤ | 結婚による引っ越しや会社の移転などで、通勤が難しくなった |
たとえば、体調を崩して欠勤が続き、契約で決めた時間を働けていない有期契約の人を、更新しないことにした場合です。本人が更新を希望していれば、期間満了の特定理由離職者になりうるので、この場合も給付制限はかかりません。一方、本人が体調を理由に更新を望まない、または自分から辞める場合は、自己都合の退職です。それでも、診断書などで事情を示せば①に当たり、すぐに受け取れる可能性があります。退職の理由を聞いたときに「診断書などを持ってハローワークで事情を伝えてみてください」と案内しておくと、本人の助けになります(ハローワークの特定理由離職者の範囲)。
当てはまるかを決めるのはハローワークで、会社が事実と違う理由を書いてよいわけではありません。なお、正当な理由のない自己都合の退職でも、2025年4月以降は、教育訓練を受けると給付制限が外れるようになりました。これも、知っていれば本人に案内できます。
有期契約は更新管理表で、雇止めの前に確認する
雇止めで揉めないためには、離職票を作る段階ではなく、契約を更新するたびに経緯を残しておくことです。有期契約の人の更新管理表を作り、今が何回目の更新か、終了にしたい場合に何に気を付けるかを書いておくと、現場でも判断できます。
離職証明書の離職理由の欄にも、契約期間の満了で辞める人については、1回の契約期間・通算の契約期間・更新の回数・更新の約束の有無・直前の更新のときに雇止めを伝えたか・本人が更新を希望したか、を書く欄があります。更新管理表に同じ項目を持っておけば、離職証明書もそのまま書けます。
| 入れるもの | 出るもの |
|---|---|
| 最初の契約の開始日、今の契約の開始日と終了日、更新した回数 | 1回の契約期間、通算の期間、雇止めの予告が要るかと予告の期限(終了日の30日前) |
| 最初の契約書の更新の書き方(「更新する」「更新する場合がある」「更新しない」)、本人の更新の希望 | 雇止めにしたときの離職理由の目安(上の表) |
| (同上) | 通算5年を超える人(本人が申し込めば無期契約になる) |
注意シートの目安は、上の判断基準を簡単にしたものです。最初の契約で更新の上限を示していたかなど、細かい事情で扱いは変わります。「会社都合になりうる」と出た人を雇止めにするときは、前もって契約書と更新の経緯を確かめ、迷う場合は管轄のハローワークや社会保険労務士に相談してください。
在職中の給付は、書類のリストを先に持つ
雇用保険には、辞めた人の給付のほかに、働いている人の給付もあります。会社が手続きをするのは、主に介護休業給付と高年齢雇用継続給付です。
介護休業給付の進め方は、育児休業給付と基本的に変わりません。誰かが教えてくれるわけではないので、出す書類を先に整理し、時期が来たものから順に進めるのがポイントです。書類のリストと期限は、育児・介護休業の記事にまとめています。
詳しく読む育児休業・介護休業の手続きは何をいつまでに?報告から復帰までの書類リストと、産後パパ育休の分け方高年齢雇用継続給付は、60歳以降の賃金が60歳の時点より一定以上下がった人に出る給付です。2025年4月1日以降に60歳になった人は、支給の上限が賃金の10%に下がりました(それまでは15%。厚生労働省)。国の審議会(雇用保険部会)は、2019年12月の報告で「段階的に縮小することが適当」とし、廃止も含めて検討するとしています。2023年12月の資料でも、2025年4月の引下げの状況を見ながら、廃止も含めて引き続き検討するとされていて、廃止の時期はまだ決まっていません(厚生労働省 雇用保険部会の資料「高年齢雇用継続給付について」)。60歳前後の人に説明するときは、「縮小が決まっていて、廃止も検討されている給付」と伝えます。また、給与を下げるには合理的な理由が要るので、この給付があるからといって給与を下げることはできません。積極的に使う給付ではない、と考えておくくらいでよいと思います。再雇用の条件の決め方は、次の記事にまとめています。
詳しく読む定年後の再雇用はどう進める?1年前からの段取りと条件の決め方、同日得喪の手続きまで「制度上そうなる」と伝え、制度で本人を助ける
労務の現場から
まず前提の知識を正しく持っておき、会社の側で不備を作らないことが大切です。そのうえで、本人に寄り添いながらも、どこで線を引くかをはっきり持っておきます。そのときは「できません」と答えるのではなく、仕組みや制度の上でどうしてもそうなる、と伝えます。自分の判断ではなく、会社や行政の判断だと伝えることが大切です。一方で、制度を知っていれば、本人にとって思わぬプラスを作ることもできます。そこは労務が従業員に貢献できるところなので、大切にしたいと思っています。
離職票でいえば、正当な理由のある自己都合の退職や、教育訓練による給付制限の解除がそれに当たります。退職の理由を聞いたときに、離職票を受け取ってハローワークで事情を伝えるよう案内できるのは、制度を知っている担当者だけです。
この記事の内容は、ハローワークの離職票の記入例と特定受給資格者・特定理由離職者の範囲、厚生労働省の範囲と判断基準・被保険者期間の算定方法のリーフレット・給付制限の見直し・高年齢雇用継続給付の支給率の変更、愛知労働局の離職証明書の書き方で確かめられます。